きも試しに行くぞーっ!! キモっ!
真夏の午後10時13分、バカの翔磨からの電話。
「おーぅい、大輝――ぃ。迎えに来てくらー! そんで、肝試しに行くベー!」
「バーカ、誰が行くかよ。勝手に行けや!」
「そんなーーー。冷たいなーー大ちゃん。オラと大輝は友達だんべー。」
「知るか! 大体お前、飲んでるだろ。」
「あーったり前じゃん。因みに海斗と颯太も飲んでまーす。」
なろ、学生の身分で日曜の夜に酔っぱらいやがって! 大学生は身分が違うわ。
あ、スピーカーにしたな。
「大ちゃーーん! そゆ訳でお願いだよぉーん!」
「俺たちいつもの〇〇にいるので、よろしく!」
「二人もこー言ってますよーん。来ないと苛めるぞー!」
「苛める。」
「ン、イジメる!」
「バーカ、こちとら既に社会人だって―の。てめえらとは違うんだよ。」
「だよねぇーー。免許持ってんのお前だけだもん。頼むよ、頼む~~!」
「颯太も持ってんだろが!」
「ええーーー。免許取ったばっかりで、飲酒で免停はキッツぅ!」
「バカか、お前ら!!」
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・・そゆ訳で、かーちゃんのオンボロ軽で○○のファミレスに着いたのが10時30分。
「だーっ!せめーな、この車!」
「うーっせー。嫌なら歩いて帰れ!」
「颯太ーぁ、おめーがデブすぎんだよ!」
「あほー・ポッチャリしてるって言え、俺はデブじゃねえ。」
「お前鏡見たことあんのか。ドー見てもデブですー、デブー。」
「せーな。おめーこそ、その頭が常人の三倍場所取るんだよ!」
海斗はアフロ。
「暑いよー。エアコン点けてくれよ~。」
やば。そういやエアコンの効き、悪かったんだっけ・・。
「暑いよ、暑いよ。暑っ苦しいよぉ~~~。」
「だぁーってろ! ほんじゃ帰るぞ、最初は翔磨かぁ~。」
「ええー。肝試しに行こうよ~。」
「そうだよ~。俺ら明日は暇なんだし~。」
「俺は、仕事だってーの!!」
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旅館○×。
30年くらい前に倒産して廃屋となった山奥の旅館。いつ頃からか分かんねーけど、お化けが出るって評判になって、真夏の深夜は誰かが肝試しをやってる。俺は行ったことは無かったけど、先輩たちの話じゃ、けっこうヤバイって話だ。
そゆ訳で、徹夜を覚悟で行きましたよ。
ええ、行っちゃったの。
曲がりくねった山道をかーちゃんのオンボロ軽は唸り声を上げつつ何とか登るのであります。道幅は狭くても何とかすれ違える道路だけど、下は崖。ガードレールもほとんど無くてあぶねえあぶねえ。行くまでが肝試しじゃん。
とか思いつつ、11時47分に到~~着。
翔磨と海斗は寝てるし。
肝試し、俺だけ!?
マジ、ムカつくぅー。 マジ、ムカつくぅー!
「起きろ、バカどもぉ!!」
「せーな。起きてんだよ。」
「俺はさっきのカーブで気絶した。」
「俺は心を静めて、結界張ってたんだって。」
「大口開けて寝てただろ、お前!!」
俺は助手席の翔磨の頭をグーパンした。
「てぇええ! 呪うぞ、小悪党!」
「うっせーんだよ。とにかく、さっさと行っちまおうぜ!」
深夜の廃屋はやっぱ趣が違うわー。
月夜でそこそこ明るいけど、中はきっと真っ暗だろ。引き戸のガラスが割れてて、半開きになってる。スプレーであちこちに落書きがあって、建物の中にもツタが入り込んでる。木造とモルタルで作られたこの旅館は、左右に分かれた2階建ての建物で、中央奥に露天風呂があるらしい。
俺と翔磨、海斗と颯太がペアで左右に分かれて露天風呂で落ち合う事になった。
翔磨は言い出しっぺのクセに、いざ中に入ると急に口数が少なくなった。
「なんか、ヤバくね? ヤバくね?」
と、こればっかりである。
木の廊下は歩くとギシギシ音が鳴る。
あちこちのガラスが割れて散乱してるから、スマホの光で前を見ると言うよりは、足元重視で歩くワケ。時々部屋の中を覗いてみたりもするけど、なんの変哲もない和室ばかりで、壊れた襖が転がってたり、テレビが腐ってブラウン管が傾いているくらいで、怪しい気配すら感じない。因みに俺は霊感なしなので、よろしくっスね。
露天風呂には既に海斗たちが来ていた。
「おー、なんかあったかぁ?」
「なーんも。」
「くそっ、ガセだったか。」
「翔磨のネタはガセばっかジャン。」
「うっせー!」
「なーんか、つまんねーし。さっさと帰るべー。」
「おー。そうすべ、そうすべー。」
スマホの時計は午前1時12分。なんだかんだで1時間は居たみたいだ。
俺たちは旅館を出ると、かーちゃんの軽に乗り込んだ。
「なんか、痒いーぜ。」
「俺もけっこう蚊に喰われたあー。」
「アフロに蚊が寄ってくんのかよ。」
「せーな。アフロは関係ねー。」
翔磨が腕を掻き掻き後部座席に乗り込むと、両脇から海斗と颯太が翔磨を挟んで乗り込んできた。
「バカヤロー! 暑苦しいんだよ!」
「せーな。しゃあねえだろ、狭いボロ軽なんだからよー。」
「嫌なら、歩いて帰れよなー、お前ら。」
俺はエンジンをかけて、旅館を後にした。
「アフロ、うざ!!」
「せーな。てめえのパツ金も似合ってねえジャン。」
「俺のはエモいんだよー。」
「坊主にすればいいじゃん。」
「せーな。デブはだーってろ!」
「なあなあなあ、シンジもそう思うだろ!」
「だね。」
「てめ、シンジ! 蹴飛ばすぞ。」
海斗が後ろから助手席のシートをグイグイ押す。
「やめろ、バカ! かーちゃんに怒られんだろがぁ!!」
「お、なんか涼しくネ?」
「だな、エアコン治ったんでね。」
そういや・・なんか涼しい。
「温度下げろ、温度。」
「バーカ、上げんだよ。下げたら寒くなるべや。な、シンジ。」
「シンジ、悪りー、ちょっと温度上げてくれ。」
「いいよ。」
シンジは薄明りの中、ニコニコしながらエアコンの温度を上げてくれた。
これって、やり方替えたら連載で別の話が作れるな・・・。