奈央視点
2回目の人生は伊達じゃないって話
私の一番の友達は変わっている。
将来はこの変人に仕えることになるかと思うと、ため息が出てしまう。
ほとんど姉妹のように育ったけれど、どこからその発想になるのかその行動力が生まれるのか不思議でしょうがない。着いていく身にもなってほしい。
強化魔法を勝手に覚えてきて脳を活性化させてお勉強するんだ!なんて言ってくるのよ。
勉強が終わった後は糖分が足りないって机に突っ伏してもぞもぞ動くの、付き合う私も同じような姿をよくさらしてしまったわ。
唐突に習い事を大量に始めだしたりされると困る。
「奈央ちゃんも一緒にやる?」なんて笑顔で気軽に言ってくるのだ、こちらにも準備が必要だっていうのに。
挙句習い事を始めた理由が妹たちにカッコいいって、凄いって言われたいからと聞いたときは、膝から崩れ落ちてしまった。しかもそんな私を見て「お~本当に膝から崩れ落ちるとこんな感じなんだね!良いもの見れたよ」なんて言ってくるのだ。怒った私は悪くないと思う。
突拍子もない行動をする以外は普通?ですかって、いえ普通ではないわね。
魔力量は多くないけれどその分、魔力コントロールは大人達でも驚くレベルになっている。
子供がここまで出来て凄いって驚きではなく、何年も訓練を積んで実戦を経験したベテランレベルのコントロールで驚かれている。
体の使い方も兎に角上手くて、お稽古では1回見れば同じように動けてる。一緒にいると自分が出来ないことをサクサクとこなされて、劣等感に苛まれる。
「魔力コントロールは僕の魔力が少ないからしやすいだけだし、習い事だって出来るようになるのが速いだけだし奈央ちゃんだって練習すれば出来るよ」慰めや、誤魔化しやお世辞なんかじゃなく本気でそう思って言ってくるの。自分が凄いことをしてるなんてかけらも思ってない、みんなより少し上手にできるだけだと本気で思っている。生半可な人間ではそばに居続けることは出来ないと思うわ。
こんな変わった友人でも小学校では人気がある。
勉強が出来て、運動もできて、ものを教えるのも上手で、いつもニコニコしてる。嘘っぽい笑顔じゃなくて、何がそんなに楽しいのか不思議になるくらい本当の笑顔なのだから意味が分からない。そんな笑顔を皆にみせているの、皆には見せないでいいのに。
でも最近クラスの男子からちょっかいをかけられている、酷いと思うので先生に言おうとしたら止められた。「僕は楽しんでるからいいよ。それに僕たちが問題にするとお父さん達の関係で大ごとになりそうだしさ」なんて言うのだ、人が良いにもほどがある。
理由に心当たりがないかと思って聞いてみれば「僕が急に可愛くなったから照れてるだけだよ、そのうち皆慣れて落ち着くよ」という答えが返ってくる。急に可愛くなんてなっていない、あなたは昔っから可愛いわよ。
ん゛、ん゛ん゛。
そんな自分の評価が低くて、自分に無頓着で心が広くてとっても可愛い友人はめったに怒らない。それも本当に怒ってるところを少なくとも私は見たことが無い、私が見たことが無いのだから誰も見たことは無い。
妹の方が凄い、魔力量で妹に負けてる、妹の方が才能がある。
そんな言葉を投げつけられても「そうだね、僕もそう思うよ。ヒーちゃんは凄いんだよこの前もね…」と悪意を持って寄ってきた相手に妹自慢を始めだす。
[おい男女、なんだよそのかっこ]
なんて暴言を受けても「3点。呼び方にセンスがないね、次はもっと頑張って!このかっこは師匠におしえてもらったんだ~」なんて批評を始める。
唯一怒りかけていたのは、[おい死神]って言われた時だけ。
その時は
「発想としてそこに行きつくのは分かるけど、名字や名前は止めてくれるかな。僕の大切な家族も一緒に馬鹿にされると許せなくなっちゃうからさ」
すぐに男子が謝ったおかげで何事もなく終わったけど、あれで謝ってなかったら大変なことになってたかもしれない。
「僕個人のことは何言われても別に何とも思わないかなぁ」
なんて言っている、もっと自分のことを大切にしてほしい。
「奈央ちゃん何書いてるの?もうすぐ晩御飯だよ」
「日記を書いてるのよ、瑠璃にだって見せないわよ」
「僕を何だと思ってるのさ、人の日記を覗き見ようなんて思わないよ。楽しそうに書いてるから何書いてるのかなって気になっただけだよ」
「瑠璃の悪口を書いてたら楽しくなっただけよ」
「奈央ちゃん酷いよ~」
私が一番大好きな友達は自己評価が低くて自分のことに興味が無い。
将来はこの大好きな友人に仕えることになるかと思うと、どうやって支えてやろうか、どうやって自分が可愛いって教えてあげようか今から楽しみで仕方ない。
瑠璃設定
自己評価ではB+くらいの評価
周りからの評価はA+魔力が多ければSSだったのに残念
発想力が奇抜過ぎて将来が楽しみ4割、不安が7割で不思議と不安の割合が増える
身体強化の中でも部分強化は天才と言っていいレベル。
一般魔導士が脳を強化しようとしたら全体を強化するっていう意味なのに、記憶領域の拡張とか並列思考が出来るように強化とかしてる。
身体強化も、腕とか足ではなく、筋肉もっと言えば筋繊維から強化してる。




