ちつじょあるぎゆうぐん
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こんなに意識が統一された集団は見たことがありません
あれから1週間、回復した国森さんとお仕事の打ち合わせ。
「社長、それで商売って何を売るつもりなんですか?」
「新しいカードゲーム作って売ろうと思ってね、ルールはこれだよ」
この世界ではTCG文化が全く育ってない、ギャ〇が存在してないからね市場があっても商材が無い状態なんだ。
ルールを今一つ理解できてない国森さんに、厚紙で作ったデッキを渡してデュエルする。
戦略、戦術と補給線、防衛線の構築で関東方面軍を支えていた国森さんは、実際遊ぶことですぐに理解した。
「これは売れるわ、絶対売れる」
「でしょでしょ、後はカードのイラストを描く人を集めようともってさ」
「私はスカウトに行けばいいのね、頑張るわよ!」
「あぁ違うよ、あてはあるっていうか。ある場所で探そうと思っててさ、国森さんには別のことしてほしくてさ」
「別の事?」
「そう、これでさ・・・であれを・・・さらに・・・・・・・」
「なるほどね、それだったら・・・・・・・・のほうが良いかな、それで・・・を・・・・・しましょ」
説明したら可能性と有効なのを理解して、改善案まで上げてくれる。
確かにこれは、ずっと働かせたくなる。
「こっちでやることは分かったわよ、それである場所ってどこなの?」
「うん、有明だよ。有明ギガサイトで行われる、即売会で直接絵を見てスカウトしようと思ってさ」
「あれかー私は良い思いでないから他の人と行ってね」
「国森さん行ったことあるんだ、意外だね」
「買いに行ったんじゃなくてね、防衛上あんなところに箱もの建てられると困るから阻止しようとしたのよ。瑠璃ちゃん知ってる?ギガサイトって毎回建ててるって」
「え?写真見たことあるけどあれを毎回建てて壊してるの?」
「そうよ、基礎部分だけ残して毎回よ毎回。凄腕の土建屋やらなんやらやってきて1週間で建てて、3日で壊してくのよ」
「なにそれこわい」
「しかも、これでいいだろって言って来たから、海中の安全確保が出来ないので中止しますって言ったのね」
「うん、まぁ普通の対応だと思うよ」
「毎年参加者で義勇軍編成してローテーションで会場を守りつつ買いもしてるの。下手な軍より意思統一が出来てたし、抜け駆けや逃げ出す人なんかいなくてね団結力ってこういう事なんだっておもったわ」
「それは、すさまじいね」
「時間が来ると、部隊単位で下がり始めて入れ替わっていくんだけどね異様なの。戦場に出る人たちが口々に、無事に戻って新刊を読むまでは死ねない。〇〇たその加護は我にありーとか凄いテンションで行くわけよ。しかも人数がね桁違いだからねぇ」
「へぇそんな多いんだ、義勇兵に参加する人って少ないと思ってた」
「国家規模で見ても、歴史で見てもおかしいわよ。3日で義勇兵60万なんてね」
オタクって怖いね。救護兵をする人たちは入れ替えが難しいから、即売会終了後に救護兵の為だけの即売会が開催されるんだって。日本って恐ろしい国だった。
指揮は誰がするんだろうって思ったら、二つ名持が何名も参加してて指揮官してるんだって。
国森さん的にはそれも許せなくて、普段より真面目に戦場に立ってるのが我慢できないらしい。
「そんなわけで、私は行かないからね。あんな魔境とはもう関わらないの、社長と一緒にこの会社を大きくしていくことしか考えてないもの」
「え、一年後には軍に戻ってもらうよ?」
「え?嘘でしょ?」
「国森さんが関東方面軍司令なんだから戻るに決まってるじゃん。このままだと国森さんが壊れちゃうと思ったから、報酬を盾に休ませてるだけだもん」
「やだやだやだ、ずーっとこの会社で働くの、今の労働時間でしかはたらきたくないーー」
駄々をこねる国森さんを宥めるのが大変だった。
しっかり休みが取れる状況は作ってあげるから、頑張って働いてね。
有明ギガサイト
毎年夏と冬に突如として有明に建築される建物。
収容人数30万人、コミックフェスティバル期間だけ見える蜃気楼のような場所。
欲望が渦巻く、オタクの聖地。
毎年国軍は、この団結力の1割でいいから愛国心に変わらんものかなぁと悩むのである。




