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館を探索する話  作者: 猫宮蒼
三章 黒幕の館に強制的にご案内されました

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捜索、開始



「――何故わざわざそんな事を聞きに? みたいな反応されたんだよね。フラッド殿は恐らく、イリスを最後に見かけてその後はモニカと上手い事合流できたと信じて疑っていない風ではあった。

 ちなみに何故そんな場所にいたのかを問いかけてみたけど、フラッド殿もどうやら収穫祭を少しだけ見に行って、途中で少し疲れたから人のいない場所で休憩していたそうだ」


 戻ってくるなりそう言ったクリスは、床に突っ伏しかけているアレクを見下ろしながら淡々と語る。

 まぁ、とでも言い出しそうなモニカの口元にある手は、かすかに震えていた。


「恐らく無いと思いたいけど最悪の想像を一つしてもいいかな?

 ……フラッド殿のあれが演技だとしたらどうだろう?」


「どう……いう、事ですの……?」


「言葉の通りの意味だけど? もしフラッド殿がWと何らかの繋がりがあったとしたら……イリスを最後に見かけてその後は知りません、ではなくどこかに連れ去った可能性もあるよねって話さ」

「まさか! 流石にそれはおかしな話ですわ。確かにわたくしとイリスはちょっとした事が原因で諍いを起こしました。ですが、その後わたくしを探すべく移動していたイリスが、誰かにわたくしの行方を尋ねるにしてもあんな威圧感ずっしりな相手に声をかけるとは思えません。そしてフラッド殿の方から声をかけたとしても、いきなりそんな事を言われてすんなりと信用するでしょうか? 面識のない相手の言葉を鵜呑みにする程イリスは無防備ではありませんわ」


「……フラッドとイリスは、以前一度会っている。接点がないわけではない」


 クリスの言葉を否定しようとしたモニカだったが、レイヴンがぽつりと言い出した言葉に思わず視線をレイヴンへと移動させて。その視線を受けたレイヴンはそのまま言葉を続ける。


「ロイ・クラッズの館を探索していた時の話だ。フラッドは何気ない風を装ってイリスに声をかけていた。その時に俺がフラッドの事をイリスに話したので見知らぬ騎士に声をかけられたというような状況にはならない。

 イリスはフラッドの事を黄金騎士団団長だと知っている」

「ふむ。モニカかアレクあたりがイリスの事を話していたのがフラッド殿の耳にでも届いて興味が沸いた、と考えるべきかな。……Wと関りがあるなら接する機会を虎視眈々と狙っていたとも考えられるけど」

「だからこそ、イリスがフラッドに声をかけられたとして、その話をすんなりと信用する可能性は高い。……だがしかし……本当にフラッドがWと関係しているかどうかはまだ断定もできないが」


「ま、待って下さい。フラッド殿がWと関係している可能性の話はそれこそクリスの想像ですよね。何故レイヴンまでその言い分を採用しかけているのです?」

 モニカが慌てて待ったをかける。まだ自分も冷静であるとは言い切れない精神状況ではあるが、一見冷静に見えない事もない二人の方こそが、混乱しているような言い分にさえ聞こえてくる。


「Wに関しての手掛かりが少なすぎる、というのが一つかな。ロイ・クラッズの館の鍵をイリスから預かっていたけれど、それは何者かによって奪われている。その事からW、もしくはそれに関係する者がここ――アーレンハイド城内部で活動できる状態である、というのは以前話したと思うけど」

「それにしたって怪しい人物が今の所全く浮かび上がらないというのも不可解だ。調べなおした結果他国の間諜が二名出てきたものの、Wに関する情報は一切出てこなかった。

 ……ならば考えられるのはWが関わっているのはこの城の中でも上の立場にあるか、もしくはそれなりの後ろ盾を得ているか、だ」

「フラッド殿はアーレンハイド黄金騎士団の団長にして六ある騎士団を統括する立場でもある。……かなり上の立場だし後ろ盾として考えるとなると……これ以上ない程にうってつけだとは思わないか?」


 クリスとレイヴンがそれぞれお互いの考えを繋ぐように言葉を紡ぐ。その言葉を聞いていると、何だか本当にそうなんじゃないか、という気がしてしまいモニカは「言われてみれば……」と頷いてしまいそうになる。


「二人とも、そこら辺でやめておかないとモニカが本当に信じたらどうするつもりですか。性質の悪い冗談はそこまでにして下さい」

 言われてみればそうかもしれない、とモニカが口にする前にアレクは呆れたように言い捨てる。

「確かに現時点でフラッド殿が何となく怪しいようには思いますけど、根拠はないしあくまでも最悪の想像ってだけでしょう。絶対に無いと言い切れない部分もありますが……正直今その件を突き詰めて考えるつもりはありませんよ」

 床に突っ伏していたままだったアレクがすっと立ち上がる。


「今やるべき事はそんな机上の空論を展開する事ではなく、イリスの捜索です」

「おや、ようやくその事実に辿り着いたのかい? とからかいたいところだけど、確かにその通りだね」

「……門番にイリスらしき人物が王都を出たかどうかの確認は俺がしてくる」

 クリスがレイヴンに視線を向けると、心得たとばかりにレイヴンが頷きすぐさま執務室を出て行く。


「イリスの家族があまり事態を問題だと思っていないから、身内からの通報を受けて、という形での捜査はできない……というわけでこれは完全にこちらの私情という事になるのかな? どちらにせよ大々的に動く事はしない方が良さそうだけど」

「となると他の騎士を動かして、というわけにもいきませんわね。……わたくしが直接イリスのご家族に出向いて今回の事態を説明するべきでしょうか?」

「……王都の外に出たようであるならば、そうした方がいいかもしれないね」



 レイヴンが戻ってくるまでの間に、クリスとアレクが捜索するべき場所をいくつかに絞り事態を大きくしないようにそれとなく巡回警備をしている騎士たちから話を聞くべきだ、という話し合いをモニカは落ち着かない様子で見ていた。どうせなら事件の一つとしてしまった方が動きやすいのだが、そうすると今度は騎士団の信用問題がついてくる。隠蔽するつもりはないが、もし内部にWもしくはかかわりのある者がいるならば、事を大きくするのは得策ではない。内密に済ませるのが最善の策なのだろう、とは思う。



 レイヴンが戻ってくるよりも先に話し合いが終わったらしく、クリスはモニカにここで待機とだけ言い残し、アレクと共に執務室を出る。

 動かせる人数が少ない以上、大人しく待機するのも気持ちが落ち着かないが各自がバラバラに動いて情報を共有できないのも効率が悪い。気ばかりが急くが大人しくここで待機して、中継役に務める他ないのだろう。





 そうして待つ事一時間。

 まず最初に戻ってきたのは、当然というべきかレイヴンだった。

 室内にいるものと思っていたアレクとクリスが居ない事に彼は眉を顰めたが、モニカの説明を受けると納得したようだ。更に待つ事数十分。やや遅れてアレクとクリスが戻ってくる。

 モニカから見た彼らの表情には特に何か、いい情報が得られたというような気配は感じ取れなかった。



「まず最初に。イリスらしき人物が王都を出たという事はないらしい。収穫祭初日、王都の外からやってきた人はかなりいたようだが、王都から出る、というような人物はあまりいなかった。年齢、背格好でイリスと似たような人物で王都を出る、というような該当者は一人もいなかった。出るなら南門からだとは思うが、念の為他の門も確認を取ったがやはり該当する人物はいないようだ。

 その他王都を出ていった人物で何か大きな荷物を抱えていたとか怪しい人物も探ってみたが、特にそういうのはいなかったな。初日のみならず、収穫祭の間は特にそういった人物は見受けられないという話だ」


「ふむ、となるとイリスは恐らくまだ王都のどこかにいると考えていいんだろうね」

「しかしイリスらしき人物の目撃情報はこちらもほとんど得られませんでした。……無事だといいんですが」

「どこかに監禁されている、と考えるべきか。生きていればの話だけど。……該当しそうな場所を地道に調べていくしかなさそうだね」

「……ですが、あまり時間もないのでは? 今はまだいいです。けれどこれ以上時間がかかるようならご家族の方も不審に思うでしょうし、そうなると……」

「その時は普通に騎士団動かせるだろ。まぁ、そうなると騎士団の信用が少々落ちるだろうけどね」


 言いながら、持ち込んだ地図を机の上に広げる。

 王都内部の地図にクリスがざっと印をつけて、

「ひとまず分担して探すしかないだろうね。もし見つけたとして、一人で突入しないこと。必ず連絡を入れる事。Wが関わっている可能性が高いからこそ、単独で突入するのは相手の思う壺かもしれない」

「……緊急事態だと判断した場合は単独で突入するかもしれませんが」

「その時は仕方ないだろうね。とりあえず定時連絡は欠かさないように。……ところで、私は特に今用事がないから問題なく捜索に行けるけど……」


 アレク、レイヴン、モニカと順番に視線を巡らせる。先程書類を提出したとはいえ、アレクもモニカも本来ならばまだ執務にかかりきりの時間帯である。ある意味緊急事態とはいえ、執務を放り出すわけにもいかない。


「問題ありません。今日の分は既に終わらせてあります」

「わたくしも、ほぼ終わらせましてよ」


 レイヴンは何もこたえず、ただ無言で頷いた。


「そうか。ならば何も問題はないね。それじゃあ、行こうか」

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