表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を裏切り、救世主へと至る者達へ  作者: 朝霧旺
吸血鬼ハンター最終試験
19/47

18 吸血鬼への証明

「いや…本当に、これらの後に話しにしてはインパクト薄いんだって…トップバッターが良かった」

「というか明香、君自動的にラストになっているけど良いのかい?」

 マリアナの質問に、別に構わないと目線で訴える。

「ま、インパクトとしては十分だものね」

 伝わったのか、伝わってないのかマリアナは鼻歌を歌っている。

「ほんと、僕の理由は弱いんだけど…その」

「気にしないわよ」

「大層な理由がないと話いけないわけじゃねーよ」

 ニコリと笑い、焚き火の先のナナヤに微笑みかける。

「命を懸ける理由に優劣なんてないよ」

 ナナヤは、少し照れくさそうに頭を掻いてそ、そうかな…とぼやいていた。

「僕は生まれた時からソールに居て、外を見たことすらなかったんだ」

 ナナヤは、懐かしむように言葉を綴る。

「僕の両親は外から来たんだけどね、ソールに着いてから僕を産んだから…僕の外の知識は皆の話と高台から見える距離までしかなかった。だから、外がこんなに広くて生物が沢山いるなんて知らなかった」

 ワオーンと何処かで狼の遠吠えが聞こえる。

 静かな夜だが、耳を澄ませば小動物によって小枝が折れる音や虫の羽音が聞こえる。

「僕には三つ下の妹が居た」

「お兄ちゃんだったんかお前」

「まあ、五年間だけだけど…」

 物資の少ない居住区では、子どもが七歳までに亡くなることは珍しいことではないらしいが…それでも。

「僕の妹は、ちょっとした病気に罹ってしまってね。それを治せる医者と薬はソールにはなかったんだ」

 その目に、確かな意志を宿してナナヤは焚き火を見つめる。

「マディスにはいたんだ、マディスなら妹を助けられた。その時に、吸血鬼が居なければ…いや、自由に居住区を行き来できれば妹は助けられたんじゃないかと」

「僕達が弱いのが理由なのは知っている。吸血鬼の全てが悪いんじゃないのは理解している…なら、どうすれば僕は妹のような救えた命を死なせずに済むんだろうと考えた」

 ナナヤはコップを呷って、残りのお湯を飲み切った。

「吸血鬼に人間を少しでも認めさせてやる。人間に吸血全てに対抗する術がないなら、物好きな吸血鬼が賭けても良いと思える程の底力があるって証明してやる…そうして、今よりも自由な日々を手に入れる」

 確かに、子ども工場、コロシアム、農園と比べれば妹を病気で失ったというのは弱く見えるかも知れないが、ナナヤのその宣言を笑う者も茶化す者も存在して居らず、ライトーニアはがしっとナナヤの肩を組むとその頭をガシガシとぐちゃぐちゃにする。

「なーにが、インパクト薄いだー?」

「い、いや薄いだろう?僕は吸血鬼に何かされた訳でもないわけで…」

「あんたの目は節穴か?」

 ルーシュが、きっぱり言い切る。

「吸血鬼に何もされてない?人間が行動制限されているのも物資不足なのも吸血鬼のせいや…安心しい、お前のその理由はきちんと立派やで

「それどころか、うちらより現実と未来を見据えていて偉いやんけ〜それを卑下するなよ」

「一部の区間だけでも…自由に外に出られたら素晴らしいと思う」

 箱庭では、野生動物は勿論のこと蝶や蜂といった一部の虫も極力入り込ませないようにしていた。

 というより、壁に覆われているが高台から外が見えるソールと違い、あの世界にいた私達は外の世界があるとは知っていながらも、外の世界に行く必要も知りたいという欲望もなかった。

 だから、ここが死地の中だとしても今こうして焚き火を囲んで虫の音色や生物達の生活音を聞きながらのんびりするのは、新鮮で楽しいと感じるのだ。

「堂々と胸を張れ、その理由を恥ずかしがるな」

「そ、そうかな…そうかなぁ?」

 恥ずかしいという顔で、照れ臭そうにナナヤが笑う。

「さ、ラストはアスカやな。あんたはそもそもソールに来たのが最近やし、うちらも全く知らへんから楽しみにしてるで」

「そんなに上げられると困るなぁ」

 例えあの箱庭が、上質な商品を製造するための農園だったとしても、あの先の結末が死であったとしても…見送ったお姉さま達がもう死んでいても、残してきた妹達がいずれ死ぬと決まっていても。

「うん…私は、とある施設で育ったんだけど…」

 些細な約束事でも困ったように手帳にメモする公爵さまが、夜寝る前に絵本を読んでくれた先生達がやっぱり好きなのだ。

 私の原動力は、やはり先生達への愛だから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ