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館を探索する話  作者: 猫宮蒼
一章 祖父の知り合いの館は思った以上にヤバい場所だったようです

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まさか自分の手で難易度を上げていただなんて、ビックリです



 そういえばレイヴンはボギーをマトモに見るのはある意味これが初めてになるんじゃないだろうか。

 ふとイリスはそんな事を考える。先程の部屋であの蛙なのか花なのかわからないモンスターを解き放ったであろうボギーをレイヴンは室外へと逃がしたけれど、こうしてじっくり観察していたかというとそこまで見ていなかったように思う。

 棚の上で足をぷらぷら揺らしながらこちらを見下ろす老ボギーを怪訝そうな表情で見上げるレイヴンは、何となくイリスがそちらへ行こうとした矢先、それ以上行くなというように手で制してくる。


「えぇと……さっきはありがとう……?」

 この場合礼を言うのが適切なのかイリスにはよくわからなかった。レイヴンの後ろから見上げて言うイリスに視線を向けると老ボギーは恐らく笑ったのだろう。目を細める。一瞬びくりとレイヴンの身体が跳ねた。……まぁ、笑ったんだろうなと思いはしても顔が凶悪だからなぁ、と内心失礼な事を思って。


「でもどうして……?」

 ある意味最もな疑問を投げかける。ボギーたちがこの館でやっていた事は、館の掃除と修繕。それからここにやってきたイリスたちへの攻撃行動。少なくともこちらが困っているからといって助けてくれるような事をするようには到底思えない。

「ふむ、以前連れてきた赤いのならばこちらも助ける義理はないがの。少なくともその黒いのは我らの同胞を傷つけてはおらんかったしの」

「あぁ……」

 何となく納得する。確かに大量虐殺しまくったクリスを助けるかと問われれば助けないだろう。イリスがボギーたちの立場だったとしても。

 そうすると今回怪我を負ったのがアレクやモニカだったとしても助けるつもりはなかったという事か。

 ……モニカあたりなら自力で解毒するくらい余裕だろうけれども。


「でも、随分都合良く解毒剤が置いてあったね?」

 Wが創ったモンスターに毒があったとして、それの解毒剤を念の為用意しておくくらいの事はしてあっても不思議ではないが、それにしても都合が良すぎるように思う。

「イリス、室内をよく見てみろ。ここにあるのは薬だけじゃない」

「ほう、お前さん既に気付いておったか」

「え……え?」

 レイヴンに言われるままに室内を見回す。


 並んだ棚にはいくつもの瓶が並べられており、その瓶の中には乾燥した草や何かの液体が入っている。

「そうじゃ、そこの瓶のはボウガンに塗っておいた毒じゃ。お前さんたち、一度は見ているはずじゃろ」

「差し詰めここは薬品庫と言ったところか」

「全然見分けつかないんだけど……」

 恐らく簡単な薬草くらいならわかるだろうけれど、どれが薬でどれが毒なのかと問われればイリスには判断がつかなかった。瓶にラベルが貼ってあるならともかく、そこまで親切設計ではないようだ。

 よくわからないのでレイヴンへと視線を向ける。あからさまな変化はないが何となく難しそうな顔をしているところから、ここに置いてある薬品の大半は一般家庭ではあまり使われないような物なのだろう。


「ほっほ、何やら色々聞きたそうな顔をしておるが……答えられる事はあまりないぞ。そういう風に創られてるでな」

「という事はWという人物についての詳細などは」

「当然話せん。知ってはいてもそれを伝えるための行動は制限されておる。我らにできるのはこの館の中を自由に移動する事くらいじゃて」

「薄々そんな気はしていた。やはりか……」

「え? え、何? どゆこと?」

 何やら既に察しはついているであろうレイヴンに対し、イリスは完全に置いてけぼりだ。意味がわからないので何となく袖を引っぱって説明を求めてみる。

「何じゃ、そこの嬢ちゃんは何も聞いておらんのか? 赤いのが前に持ってったじゃろ、この館について記した本を」

「本……?」


 言われて、確かにクリスが何かの本を持って帰っている事を思い出す。しかし内容まではイリスの知るところではない。レイヴンはクリスから聞いているのだろうか?


「この館の鍵に何らかの術が施されているという事は、クリスから聞いているな?」

「うん、そういや言ってた」

「それがこの館にある魔導器と連動しているらしい」

「……は? え、うん?」

 連動しているからどうだというのか。そこは重要なポイントなのだろうか? 頭上にいくつもの「?」を浮かべているイリスにレイヴンはゆっくりと説明しだした。



 クリスが持ち帰った本にはどうやらこの館の事が記してあったらしく、そこには設計図の他魔導器についても記されていたらしい。

 レイヴンがクリスから聞いた話によると、鍵に仕掛けられた術は魔導器を起動させるためのものだったようだ。だからこそ最初訪れた時はまだ魔導器は動いてはいなかった。

 定期的に鍵を使用する事により魔導器も停止する事なく起動し続ける。

 そしてボギーたちこの館の中にいるモンスターは魔導器によって活動エネルギーを得ているらしい。


「……えぇと、それってつまり」

「魔導器が動いている限り、我らは活動し続ける事ができる、という事じゃよ」

「以前倒された奴とかが復活してるって事?」

「いや、館の見取り図によるとボギーたちが隠されていた使用人部屋以外にもモンスターを収納しているケースがいくつか隠されていたようだ。……まぁ、とにかくこいつらの食事は人間と違って魔導器のエネルギーから得ている、と考えてくれていい」

 老ボギーとレイヴンに言われるも、魔術関連に疎いイリスには大半がわからないままだ。以前こいつら食事とかどうしてるんだろうとは思っていたが、魔導器のエネルギーから得ていると言われても……

「植物の光合成に近いものを想像すればいい」

「あぁ!」

 そう言われれば何となくわかったような気がした。あくまでも気がしただけだが。


「うんと、それで結局どういう事になるの?」

 ボギーたちの食糧事情については理解できた気がするが、それ以外はさっぱりだ。

「魔導器が起動し続ける限りこいつらは生き続ける。そうして一部の個体は成長し、力をつける。つまりここに足を運べば運ぶだけ、危険度が増すという事だ」

「ふむ、そういう事になるのう。成長した同胞は好戦的になるからどうしても戦いは免れん」

「……それじゃ、魔導器を破壊したらどうなるの?」

「この館を中心として大爆発を起こして王都に甚大な被害が出る」


 要するに魔導器が動かなくなればいいんじゃないか、と思って気軽に言ってみたが返ってきた言葉はとんでもないものだった。

「魔導器を正式な手順で停止させるにしても、少々時間がかかる。これ以上魔導器を起動し続ければ停止させるために費やす時間もその分かかるというのがクリスの見解だ。だからこそ、全て終わらせてここに来るのは今日で最後にしないといけない」

「ふむ、賢明な判断じゃの」

 老ボギーの反応からして魔導器が起動し続ければボギーや他のモンスターが活発になって、魔導器を停止させるのに手間がかかるというのは事実で、だからこそレイヴンが怪我をして尚引き返そうとしなかったのも正しい判断なのだろう。


 しかしまさか館に正規の手段でもって足を踏み入れるだけでこいつらがパワーアップするなど誰が予想できようか。


「とりあえずWの性格が恐ろしく歪んでるってのはよくわかった」

 もう何かこれだけ理解すれば充分な気さえしてくる。


「さて、それじゃあそろそろ行くとしようかの」

 足をぷらぷらさせていた老ボギーがぽつりと呟く。行くって何処へ? そう問いかけようとして、

「そういうわけだから下ろしてくれんかの?」

「下りれないのに何で登った!? っていうかどうやってそこまで登った!?」

 問いかけようとしていた言葉は結局出てこなかった。仕方なしにレイヴンが老ボギーを床の上に下ろすと、少し腰を曲げつつもひょこひょこと歩き出す。

 二つ程となりにあった棚の前で止まり、棚を見上げる。


「ここじゃここ、開けとくれぃ」

「何なの? そこで寝るとか言い出さないでよね」

「誰がこんな狭苦しい所で寝るか。お前さんらの探しとる鍵がここに入っとるでな。まぁ開けたらナイフが飛び出してくるから気を付ける事じゃ。仕掛けたのわしだけど」

「おいまて」

 突っ込みどころが多すぎる。


「……どうしてわざわざ鍵の在り処を?」

 あっさりと飛んできたナイフを避けてそこに入っていた鍵を取ったレイヴンの表情は、言うまでもなく訝しげなものだった。てっきり鍵があるという事か、罠があるという事のどちらかは嘘だろうと思っていたが両方本当だったために老ボギーが一体何を思って行動しているのかがわからない。

「なぁに、こっちにはこっちの事情というものがあるんじゃよ。何をぼやっとしとる、行くぞ」

 言うなりこちらに背を向け歩き出す。腰を曲げて覚束ない足取りで歩いているくせに、老ボギーの歩く速度は驚くほど速かった。

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