表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
館を探索する話  作者: 猫宮蒼
一章 祖父の知り合いの館は思った以上にヤバい場所だったようです

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/139

どうやら終わりが見えてきたようです



 この館に足を踏み入れる事かれこれ数回。ロイが祖父に宛てた物など本当は無いんじゃないかとさえ思っていたが、どうやら物は存在していたらしい。

 祖母がまだ生きている時ならば、恐らく祖父も無茶な事はしなかったはずだ。けれど祖母が死んで五年。今祖母に関係する物がここにあると言われれば、祖父はまず諦めて帰るなどという事はしないし、できない。


 祖母は昔から病弱だったのだという。だからこそ祖母の死に関してはWが関与しているという事もない……と思いたい。ロイがどういった経緯で祖母に関する物を持っていたのか……そういった詳しい話はこの手紙には一切記されていない。

 だが王都で再会を果たした以上、祖父だけでなく祖母ともロイは会う機会があったはず。ロイがその時に祖母に関する何かを得ているという事は充分に有り得る。


 それがあるのは隣の部屋――イリスはちらりとそのドアを見る。

 見た所普通のドアだ。もういっその事バールで壊してしまおうか……という考えがよぎるも、ロイの事だ。もしかしたら鍵を使わずにドアを開けた場合何らかの罠が発動するような仕掛けを施しているかもしれない。

 こちらが怪我をするようなものならまだいいが、最悪その何かが入手できないような……例えば、以前棚が爆発したような罠ならば――そう考えると下手に強行突破はできないだろう。


 手紙には鍵がなければ見つかるまで探せ、付き合えと書かれている。

 という事は、鍵はちゃんとどこかにある。それを探し回る事で罠とかモンスターとか危険な目に遭うのは確実だが。むしろ危険な目に遭わせる事がロイの目的なのだろう。最悪の場合そのまま祖父が死んでしまう事が彼の目的なのかも、というかそれが望みなのだろう。確実に。


 そうなると隣の部屋の鍵は今まで立ち入った部屋で特に危険な目に遭わなかった部屋にはないと思われる。

 まだ立ち入っていない部屋も隣を除けば二つある。目当ての鍵はそこにある可能性が高い。

 だがしかし、その二つの部屋に行こうにも肝心の鍵がない。


「……う~ん、となるとやっぱりもう一度一階から一部屋ずつ探すしかないのかなぁ……クリス?」

「ん? あぁ、どうかしたのかい?」

 今の今まで考え込んでいたイリスだが、自分の頭では処理しきれなくなりクリスの意見でも聞こうと思ったものの。

 肝心の彼は手紙の内容をまだ見てすらいなかった。先程まで机の上にあった本をひたすらざっと捲っていく作業をしていたはずだが、いつの間にか普通に本を読んでいる。

 読んでいる、というかむしろ今手にしている本を開いてはいるし視線もそこに落としていたけれど、どこか上の空だ。


「……クリスも何か考え事? タイトル無いけどその本そんなに面白いの?」

「いや……そんな事はないよ」

 ぱたんっと素早く本を閉じる。しかしその本を机の上に戻す事もなく、手にしたままだ。一体何が書かれているのか気になりはしたものの、イリスが見ても恐らくは理解できないだろう。それだけは断言できる。

「この本、持って帰っても大丈夫かな……?」

「いいんじゃないの? どうせここにあったって誰も読まないだろうし。ボギー……が読書するとも思えないし」

 もしかしたらイリスたちがこの館にいない間にWがここに足を踏み入れている可能性も無いわけではないが、持ち去られて困るような物をいつまでもこんな場所に置いたままにはしないだろう。

「そう……だね。うん、それじゃあ遠慮なく」


 手紙を封筒の中に戻そうかとも思ったが、どうせこれは祖父には見せられない。外に持ち出すつもりもないのだからこのままでいいだろう。

 机の上に無造作に置くと、今更のようにクリスはそれに気付いたようだった。どれだけ読書に夢中になっていたんだ。


「……ところでさ、イリス。ちょっとそこの壁見てくれるかな。私達が入ってきたドアのすぐ横の壁」

「ドアのすぐ横?」

 言われて視線をそちらへ向ける。壁には木製のボードが取り付けられ、そこには鍵が一つぶら下がっていた。

「……流石にあれはこの隣のドアのものじゃないよね」

「そう、だね。それはいくらなんでも都合が良すぎるわ」

 鍵を探せといっておきながらすぐそこにありました、などというオチは流石にないだろう。灯台下暗しという事もあるが、探そうとしてこの部屋を出ようとした時に恐らくは普通に視界に入ってくるような場所だ。あっけなさすぎる。


 それでも念の為、その鍵を持ち鍵穴に差し込んでみようとしたが、やはりというべきか違う鍵のようだ。

「って事はこの鍵は、さっきの部屋の隣か向かいのどっちかの鍵って事か……」

「早速行ってみるかい? それとも今日の所は引き上げる? 私としては少し気になる事ができたから戻って調べたい、というのもあるしそれに」

「それに?」

「窓の外を見る限り、そろそろ一雨きそうだからね。早めに戻る事をおススメするよ」


 言われて窓の外を見ると、来る時は薄っすら曇っている程度だった空が今ではどんよりとしていて日の光さえ差し込まない程になっている。

 確かにこれはいつ降ってもおかしくない。あと少し、という思いもあるが焦りは禁物だ。今日の所は引き返して次で終わらせた方がいいだろう。



「ところでイリス、少々厚かましい願いだとは思うが、一つだけいいかな」

「ん? どうかしたの?」

「多分次でこの館の探索は終了できると思う。そうしたら、この館の鍵を私に譲ってはもらえないだろうか」

「鍵を? うん、じいちゃん宛の物が見つかったらもうここに用はないと思うし、終わってからでいいんだよね?」

「……すまないね。こんな事を頼めた義理ではないと思うのだが」

「まださっきの事引きずってるの? うーん、悪いなぁって思うなら今度美味しいご飯でも奢ってくれればいいよ」


 館からの帰り道、珍しく真面目な顔でクリスが言うものだから何事かと身構えたのだが、言われた事はイリスからしてみると拍子抜けする内容だった。

 そういえば以前クリスがこの館の鍵には何かの魔術が施されているとも言っていたし、それを調べるつもりなのだろう。本来ならこの鍵はロイから祖父に渡されたものだが、祖父としても物が手に入ればこの館の鍵を持っていても仕方ないだろうし、それに何より……館の鍵は騎士団に預けるのが一番いい方法だとも思う。

 事後報告になってしまうが、祖父は話せばわかってくれるはずだ。



 ――最初この館に足を踏み入れた時は下手したら一年かかるんじゃないかとさえ思ったが、どうやら思いの外早くこの館とは縁が切れそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ