05_勇者M、勇者に悩む
どうも勇者Mだ。
この度、かつての勇者であり長年にわたり息子探しの旅を続けていたQさんと共に魔王城に辿り着いたのだがね。
どうも魔王城にいた自称魔王が何故か人間で、しかもどうやらQさんの息子のようなのだ。
・・・そして今現在Qさんはその事実を一人知らないまま熟睡中だ。
「親父・・・元々のマイペースが年取って悪化したか・・・!!」
・・・やっぱ見た目も言動も魔王っぽくないなQジュニア。
でもこれであらためてQさんに再会の挨拶&魔王職に就職したことを報告をする心の準備ができるでしょ。
何なら私が以前いた村の劇団員から仕込まれた完璧なセリフ回しを・・・
「いや・・・さっきは動転していたから勢いで言えたが、こう落ち着いてしまうと話は別だ。
冷静に考えてみれば老い先短い親父に 魔王に就職しました なんて言えるわけがないだろう!!?」
個人的には誇り高い職だと思うのだけれども・・・まあ勇者の息子じゃあねぇ・・・。
でも困ったなぁ。
魔王を放置して帰るのも勇者として良くないが、生き別れの親子を引き裂くほど私も非情な魔ゲフン勇者でもない。
うまいこと親子を一緒にして、ついでに魔王討伐の報告を持ち帰る方法でもあれば良いのだが・・・。
「・・・では、こんなのは如何でありますか?ゴニョゴニョ・・・」
「・・・は?」
・・・ふむ。
「グゥ・・・むむ?
勇者Mさんや、魔王討伐はまだかいの?」
「起きたか親・・・いやQさん!今から魔王との最終決戦だ・・・ですよ!」
「おや勇者Mさんや、何か背が縮んだような気がするんじゃが、気のせいですかいの?」
「ききき・・・気のせいだ!いや、です!」
・・・大根どころじゃないぞQジュニア!これでは村の勇者ショーには・・・・・・・・・まあそこは良いか。
ふっふっふ・・・この魔王の前で随分と余裕ではないか?勇者M、冒険者Qよ。
「・・・逆に魔王が大きくなった気がするんじゃが気のせいですかいの?」
「き・・・気のせいだす!!」
勇者Mはそんな阿呆っぽい喋り方しないぞ・・・頼むぞQジュニア・・・!!
・・・ん?何したかって?
私が着ぐるみを脱いで魔王になって、脱いだ勇者着ぐるみを大急ぎで人間サイズに縫い直してQジュニアに着させたのだ。
これで表面上は勇者Mが魔王を倒す図ができるし、ほとぼりが冷めたら着ぐるみを脱いでQさんとQジュニアの方も丸く収まるであろう?
え?勇者Mの功績がQジュニアに取られる?このままだと倒される?
・・・・・・・・・長年の夢が叶う方が重要なのだ!!
さあ、勇者の聖剣を装備して私に向かって来るがよい!
私だって黙ってやられるほど甘くはないし、どうせなら魔王らしく戦って死にたいのだ!!
「やるのじゃ勇者Mよ!聖剣で魔王を切り裂くのじゃーーー!!」
「え?聖剣めっちゃ重っ・・・・・・・・・で・・・ではいくぞ勇・・・魔王よ!」
え?重い?あの剣羽みたいに軽かったけどな・・・?
だがそんなことより聖剣を持った勇者と最後に戦えるなんて我が魔王生に悔いなしだ!
ぬおおおおおおおおおお!!
「でりゃああああああああああ!!」
ポ ッ キ ー ー ー ン
「・・・え?」
「ほえ?」
「・・・折れたでありますね」
・・・やだ・・・勇者の剣、脆すぎ・・・!?
うーんと・・・えーっと・・・もうこうなったら!
け・・・剣を犠牲にして私をここまで追い詰めるとは流石は勇者!(棒読み)
その勇気と力にに免じてこの大陸からは手を引いてやるとしよう!(棒読み)
幹部その2よ。仲間たちにこの大陸から撤退する準備をするように伝えるのだ!(棒読み)
「かしこまりましたであります!」(迫真)
ではさらばだ勇者ども!(半泣き)
「えぇ・・・?」(混乱)
「ほえ~?」(ボケ)
バヒューン
・・・。
・・・・・・。
なんでだよおおおおおおお!!
ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
「たまには愛される魔王様の物語があっても良いじゃないか」
と思った勢いで小説を書いてみて、今回その最後の3部目を投稿させていただきました。
今後も番外編的な感じでちまちま投稿するかと思いますが、一応は最初に考えていたシナリオを最後まで投稿しきれました。
あらためて、最後まで読んでいただきありがとうございました。