表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/136

序章 名もなき物語

 むかしむかし、魔界にはあの世とこの世のさかいに閉じ込められた、哀れで孤独な九人の悪魔兄弟がいました。彼らはいつも九人でした。彼らはいつも九人ぼっちでした。

 そんな九人ぼっちの悪魔たちの前に、一人の天使が舞い降りたのです。

 感情の凍てついた九人ぼっちに、天使は愛を教えました。

 九人ぼっちは、天使と出会って初めて涙の味を知りました。

 たくさんキスをしました。

 痛いくらいに抱きしめ合いました。

 やがて九人の悪魔と一人の天使は手を結び合い、九人ぼっちは十人ぼっちとなったのです。彼らは一つの家族となったのです。

 ですが、十人目の末っ子は神の使徒、天使です。

 天界と地界の交わり、それを神は許しません。

 神の逆鱗に触れた十人ぼっちは、されども神を欺き続けました。

 神は裁きを下しました。

 十人ぼっちは、十人ぼっちのまま、夜半の嵐の中で共に死にました。


 生まれ変わっても、家族になろう。


 十人ぼっちの、最初で最後の約束でした。

 鉄炮雨に打たれながら、天使は掠れた声で歌いました。

 むくろと化した家族と手を結びながら、天使は血を吐いてもなお歌いました。

 声が枯れるまで、命の灯火が消えうる最期の一瞬まで、名もなき歌を歌い、紡ぎました。

 

 その歌声は、生死の境界を越えて、天地を貫き、果てしない世界へと響き渡りました。


 その歌声は、聴いた者たちの心の影を優しく照らしていきました。


 その歌声にのせた悲しい哀しい秘められた記憶が、全生物の脳裏へと花咲きました。


 これは、愛を乞うた十人ぼっちの名もなき物語。





『はい! おしまい! そろそろねようね、アイちゃん!』


『ユウキにいちゃん! もっかい! もっかいよんで!』


『もぉ、アイちゃん、これでごかいめだよぉ? アイちゃんはほんとにこのおはなしがすきだねぇ〜』


『うん! だいすき! だいだいだあ〜いすき!」


『でも、かなしいおはなしだよねぇ』


『う〜ん、そうなんだけどねぇ、なんだかねぇ』


『なんだかねぇ?』


『なんだかねぇ! このじゅうにんぼっちは、またあたらしいせかいで、しあわせなかぞくになれたきがするんだ! だってさ、だってさ、じゅうにんだよぉ!』


『じゅうにんだねぇ』


『うん! おれたちとおんなじ、じゅうにんきょうだいだもんっ!! じゅうにんそろったら、おれたちみたいにちょ〜〜〜さいきょうだよっ!!』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ