11 実施授業
「実践授業ですか?」
誰かの口から漏れ出た疑問に、ハンター指導員は頷く。
「その通りです。皆さん、最初の頃に比べて随分と強くなりました。なので、明日みなさんにはこのソールから出て実践的な授業に挑戦して頂きます。実際の吸血鬼ハンターと同じことをして貰います」
ザワザワと周りが騒がしくなる。
指導員は、手をパンパンと叩くと周りを落ち着かせて再び話し始める。
「今一度申し上げますがハンターの主な仕事は二つあります。一つは各居住区間の物資や人の輸送で吸血鬼や獣に襲われないように、襲われても対処できるようにする『護衛』の仕事。二つ目は、近辺に異変が起きたときに駆けつけて対処し、定期的に見回りや孤児となっている子どもがいないか確かめる『維持』の仕事です。私達から吸血鬼を討伐することはまずありません」
そう、ハンターという名前であるがその実態は攻めではなく守りの戦力がハンターというものであった。
毎年、それに不満を漏らす見習いもいるが仕方ないだろう。
「今回、皆さんにしてもらうのはここソールからマディスまでの食料物資の輸送です。通常であれば、ハンターは二人、多くても三人ですが皆さんはまだ素人であるためここにいる十人全員で向かって貰います」
性別も年齢もバラバラの十人。一番幼くて十もいっていない…なかなか、厳しい旅路になりそうだ。
「距離としてはおおよそ七日歩く程でありますが、周りの体調にも気をつけて急ぎない程度に進むようにして下さい…では、今日の訓練はここまで皆さん明日に向けてしっかり寝るようにして下さいね」
指導員が部屋を後にすると、部屋は一気にざわざわと騒がしくなる。
「はい、年長組しゅーごー」
私より目線が少し上のツンツンした髪をしたナナヤは、パンパンと手を叩きながらこちらに歩み寄ってくる。
その音を聞いて、おおよそ十三歳から一八歳程度の周りより長生きの子どもが集まって来る。
「…ぶっちゃけ、いけると思いますかこれ?」
「うーん。せやけど、これ毎年恒例の最終試験的なもんやで」
「どちらかといえば、今年は幼い子が多いのが問題という話だろ。約半数の子どもを制御しながら、吸血鬼を遭遇しない道を選べと?」
呼ばれて近寄ってきたのは、このメンバーの中で一番カラッとしているオカン気質のルルーシュと、言いにくいこともズバズバ言い放つ少し茶色が混ざった黒色を後ろで括っている、ライトーニアであった。
彼らと私を含めたこの四人が指導員から年長組を呼ばれており、残りのまだハンターをカッコいいからと志願しているような子もいる年少組をまとめる役目を与えられている。
「そもそも、あんな餓鬼をハンターにする方がどうかしているだろ、俺は途中で辞退させるものだと思っていたんだぞ」
「まー。ハンターて年中人手不足なわけだし〜一人でも多くのハンターを育成したいってのは分からんくもないけどな」
「それで犬死したら意味がないって俺は言ってるんだが!」
ルーシュとライトーニアが、ギャンギャン言い争いをしている横で、ナナヤは黙っていた私に話を振る。
「アスカはどう思う?」
「うーん」
もしかしたら、明日死ぬかも知れないというのに子ども達は「外に行けるんだって」「マディスってどんなところかな」とまるで危機感を覚えず興奮した様子で話し合っている。
「あの二人は、ソールに置いていった方がいい」
指差すのは、まだまだ幼い少年二人。




