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124.パーティの名は

 そうしたバドとの会話を交わしているうちに目的の解体場へと着く。

 シロウ達は、そこで大量の岩鼠(ロックチャック)を始めとした狩猟品を受け渡す。

 そして、変異種である炎舌鳥(ファイアシュライク)は、別室の検分室で受け渡しされた。


「想像以上の量と極めて珍しい魔鳥ですね」

「ああ、あそこで運を使い切っていたとしても、生き残れたのだから文句は言えないな」


 バドは、唖然としながら査定を進め、コウヤは、もう二度はごめんだ、と嘆息する。


諸々(もろもろ)含めて、かなりの高額になります。ギルドカードへの入金で、よろしいですか?」

「うん? もしかしてギルドカードって預金機能があるのか?」


 バドが、シロウ達のギルドカードに預金がない事を読み取って訊ねる。

 そしてシロウ達は、そこで初めてギルドカードに預金機能があると知る事となった。


「はい。突然の高額な支払いとなりなすと、お互いに不都合が生じる事がありますので」

「つまり、ギルドは高額な支払いを一括払いせずに、一旦保留に出来る訳か」

「まぁ、そうですが、冒険者の方には、高額の金を持ち歩くリスクが回避出来ます」

「なるほど、物は言いようだな」

「それに、この金は、どこの冒険者ギルドでも降ろせる利点があります」

「普通に便利そうだなぁ」

「分かった。ただ……そうだな、剣虎(スミロドン)の分は現金でもらいたい」


 コウヤは、当面の資金として、一部の現金化を希望する。


「分かりました……あれっ、そう言えば、まだパーティ登録が仮登録ですね?」


 バドは、支払いに対してギルドカードを再確認して訊ねた。


「ああ、あのパーティ名とリーダー、そしてメンバーの登録をしろ、ってヤツか」

「それが無いと、何か問題があるのか?」


 コウヤは、別にルネのパーティの一員ではない。

 ただ、アニィとの一件があった為、一緒に行動を共にしていただけである。

 なので、その点で冒険者ギルドの規約に抵触するようなものがあったか、と考えた。


「いえ、パーティ登録がされていると、各種手続きが簡略化がされる、と言う事です」

「なら、チャチャッとやっとくか。いま二人いないんだけど大丈夫?」

「その場合は、後日、本人に確認をしてもらい間違いがなければ正式に更新されます」

「了解。じゃあリーダーはルネで、メンバーは俺とハツカとコウヤ。パーティ名は……」

「おい、ちょっと待て!」


 コウヤは、さらりとメンバーに自分が含まれている事に慌てる。


「おれは部外者だぞ」

「えーっ、良いじゃん、どうせ単独行動(ボッチ)だったんだろ?」

「ボッチとか言うな」

「男が俺一人だと、二対一になる事があるんだよ。コウヤは俺の味方だろ?」

「おれは、どちらの味方でもないぞ」

「男と女だと、考え方の違いで絶対的に分かりあえない事があるんだよ。特にロマン!」

「ああ、そう言う感覚的な事か。なんとなく分かるが……」

「じゃあ、決定な」

「いや、だから、ちょっと待て!」


 コウヤが、あまりの急展開に待ったを掛ける。

 ──が、そんな事は、お構いなしにシロウは、強引にコウヤをパーティに加入させた。


 ◇◇◇◇◇


 冒険者ギルドを出たシロウ達は、しばらく街中を探索した後、ルネ達と合流する。

 そしてコウヤは、冒険者ギルドでの経緯を説明して、改めてルネ達に挨拶を交わす。

 話を聞いたルネは、コウヤの加入を歓迎し、ハツカは、何を今更、と返した。


 その後、シロウ達は、武術祭後で空きが目立つようになった宿屋で部屋を確保する。

 そのあとは、部屋の中で、購入して来た料理を広げていった。

 それは、気軽な身内だけの祝宴の準備。


 その主役は、改めてパーティへの加入を果たしたコウヤ。

 そして、新たに結成されたパーティの結成祝いでもあった。


 それぞれが、好きな物に手を伸ばし、思い思いに口にしていく。

 子猫(ケットシー)の村でも数日の休息を取っていた。

 しかしながら、国境の街の中である、と言う安心感は、やはり格別のものであった。

 その為、(おの)ずと、その飲み食いのペースも上がっていく。


「それはそうと、パーティ名って、何にしたんですか?」


 そんな弛緩しきっていた場が、ルネの一言によって少し雰囲気が変わった。


「……おれの知っている似た言葉では『文芸復興』と翻訳(ほんやく)されていたな」


 と、コウヤは、少し目をそらしながらパーティ名について説明した。


「文芸復興ですか?」

「どこかで聞いた気がしますが、ずいぶんと堅苦しい意味を持たせたものですね?」


 ルネは、キョトンとした顔となり、ハツカが、なぜそんな名前にしたのか、と(いぶか)しむ。

 ただ、シロウは満面の笑みを浮かべて『文芸復興』の意味を、噛み砕いて説明した。


「要は、先人の良いものを見習って、より良くしていこう、ってくらいの意味だよ」

「なるほど。シロさん、それは、とても良い考えだと思います!」


 ルネは、そんなシロウの説明を聞いて感心する。


「まぁ、ルネが気に入ったのなら問題ない……」

懐古厨(かいこちゅう)のようにも聞こえますが、コウヤ、何か問題でも?」


 ハツカは、ルネから少し距離を取ったコウヤに不信を(いだ)き、その真意を訊ねる。

 するとコウヤは、登録時にシロウが記入した用紙の控えを、そっと差し出した。


「ああ、控えはコウヤが持っていたのですか」

「それで、パーティ名は、どうなって……」


 ハツカが用紙を受け取り、ルネが覗き込む:

 そしてルネは、そこに記入されたパーティ名を見て固まった。


「なっ、分かりやすくて良い名前だろ?『ルネさん達(ルネサンズ)』」


 こうしてルネは、自分の名前が前面に出たパーティのリーダーとなってしまった。

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