目星
委員長、スケッチ、民族、元気。
幼馴染を除く70レベル越えのメンバー。
彼等に対し、見た目のみであだ名を付けてみた。
ちな、全員女性である。
おそらく皆、10代から20代前半。
凄い壮観な花園だね。
どの花に触れても怪我だけじゃすまなそう。
恐らくこの中に黒龍を使役していた魔物使いもいる筈だ。
目星を付けるという意味でも観察は悪くない。
まずは、委員長。
日本刀っぽい、日本刀でいいや、を装備した釣り目美人。
髪型は前分けの後ろ結びで、眼鏡を掛けている。
一挙手一投足に達人っぽさを感じさせる振舞い。
白のブレザーと赤のロングスカートを着こなす、まさに見た目が委員長。
次はセミロングが可愛いスケッチ。
スケッチはスケッチブックに字を書いて、衛兵と会話していた。
コミュ障か喋れないのか、それをスケッチブックでカバーしている。
見た目、ひ弱でオドオド気味の色白金髪少女。
なのにレベル70越え。
特異なスキル持ちであることは間違いなさそう。
魔物を使役する能力が一番、釣り合いそうな感じである。
自分ではレベルを上げられなさそうだしね。
三番目は民俗。
煌びやかな民族衣装を羽織った少女。
頭にも謎の民族帽子を被っている。
見た目は15歳以下、日本で言う中学生くらいの容姿。
しかし、表情には自信が満ち溢れており、高圧的な印象を受ける。
私とそれ以外の下々達、くらいに思ってるんじゃなかろうか。
どうやって戦うんだろうね。
武器も無く、丸腰のままで。
最後は元気。
見た目普通のポニーテール少女。
スパッツがあれば、穿いて欲しい。
めっちゃ似合うので。
健康そうな美脚。
多分、蹴りが武器。
以上。
『最後の子は大分、雑だったような……』
(私の思いは、委員長、スケッチ、民族、元気という単語に集約されている)
犯人候補の説明も終わったところで、今度こそ攻略が始まりそうだ。
私達が連れて来られたのは魔法陣が三つ並ぶ謎の遺跡。
集まった参加者は54人。
その内、何人かは私達の実力を見る大国からのスカウトマンだろう。
黒龍に襲われた教師達もこの中に含まれる予定だった筈。
一応、言っておくけど、あの二人のレベルは50越えでございました。
「これから君達を三人ずつ転移陣に乗せ、遺跡内部に送り込む予定だ」
転移陣とはかなり高価な代物が備え付けられているんだな、このダンジョン。
説明役の騎士に対して、委員長が手を上げる。
発言の許可を得ると、
「転移陣の転送間隔はどの程度なのか教えて欲しい」
「一分だ。19班に分かれ転移となるから、トップとラスでは19分差があるな」
「ふむ、順番はくじ引きが妥当か……」
「下らん、公平に実力で決めればいい。勿論、私が先を頂くがな」
やはり、皆に対して高圧的な民族。
あだ名、戦闘民族に変更しようかな。
結局、騎士達が王国の威厳を振り翳し、くじ引きとなった。
「クリスは何番?」
「ソフィアと一緒の10番。少し楽できそうかな」
「そういう、リルアは何番なのよ?」
「ラス」
「ふふん、日頃の行いよね。秘薬なんて邪な心で狙うものじゃございません」
「別に悪くないかなと思う」
「何で?」
「私の前に魔物使いがいるなら、罠潰しつつ他のメンバーをサポ出来るし」
「秘薬より、先に魔物使いってこと?」
「秘薬はソフィア達が必ず取るでしょ。私は後方から皆を守る役目をしようかな」
幼馴染達を信じられるからこそ溢れ出た言葉。
少し、恥ずかしそうに微笑む二人。
クリスもソフィアも実力では、誰にも負けないと信じている。
だからこそ、宝は二人に任せるべきだ。
なので私は、なるべく実力を隠してサポート役に徹するつもり。
モンスター倒すと経験値増加バフでレベル上がっちゃうしね。
幼馴染二人と私が前後で分かれることで、それなりにカバーも出来る筈だ。
『人命優先ですか……。まったく……』
(いつも通りの溜息有難う。だから、ステータス改竄とか止めてよね)
『当たり前です。この場合、私も真面目に働くしかありません。少し騙しますが』
(くれぐれも迷惑は私、個人に限定するように)
『はいはい。さっさと、犯人を見つけて血みどろの騙し合いをしたいところです』
鑑定スキルに顔は見えないが、恐らく笑っているんだろうな。
かく言う、私も笑っている。
何だかんだ、仲はいいのだ。
やるべき時は鑑定スキルと私、力を合わせて困難を乗り越えて来た。
いよいよ、転移が始まり私はあることに気付く。
同じ19班にスケッチがいる。
此方に気付いたのか、恥ずかしそうにスケッチブックで顔下半分を隠した。
チラリと上目遣いで、視線を合わせてくる。
こ、コイツ、凄く可愛い。
そして、そして、
『Fカップであると判断します』
許すまじ、天然素材。
ついつい凝視してしまう、たゆん、と揺れる神器。
スケッチは顔を赤らめて俯いてしまった。
私、虐めてないからね。
そうこうしている内に私達の番が近付いて来た。
もう一人の班員である騎士様が重装備を纏い、ガチャリと転移陣に歩を進める。
私とスケッチも騎士の後に続く。
世にも珍しい未踏領域ダンジョン。
実はこのダンジョンには、まだ名前が付けられていない。
攻略後にその性質や宝の内容によって正式名称が決定されるのだ。
その未開の地へと繋がる魔法陣に乗る、私達19班。
緑色の光に包まれると、少しの浮遊感と共に視界に映っていた森が消えた。
遺跡内部に侵入。
私が瞳を開けると、そこで待ち構えていたのは――。