281.教会の日常
◇◇◇◇◇
少女は、教会に裏手にある孤児院にいた。
いま彼女は、顔馴染みの孤児の子供達の昼食の用意をしている。
彼女は冒険者となり、短くも長く感じる一月半の間で濃密な経験を得ていた。
国境の街の孤児院で運営資金集めの出店を手伝った事。
隣国の子猫種の国へ子猫の王女を送り届けた事。
それらの過程で仲間を得て、パーティのリーダーを任された事。
そして、その中で仲間と分かれ離れになった事。
そのような道を歩んだ少女は現在、生家とも言える孤児院に戻っていた。
「ルネ姉、ゴハンなに?」
「肉、肉が食べたーい!」
「あたし、ニガイお野菜いらなーい」
「じゃあ、昨日ハツカさんと一緒に作ったハンバーグの残りを……」
「「「やっぱり、いまルネ姉が作ってくれていたものが食べたいです!」」」
「そ、そうですか? 昨日は、あんなに喜んでいたのに……」
ルネはマジックバックから、追加の一品を取り出そうとした所で子供達に止められる。
それは子供達なりに考えた、ルネ製、ハツカ製に対する危機管理。
ルネは、そんな子供達の様子を不思議に思いながらも、その成長を温かく見守る。
昼食を終えて後片付けをしたあと、野草茶を入れて一息つく。
そのあとは頃合いを見て、干していた洗濯物を取り込んで折りたたんでいく。
それは、冒険者になる前までルネが過ごして来た日常風景。
ルネは、それらが一通り終わると、間借りしている一室でポーションの作成を始める。
◇◇◇◇◇
サントスに狩猟都市に送られて来てからの三日間、ルネは同じ日々を過ごしていた。
現在、狩猟都市では多くの冒険者が、冒険者ギルドによって駆り出されている。
それは、ルネ達が遭遇した大荒鷲の襲撃から始まった一連の魔物の出現に起因する。
猪頸鬼の襲撃から逃れたルネ達が、狩猟都市に着いたのは明け方だった。
それ程の時間を要したのは、道中で散発的な魔物の襲撃を受けた為。
その全てを振りれず抗戦を余儀なくされた事が、到着が遅れた負の要因。
ただしその反面、先に到着していた馬車によって事の成り行きが伝わっていた。
その事でルネ達は、冒険者ギルドからの先遣隊との合流が叶い、無事に帰還する。
そして、その後は慌しい冒険者ギルドで、少々拘束される事となった。
それは、冒険者ギルドにも猪頸鬼の事は古い記録にしかない状態だった事。
また、猪頸鬼と時を同じくして、魔物の動きが活性化した事。
そして、その状況を把握する事情聴取と、対応可能な冒険者の確保と緊急依頼の発行。
ギルドの職員達はルネ達同様、昨晩から自分達の戦場で戦い続けていた。
「それでは、いくつか確認をさせていただきます」
ルネは冒険者ギルドの一室に招き入れられ、ギルドの職員に、そう話を切り出される。
そこで交わした内容は、簡潔な質疑応答。
と言うか、どちらかと言うと、先の何人かが答えた回答の答え合わせのようなもの。
かなり事務的に進められた会話が交わされ、ここでの聴取が終了する。
それは、疲労と負傷で弱ったルネを気遣ってのものだったのか。
はたまた、疲れ果てたギルド職員の怠慢だったのか、その真相は分からない。
「確認は以上です。ご協力ありがとうございます」
「はい」
「ああ、それと、あなたは薬師でしたよね?」
「はい」
「冒険者ギルドへ納めるポーションの作成依頼をしたいのですが、よろしいですか?」
「はい、大丈夫です」
「では。あとで受付け、手続きした依頼表を回しておくので受け取って下さい」
「わかりました」
そして話の最後に、ルネはポーションの作成依頼を受けてコウヤ達と合流する。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
もう少しだけ話を続けたいと思います。
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