おじいちゃんしてん
肩からベキっと音がしてからずっと痛いです。
盆の時期は、どうしてこうも忙しいのかと考えながら帰路に就く。
霊場の増援に向かうのは良い、だがなんでわしが恐山までいかねばならんのか。
年々向こうの質が下がってきているのか、それとも鬼の質が上がってきているのか。
そんなことを考えていると、「せばす」から連絡が入る。
よもや、孫達の周囲につくものがいなくなるとは、今年は大変な年になりそうだ。
さっさと帰って身を清めて孫のもとに向かうとするか、早くいかねば翡翠等は寝てしまうだろうしな。
土産は何が良いか考えながら帰っていたら瑠璃から電話がくる、何時もの元気な声ではない不安と怯えの混じった声。
よく聞かなくても背後から衝突音のような轟音が聞こえる、逃げることはきっとできないだろうと考え15分で向かうから耐えろという。
我ながら無茶を言う、娘の結界を破るほどの鬼に子供だけで15分。
無理な話だろう、間に合わないだろう、だがわしは全力で向かうことしかできない。
無力な物よ、当主として二つ名持だとしても距離を縮める手段はない。
移動中の車を側付に任せ体を外に投げ出す。
切り札の式神を呼び出す、
「青龍よ征くぞ、全力で天を駆けよ」
自分の式神に振り落とされないようにしがみつきながら進む。
普通に移動するよりは間違いなく早い、しかしこれでは遅い遅すぎる。
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娘の家の付近まで来たときに、爆発が起きる。
並の使い手では出せない威力だ、焦る心を落ち着かせ進んでいく。
戦闘が続いているということは、まだ生きている可能性がある。
たとえ五体満足ではないとしても、生きていればそれで。
先ほどの爆発の影響で半壊している娘の家に入る、
「おねーちゃんにひどいことしないでっていったでしょーーーーーーーーーーー」
翡翠の叫びが聞こえる、翡翠は無事かしかし瑠璃は。
声の聞こえたほうに進むと、翡翠の力が覚醒している。
良く覚醒したと褒めたい気持ちと、傍らにいる瑠璃を見て憤怒の気持ちがあふれ出る。
よくもまぁわしの可愛い可愛い孫をここまでの姿にしてくれたものだ、隙を窺う鬼を絶対に処理せねばならん。
「お爺ちゃん遅いよぉ、もうちょっと早くこれなかったの」
「すまんな、これでも随分急いだんだが。しかし、わしの可愛い孫を怖がらせて、酷い目に併せてくれた奴はこいつか」
酷い状態だ、早く止血して手当てせねば。
朱雀を使い処理を終え瑠璃をみると今にも寝そうだ。
こんな状態で眠ったら、二度と目を覚ませないだろう。
「いかん瑠璃を寝かせるな」
瑠璃は不満そうなけだるそうな顔でわしを見る。
話しかけつつ止血を始めるが、右肩の状態は酷く悪い。
奈央に救護は呼んでいるか聞けば、呼びましたと返してくれる。
怪我をしているのは瑠璃だけ、朱雀で燃やし尽くすのに時間がかかる程の鬼を相手にして奇跡的な結果と言える。
しかしこのままでは奇跡を起こした、わしの孫が死んでしまう。
何か手はないのか…
皆で話しかけるが、瑠璃の意識は今にも途切れそうだ。
「おねーちゃんねちゃだめー」
「ヒーちゃんごめんね、ものすごく眠いからいまは寝かせて」
「やだーおねーちゃんねちゃだめ」
「えぇヒーちゃん今日は強情だなぁでも本当に眠いんだよぉ起きたら一緒に遊ぶからさ寝かせてよぉ」
「や、ねたらおねーちゃんきらいになる」
この発言を皮切りに瑠璃が妹と呼ぶ子らや、奈央が寝たらきらいになると言い募る。
瑠璃の顔が絶望に染まる、そこまで嫌なのか。
「それは困るなぁじゃあもうちょっとだけお姉ちゃん頑張るよぉ」
妹が絡むと途端に駄目になるとは知っていたが、今回ばかりは良い方に働いた。
翡翠達に話しかけ続けさせていると救護の者がやって来る。
大至急病院に搬送させ、わしらは後から向かうことにする。
緊張の糸が切れた子らが泣き始めてしもうた。
どれだけの恐怖を感じていたことか、頼るべき者がボロボロになる姿を見たのだ。
それでもこの子らの心を守ったのは、瑠璃の功績だろう。
だから、生き抜いてくれ。わしや皆が瑠璃に無茶をするなと怒り大いに褒めねばならんのだから。
式神
大本の式神を作れるのは天才、量産品は誰でも使える。
皇のお爺ちゃんは自分で作れる側。
でも自分の最高傑作より、代々伝わってきた式神のが凄いので歯ぎしりしてる。
生きてるうちに超えるのが目標




