なでなでかいのとっぷ
お読みいただきありがとうございます。
瑠璃はやっぱおかしい(おかしい)
僕は今リビングで正座してる
周りを妹達が取り囲んでる、そしてその周りを大人たちが取り囲んでるし、なんかピリピリしてる
これはアレだ!あのセリフを言う場面だ!
「あれ?僕また何かやっちゃいました?」
どうしよう、一笑いも起きないんだけど
これは本当に何かやっちゃったんだ、気づいてないの僕だけなんだ
「何かやったわけではないんだよ、ただ聞きたいことがあってね」
「近衛の叔父さん、僕が怒られる感じじゃないの?皆ピリピリしてるから…」
「あぁごめんね瑠璃ちゃん。親の沽券にかかわることだからちょっとね」
いったい何聞かれるんだろ、怒られるわけでもないのに親の沽券っていったい何だろう
「瑠璃ちゃん、この前のことだよ。恋の頭を撫でて褒めてあげたんだ、恋も喜んでくれた」
「仲良し親子で良い話だね」
「そう、ここまではね。でもその後で恋が言ったんだよ、姉さまのなでなでのがふわふわして気持ちいいですのってね。公家のトップをしてなければ崩れ落ちてる所だったよ」
「そ、それは恋に余計なこと言わないように教えておくね、照れ隠しだと思うから」
「そうだろうね、ただそこで気になったんだ。他の娘はどんな反応してるだろうかってね、それで聞いてみたら何処も同じ感じらしくてね」
「そ、そうなんだね」
「ご飯に関しても、姉さまの作ってくれる方が美味しいものがありますの!なんて言われるんだよ」
「うん、僕としては嬉しいけど」
「親としては忸怩たる思いがあるわけだ、それで今日集まったんだよ。瑠璃ちゃんいったいどうやってるんだい、教えてくれるかな」
真顔だ、今まで見てきた中で一番真顔だ
きらりちゃんと奏さんですら真顔だ、鬼と戦ってる時よりマジだ
普段こういった集まりの時に、気配が薄くなる柊夫妻ですら真顔だし目が血走ってる
ふぇぇなにこれぇ
「えーっと、ご飯の方は説明しやすいからこっちから言うね。僕は皆の好みに合わせて味付け変えただけだよ、多分だけど何処の家もお父さんだったりお母さんだったりが好きな味付けでしょ?だから差が出たんだと思うよ」
「そうか、言われてみれば確かにそうだね…」
「でもでも、僕の料理は偶にだから良いんだよ。好きな物ばっかりじゃなくて色んな味を美味しいって思えるほうが良いはずだよ。それにみんなもお母さんの料理好きだって言ってたもん」
集まったお母さん達は納得の表情で、気配が和らいでいく
半分助かったけど、お父さんチームはまだ真顔だ
「そもそもとしてね、頭撫でさせてくれる娘に感謝したほうが良いと思うよ」
「ど、どういうことだい」
「年頃になっても仲が良いなんて、そんなにある事じゃないよ?」
「年頃って、恋はまだまだ子供だよ」
「何言ってるの?もう十分大人に近づいてるよ。それは認識が甘いよ」
お父さんチームは激しく動揺している…
「普通の家庭で、中学生やその付近の思春期に入るような年代になったらさ」
「や、やめてくれ・・・それ以上は耐えられない」
お父さんチームが苦しんでる、妹達が心配するくらい苦しんでる
なんだよ、僕たち親子をたまに生暖かい目で見てるくせにどこも同じじゃん
まぁあんまり口撃すると妹達が怒るからほどほどにしておかないと
「えーっとそれでナデナデなんだけどね、僕と比べたら差が出るに決まってるよ」
「話を戻してくれてありがとう、しかしどこから来るんだいその自信は?」
「近衛の叔父さんも、きらりちゃんも、柊の叔父さんもさ、ナデナデする事だけを考えたことある?年単位で?」
「ん?何を言ってるんだい?」
「僕はあるよ、お姉ちゃんだからね」
「瑠璃ちゃんの中で、お姉ちゃんの定義が狂ってるのはわかるね」
「ひと撫でするたびに、里兎にはこうかな、鈴にはこうかな、恋にはこうかなって魔法で強化した脳をフル活用して考え続けてきたんだよ?ナデナデで僕に勝てる訳ないよ」
保護者達は集まってなんか会話してる
とぎれとぎれ聞こえるんだけどさ、
やっぱりおかしい
狂い方が凄い
才能の無駄遣い
とかとか聞こえるんだ
あんまりな言われようだから僕もイライラしてきちゃう
「姉さまの事を悪く言ってはダメですわ!」
「姉さんは私達の事を考えてくれてるだけだよ」
「狂ってるとか才能の無駄遣いは今に始まったことじゃないでしょ」
優しいいもうとた・・・
「鈴?」
「あ、気がついちゃった?バレないと思ったのに」
うわーん
「もっと前向きな話をするほうが良いよ、お父さんたちがお姉ぇちゃんのナデナデを習得すればいいだけでしょ」
鈴の発言で僕の秘技を伝授することになったんだ
「えーっと里兎にはスーッスって感じで、鈴はワシャワシャーって感じでで、恋にはフワッスーって感じだよ」
誰にも伝わらなかったよ!
しょうがないでしょ感覚的な物を言葉にするのって難しいんだから!
瑠璃の凄い所
一人一人の味覚を完璧に把握している
料理の微調整なんて余裕
なでなでは段位式であれば、10段くらいの腕前
やっぱりおかしい




