るりのみみは
するすると引き寄せられる
そんな話
もう少しで夏休み、でもその少しが長いんだよね。
前世で社会人してた時は、夏休みなんてなかったけどさ。
転生してから夏休みがある暮らしに慣れてしまうと、どうやって働いてたかわからなくなった。
永遠に学生で居たくなっちゃうよね。
「なお~あついよぉとけちゃうよぉ人の体を維持できないよぉとけりゅぅ」
「引っ付いてこないで、余計に暑いでしょ。だいたい溶けるってなによ」
「やだぁもうぅあるきたくなぁい」
「シャキッとしなさいシャキッと」
「夕方なのにあついのがいけないんだぁ」
そんな風に、何時もみたいな帰り道。
ジュースでも買おうかと商店街を歩いていく。
「あれ?何か聞こえない?」
「ん~私には何も聞こえないわよ?」
「おかしいなぁ、女の子の泣いてる声が聞こえるような聞こえないような?」
「どっちから聞こえるの?路地の方だと鬼が人を呼び寄せようと擬態しているかもしれないわ」
「路地じゃないね、公園の方かな。警戒しながら行ってみよう」
「いかないって選択肢はないんでしょ、防御魔法を先にかけるから少し待ちなさい」
駆け足で公園に向かうと、綺麗なブロンドの女の子泣いてた。
近くには男の子が3人いて、女の子は返してって言いながら泣いている。
いやぁこれは許せませんなぁ。可愛い女の子が泣いている、それだけでお姉ちゃんとしては行かざるを得ない。
でゅふふ可愛い幼女はみんな僕の妹なんだぁ
何かを察した奈央が僕の頭を叩く、危うく正気を失いかけてたみたいだ。
するすると近寄って、女の子が奪われた物をサクッと奪い取る。
気配を消してたから驚いてるね。
別に武道を習った成果で気配を消せるわけじゃない、翡翠達をびっくりさせようと思ったら出来るようになっただけさ。
「女の子を泣かしたら駄目なんだからね、悪いことしてるとお姉ちゃんみたいになっちゃぞぉ」
男の子たちは僕を見て驚いて、慌てた感じで謝り逃げていった。
逃げる位なら最初からするなと、僕は言いたいね。
「あ、あのたすけてくれてありがとうございます」
「おっと、どういたしまして。僕は可愛くて小さい女の子の見方だからね、はいどうぞ」
「初対面の子に何言ってるのよ」
「この辺じゃ見かけないけど、お父さんやお母さんは一緒じゃないの?」
フルフルと首を振る美幼女、この子は逸材だね。
翡翠と同じレベルの逸材だ、かぁいぃぃねぇぇぇ
形として聞いたけど、近くに両親がいないのは解ってた。
僕レベルになると、幼女の顔を見ただけで色々察するのさ。
「どうやってここに来たかわかる?」
「わからないです」
「交番に連れていくしかないでしょうね」
「そ、それはだめです。けいさつはだめです」
わけありだね、どうしようか考えてたら珍しい人から電話が来た。
「もしもし瑠璃ちゃん、聞きたいことがあるんだけど」
「国森さん久しぶり、何が聞きたいの?翡翠の事?」
「瑠璃ちゃんと翡翠ちゃんの事は、貴女のお父さんとお母さんから聞いてるから大丈夫。瑠璃ちゃんの近くに美幼女いたりしない?ブロンドで10年後に街を歩いてたら100人中1000人が振り向くような」
「あぁいるよ、国森さんが探してる子は何て名前なの?」
「エリスちゃんていうの、気が付いたらいなくなってて」
「ちょっとまってね~」
電話をそのままに女の子に話しかける。
「国森雫ってお姉さんのこと知ってる?」
「しずくねえさましってます」
「今、国森さんと電話してるんだけど。お名前はエリスちゃんでいいかな?」
「はい、わたしはエリス・フォン・ローゼルです」
「ありがとう、国森さんにこの後どうするか聞いてみるね」
奈央の気配が一瞬ビクッとした、フォンだよ、フォン。
欧州の貴族令嬢だよこの子、まぁ僕にとってはただの可愛い幼女だけど。
「エリスちゃんだったよ。僕と奈央で保護したけどどうしたらいい?どこか向かう?ここにいたほうが良い?」
「下手に移動されるより、そこにいてもらえる方が助かるわ」
「わかったー、早く来てね。それとなんで僕に電話したの?」
「瑠璃ちゃんだったら、美幼女に吸い寄せられてるんじゃないかと思っただけだから気にしないで。30分くらいかかるからそれまでよろしくね」
くにもりぃぃ僕を何だと思ってるんだぁぁぁぁ
スピーカーモードで喋ってたから、奈央は爆笑してる。
キっとにらむと
「商店街の入り口からここまでどれくらい距離があったと思ってるの?500メートルはあるのよ?そこからこの子の泣き声聞き取ったんだったら、本当に吸い寄せられてるじゃない」
僕は反論できなかった。
瑠璃の住んでいる町
ギリギリ都心とは言えないくらいの場所。
ショッピングセンターと商店街がバチバチにやりあってる。
やりあえるくらい地力がある商店街とはいったい




