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ゆうれい補導員#4  作者: victory
1/1

#4

第二話開始です。

Case2:死にきれない母性


1.

 「ふんふ~~んふふふふ~~ん♪」

ランチタイムのファミレスに、おっさん、もとい、森下の鼻声が響く。

「恥ずかしいっすよ・・・。」

隣にはジョージ。二人でランチタイムだ。陽子は自作の弁当を事務所で食べている。

丁度、昼時を目がけて仕事を持ち込んだ森下は、ジョージを連れて、ファミレスへとやっってきた。

 孤児を引き取る施設で、最近、女のすすり泣く声が聞こえるというのだ。そして時折、まだ、まだ死ねないのに・・・。と呟いているという。いつもながらジョージは、自宅なんかでそんなのに遭遇したら多分漏らすな、と思いながら、話を聞いていた。

陽子の方も、森下が渡した資料で大方今回の件は頭に入れているだろう。

「な~んかひっかるよねぇ~、この、死にきれない、ってのがね~。」

「森下さんいつもひっかかってるっすね。てか昼飯食いながらこの話、やめません?」

「一理あるけど、時間がね…。」

森下は、残念そうに言う。

 事務所に帰り、二人は陽子に経緯を話した。

「まぁ、引っかかるも何も、この施設に居る子の親の資料に目を通したら、大方の予想はつくわよね。

この絵里ちゃんて子の母親はシンママで事故死したらしいじゃない。多分、無念の死ってやつね。子を一人残して死ぬんだもの、居ても立っても居られないわよね、例え死んでいても。」

そう言いながらブラックコーヒーをすする陽子を見て、二人はなるほど、と思いながら聞き取り調査の準備をした。

「いやぁ~、そう言われればそうだね、あたりをつけてみるとするなら、絵里ちゃんのお母さんが成仏できてない可能性は高いねえ~。」

そう言って森下はバッグ片手にクランチチョコを頬張っていた。

それを見たジョージは、とっさに思ったことを口に出した。

「何か、前から思ってたんすけど、森下さんって、リスっぽいっすよね。何ですっけ、なんかのキャラクターでリスのコンビ居たじゃないすか。あれに似てますね。」

それを聞いた森下は怒ったふりをしながら、ぶりっこして見せた。

「あ~、上司にそんな事言ったら駄目なんだぞ~、ぷん!」

それを見た陽子は、ブラックコーヒーを危うく吹いてしまうところだった。

「あんた達、遊んでないで早く行って来なさいよ。」

そう促され、二人は急いで施設へと向かった。


2.


施設に到着した二人は、早速職員に話を聞いて回った。

それぞれに重い口を開いて協力してくれる職員も多く、子供達を可愛がっているのが伝わってくる施設だった。

それを感じたジョージは言った。

「ここに来る子達って、可哀そうだと思ってましたけど、案外、変な親元に居るより幸せかもしれないっすね…。」

それを聞いた森下は口を慎むよう注意したが、施設長はクスッと笑いながら言った。

「そう言っていただけて、嬉しいです。うちが、子供たちにとって、安心して暮らせる場所になればいいな、って毎日思いながら接していますので。

…実は私自身、心身の虐待とネグレクトを受けた過去がありまして…。そんな中、保護された施設の職員の方々に可愛がっていただいて、こうして今幸せに仕事できています。

お陰様で家族も出来て、今度、末の息子が大学に進学する事になりましてね。今でも、私がこんなに幸せなんて、って、信じられません。

けれども、あの時救い出されていなかったら、私は今頃、死んでいたか、悲惨な人生を送っていたかもしれません。だから、恩返しで出来る限りはここの仕事を続けさせてもらうつもりなんですよ。」

と、話してくれた。

「済みません、込み入った事をお伺いして。」

そう言って謝る森下に、施設長の安西さんは言った。

「いいえ、もし、仰るようおに、絵里ちゃんのママがあの声の主でしたら、是非とも私達にも協力させていただきたいんですよ。

生前、絵里ちゃんのママはお一人でもパパの分まで可愛がってらっしゃったようで、きちんと毎日ご飯にお風呂、身支度もさせて。きちんと給食費も払って、絵里ちゃんに不自由や寂しい思いをさせないように気を配ってらしたみたいで。とても立派なお母様でしたようで。

そんな方が事故死して何よりも大切な絵里ちゃんの成長を見られなくなる、一人にしてしまうとなると、無念なのも痛い程分かります。私も、一母親として、胸が痛みますもの。」

そう言うと、職員から色々な情報を聞き取った資料を渡してくれた。

「これ、うちの職員達から聞いた事を纏めたものです。いかんせん、機械は慣れませんから見づらいでしょうが、勘弁してくださいね、ごめんなさいね。」

そう言って一生懸命作ったであろうWordの文書は、施設長の言う通り、フォントが揃っていなかったり、何故か太文字だったりであったが、とても丁寧に詳しく記載されていた。

それを見た森下は、胸にジーンときた。

「この資料一つとっても、施設長さんのお人柄が伝わってきます。必ず、我々が解決して見せますので、ご安心ください。」

そう言うと、二人は陽子のもとへと帰還した。


次回、陽子が動き出します。

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