09 海の底に沈んだ記憶
吸血鬼に見立てたカカシに斬りかかる、体を鍛える。
吸血鬼に見立てたカカシに斬りかかる、体を鍛える。
吸血鬼に見立てたカカシに斬りかかる、体を鍛える。
吸血鬼に見立てたカカシに斬りかかる、体を鍛える。
今日もまた新しい孤児がこの地にやってくる。
今日もまた四肢を欠損したハンターは運び込まれる。
今日もまた火葬場では煙が空に立ち昇る。
「よく人間は死に絶えないわね」
「ふふ。どこかに人間を産み出している牧場があるかも知れないわよ、それに心配しなくてもいつだって人間は死んでも死んでも生き続ける。そういう生き物よ」
夜と見違えるほどの暗い蒼い瞳が、ベッドに寝転ぶ私を見下ろす。
今日もまた、ハンターになるための特訓を終えた。
強くなっている気はあまりしないが、少なくともあの味と具のないスープが美味しいと思える程度には、私はここに染まって、あそこの日常が薄くなっていっている。
地獄のような無駄な死を見続けて、何処かで人が死んだという無慈悲な報告にも慣れてきてしまった。
「時々思うのだけれども、何故吸血鬼はここに直接攻めて来ないの?」
「それは、ここが…」
前々から気になっていた質問をぶつけるが、マリアナは途中で口を閉ざし口元に手をやって考え込んでしまった。
彼女は時折私の質問にこのような態度で返す。
どうにも、質問の答えが教えると不都合があるのか、そもそもその文化が途絶えた私では理解できないものだから話したくないのかは、分からないが…彼女の中で話していいこととそうでないことには線引きがあるらしい。
明確に話してはいけない答えの時は、のらりくらりと誤魔化されるのだが微妙な時はこうやって考え込んでしまう…それにしても今日は長いな。
「マリアナ?」
「そうね……今の君にはまだ教えられないわね」
「えーー!なら、いつになったら教えてくれるの?」
「いつって…」
『まだ』なら、教えてくれる基準があるということだ。
何故、力がある吸血鬼が襲ってこないのか。
それは、ハンターになると決めたからには知り得たい情報だ、そして私にハンターになれと言ったのはマリアナなのだから、その情報は私に開示する義務があるし、私には知る権利があるはずだ。
生きていない、ここには存在しない故に先生と違いランタ光に照らされ煌めくこともなく、その綺麗な瞳が揺らぐこともないマリアナは、考えの末に線引きが出来たのかその目を開いて私の唇に手を置く。
「貴方がいつか、その存在を知ることがあれば…その時が来れば教えましょう」
「その存在?」
「これが分からないうちは、吸血鬼が何故人間の住む居住区には近寄らないのかなんて考えなくてもいいわ。さ、もう子どもは寝る時間よ、おやすみなさい」
触れられない掌が、先生達のようにぽんぽんと体をリズム良く叩く。
文句はある、ヒントのひとつくらい寄越せという声は、訓練で疲れた体には酷な話であったようで、その懐かしさにうとうとと睡魔に抗うことなく眠りについた。




