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153.紅玉の行方

「結局、『黄玉(オマエ達)』は、何がしたいんだ?」


 ここに(いた)りマサトが、カルトスの真意を率直に訊ねる。


「お前達は、まずは自分達『紅玉(こうぎょく)』の把握をすべきだ、と忠告する」


 カルトスは、ハツカ達に『紅玉(こうぎょく)』の全ての転移者の把握を注意喚起した。


逸脱者(エラント)が出現すると言う事は、同じ宝玉の仲間の把握が出来ていない、と言う事だ」

「それは……そうですね」

「大前提として、その把握が出来ていれば『同郷殺し』は、限りなく起きなくなる」


 逸脱者(エラント)の出現条件となる『同じ宝玉を分けた同郷殺し』

 カルトスの指摘は、それを防ぐ為の最低条件。

 だが、異世界転移に舞い上がった転移者は、その最重要事項の確認を往々(おうおう)(おこた)る。


「お前達には、この地域に留まってもらい、可能な限り『紅玉(こうぎょく)』の把握に努めてもらう」


 それゆえに、手遅れ感はあったが、カルトスはハツカ達に状況の把握を求めた。


「つまり、私達と戦う気は無い、と?」」


 だが、最初が最悪だっただけに、ハツカの中でカルトスは未だに敵の認識が(ぬぐ)えない。


現在(いま)の『無色派』には、昔のような全面闘争をするだけの戦力は無い」

「運が良かったな。時期が悪ければ俺達、ここでお終い(ジ・エンド)だったらしいぞ」

「やはり気に入りませんね」

「厄介な前例があるのでな。最後の手段として考えておかなければならない手段だ」

「ハツカ、カルトスが、こう言うって事は、いまは本当に戦う気は無いんだろう」

「……分かりました。いまはマサトの言葉に免じて、そう言う事にしておきます」


 ここに(いた)りハツカは、ようやくカルトスに向けていた敵意を一段階下げた。


「ともかく、いまなら『紅玉(こうぎょく)』は、まだ広域に散っていないだろう」

「そうだな。初期転移地(狩猟都市)からの移動となると、国境の街(ここ)か、エラント出現地(製錬都市)までだろう」

「行動の基点となるギルドが所在していて現実的な移動範囲が、そのあたりですか……」

「無謀な者なら魔物との戦闘で死に、慎重な者なら、いきなり長距離の移動はしない」


 カルトスは、余程の事が無い限り、三つの冒険者ギルドで捕捉が出来ると()む。


「待って下さい。武術祭で活躍した者が一人います」


 だが、そこでハツカは、武術祭の開催中に酒場で祝杯を上げた(イサオ)の事を思い出した。


「武術祭に出ていた『紅玉(こうぎょく)』とは、お前達の仲間の『炎術師(パイロマンサー)』の事だろう?」


 カルトスは、武術祭のシニア・マジックでの優勝者である炎術師(コウヤ)の事は認知していた。

 しかしながら、その影に隠れてしまった準優勝者達に意識が向いていなかったようだ。


「シニア・オール準優勝者のイサオも『紅玉(こうぎょく)』の一人です」

「へぇ、コウヤも、そのイサオってヤツもスゴイな」


 マサトが、コウヤとイサオの活躍を聞いて、素直に感心の念を表す。


 ここ数日でハツカが知ったマサトとは、魔法が全く使えない刀使いだった。

 しかも、その見た目の立派さとは裏腹なナマクラ刀の宝刀使い。

 言い換えれば、シロウよりもリーチがある撲殺剣士である。

 特殊な飛び道具的な技を習得している為、中距離戦を得意とした変わり種。

 そんな評価となるマサトだったが、イサオと比較した場合、確実に実力は上だった。


 もちろん、そこには、未だに不明なイサオの固有能力の評価は加味されていない。

 しかしながら、武術祭決勝で敗北している事から、それは非戦闘能力と見ている。

 ゆえに、カルトスがイサオの事を気にも留めていなかった事には納得がいっていた。


「イサオには向上心の高い男女の仲間がいて、確か王都を目指していました」


 ハツカは、仲間の一人のトムもシニア・ウェポンの準優勝者である事。

 女性のヤンも、トムに匹敵する実力のある剣士である事。

 三人合わせて『トムヤン(クン)』である事を真剣に語った。


「その最後の情報っているか?」

「これが、彼らを表す最大の特徴です」

「そう言えば、噂で聞いた事があるパーティ名だな」

「マジか?」

「身に着けている装備品が素晴らしく、戦闘の実力はあるが、一人を除いて粗暴だと」

「それは間違いなくトムヤンクンです。イサオ以外は、言動に問題があります」

「では、そちらは『無色派』で調査しよう。それで『紅玉(こうぎょく)』が何人いるか分かるか?」


 カルトスは、最終的に探し出さなければならない『紅玉(こうぎょく)』の人数を尋ねた。


「少なくとも十数人は居たかと」

「正確な人数なんて覚えていないな」


 ハツカ達が、現在(いま)把握している『紅玉(こうぎょく)』の人数は八名。

 ハツカ、シロウ、コウヤ、マサト、ハルナ、イサオ。

 そこに逸脱者(エラント)となった者と、その被害者が加わる事となる。

 残りの者となると、最初に運命の女神様に招かれた『白い空間』の記憶となる。

 だが、その時に他者はモチロン、人数の事に気を掛けている者などいなかった。


「予想の範疇だ。これらの確認に気を回せる者は、そうはいない」

「なんだ? ダメもとの質問だったのか?」

「自分達『黄玉(おうぎょく)』のように、あとから推測が出来る宝玉群もあるが、それは(まれ)だ」

「『黄道十二星座』が由縁の固有能力で12人、と言う事ですか。分かりやすいですね」


 ハツカにヒニクを言う余裕が戻るも、肝心の『白い空間』での記憶は曖昧なまま。

 それはマサトも同じで、地道に『紅玉(こうぎょく)』を探すしかない、と言う結論に落ち着いた。


「では、自分は失礼する。『紅玉(こうぎょく)』が固まっていてくれれば、こちらも対処がしやすい」


 カルトスは、当面の目的は果たした、と黒装束(リコ)を開放してハツカ達の前から立ち去る。

 残されたハツカ達もリコを起こすと、事の経緯を曖昧に答えて作業小屋から出た。

 納得いかない様子のリコではあったが、暗に関わる事の(あや)うさを示唆(しさ)されて引いた。

 そんな一連の経緯を影から見ていた者が二人居た。

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