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二重の罠

 いきなり訪れた危機。

 騎士が告げた選別方法は用意された解析陣を踏む、それだけ。

 つまり、何が起こるのかというと私の超高レベルが簡単にバレる。

 道具無しにレベル一覧を作成する鑑定スキルが超レアってことが分かるよね。

 私は邪険に扱ってるけどさ。

 

 ちなみに、解析陣は一国に1、2個しかない非常に高価な代物だ。

 貴重な陣を外に持ち出すとか大国の人材確保に掛ける意気込みが伺える。


 薄々とあった違和感。

 何故、大国がこぞって人材探しを始めたのか。 

 ダンジョンにも踏み込んでないのに、そこを訝しむのは野暮ってもんかな。

 ということで無視した。

 絶対に何かありそうだし、巻き込まれたくない。


「ソフィア、頼み事があるんだけど……。例の薬を頂戴、お願い!」

「また、レベルを改竄する薬? まあ、いいけどさ」

「味は甘いのがいいです」

「甘くして効果を残すの結構、難しいから止めて欲しいんだけど……」

「今日だけ! 次からは大人になる!」

「はあ……、それで何レベルくらい下げればいいの?」

「40レベルくらいで」

「はいはい」


 お抱えの有能錬金術師が飲むだけでレベルを改竄する薬を錬成する。

 ちなみに、この薬。

 地球にある素材が無いと完成しない。

 ソフィアの呪われた左腕が異世界を巡回して、定期的に持ってくるモノ。

 大紅袍とかいう謎の茶葉である。

 5年前にたまたま価格ラベルがくっ付いており、値段を見たらぶっ飛んだ。

 

 お値段、1000万円。


 それを定期的に盗んで……、いや採取してくれるのだ、ソフィアの左腕が。

 他にも異世界からの素材を組み合わせて、完成したのがレベル隠蔽薬である。

 実は昔、レベルを下げる薬を作らせた副産物がコレってオチなんだけどね。


「出来たよ」

「有難う! んっ、柑橘系だね」

「ポテプの森で見つけた果物。それしか甘いの無かったから」

「凄いね! 限られた選択肢で良くオーダー通り作れるもんだ」

「日々、鍛錬を積んでおりますので」

「次はお前達の番だぞ! 早く乗れ!」


 解析陣の列整理担当をしていた衛兵が槍の穂先を向けて早く乗るよう急かす。

 対象者が800人も居るので迅速に作業を済ませたいのだろう。

 すぐに、解析陣に乗るリムルムント生まれの村民一同。

 まずは、クリスが、ソフィアが、そして私が通過して全員パス!

 その筈だったのだが、


「お前は駄目だ! レベルが足りない!」

「えっ? 嘘でしょ! 私、ひゃく……60レベルくらいだと思うんですけど」

「見てみろ、解析陣の示す数値は49だ」

「ちょちょちょっ! ボーダー幾つよ?」

「50だ。残念だったな、1足りない。今日は人数が多いので例外は認められん」


 ちょっと待て! 隠蔽レベル下がりすぎでは?

 ソフィアを見ると首を傾げるばかりで原因が分からないようだ。

 おーい、私ここでゲームオーバーなんですけど。


『錬成時に柑橘系を混ぜると一時的に効果が跳ね上がるものってなーんだ?』

(てめぇ……)

『正解はレベル隠蔽薬でした、キラッ』


 キラッ、じゃねぇよボケ。

 確かにソフィアが言ってたな、ポテプの森で拾った甘い物は"コレ"だけって。

 珍しいキノコを鑑定スキルが発見したのは覚えている。

 果物はたまたま、その横に生えていてソフィアが採取していた。

 本命はコイツだったのかよ……。

 ダンジョン攻略に向けたレベル解析を先読みして、拾わせたんだな。

 私が甘党だということも計算に入れた上で。


『さて、どうするのですか? 絶賛、経験値ブースト中ですが……』

(まさか、二重の罠が張ってあるなんて……、不覚)

『ほら、時間がないのです。さっさと、周辺の魔物を倒してくるがいいです』

(くっ、雑魚モンスターを狩ってレベル上げしてくるわよ。たかが1でしょ?)

『二度目に通過するのであれば、さらに必要でしょう。5くらいが妥当かと』

(わ、分かったわよ、上げて来ればいいんでしょ! 上げて来れば!)


 鑑定スキルが周囲一帯の地図を出し、魔物の分布図を表示する。

 泣きながら、速攻で殴りにいった。

 身勝手に魔物を狩るのは、ポリシーに反するので死霊系モンスターのみボコる。

 安らかにお休み、私の拳で。

 天国で往生して、綺麗な魂となって生まれ変わって来るんだよ。


 最初に解析陣に乗って10分後。

 私が戻った時には、既に選別が終了しようとしていた。

 ある列では解析陣を片付ける動きまである。

 

「ちょっと、最後に乗らせて!」

「貴様、さっきの! 見苦しい! 何度、乗っても同じ、、54レベルだと!?」


 衛兵が驚きの余り、後退りしている。

 そりゃ、そうだろうよ。

 800の参加者の内、50レベル以上は数十人。

 普通の人であれば人生の大半を戦に掛けて、辿り着く境地だ。

 それを、御遣い感覚で5レベル上げる奴なんてこの世にいるワケが無い。

 しかも、本当は105レベルとかいう化け物なんだけどな。


「通過してもいいでしょ?」


 試しに衛兵自身が何度も解析陣に乗り、故障が無いか確かめている。

 疑うなよ、君の眼は真実を映している。

 結果、他の解析陣に乗らされることになったが何とかこの場を切り抜けた。

 最初の関門を通過した私に駆け寄って来る幼馴染二人。


「ごめん……、私のせいで……」

「いや、真犯人がいたからソフィアのせいじゃないよ」


 うわーい、ダンジョンに入る前に5レベルも上がってる。

 普通の冒険者なら大満足だよね。

 本当にどうすんだ、コレ。

 ダンジョン攻略後の私は一体、何レベルまで上昇しているのでしょうか。

 

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