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機械音痴ですから

 ざわざわと、その空間は一時的にかなり賑わっていた。

 初対面の者ばかりにも関わらず、彼らは話したくて仕方がないというように、意気揚々と言葉を交わしていた。


 ――――ガラッ、と・・・・その賑わう空間の中に扉を開ける者が1人・・・・、


「・・・・皆様、席にお座りください」


 その言葉を聞き、皆は一斉に静まり返ると、各々の席へと座り始める。

 歯向かったら何が起こるか分からない、その恐怖感に駆られて、この者――――恵の言うことを聞かない者はいなかった。

 恵は、全ての者が席に座ったのを確認すると、口を開く。


「・・・・皆様、おめでとうございます。これで、あなたたちはこの学園の生徒として、全ての条件を満たしたと言えます」


 その言葉を聞き、教室の中は一斉にざわっと騒がしくなる。

 歓喜の声を上げる者もいれば、安堵の表情を浮かべる者もいた。

 

「・・・・では、これから皆様の今後の生活について、ご説明いたします」


 恵はそう言うと、「お手持ちのタブレットをご確認ください」と続ける。

 その言葉を、当然皆は聞く――――が、1人・・・・その言葉を止めるように――――、


「タブレットの電源が点かない!何という事だ!きっと僕には関係ないところで何かがあったのだろう!僕には関係ないところで!」


 大事なことなので二回言う偶然に、「はぁ・・・・」と、あきれるようにため息を吐く恵――――、


「必偶様は機械音痴でしたね・・・・しかたありません、そちらの対応は後々致しますので、お待ちください」


「そんな!みんなが説明を受けるなか、1人だけ置いていくなんてひどいよ!これから一年間をともにする仲間だろ!なんて非人道的なんだ!」


 目に雫を浮かべ、偶然は席を立ちあがり必死に訴える。

 もはや青年にもなったにも関わらず、情けない姿を見せる偶然に、教室はシンッっと静まり返る。


「・・・・なーんて、この機械音痴に関しては文句は言えないしね!僕を無視して自分たちだけ知識をつけるといいよ!」


 さっきまでの顔はどこにやら、偶然は平然とした素振りで、皮肉交じりにそう言うと席に座る。

 少しの静寂の後に、ヒソヒソと――――気味悪がるように、教室にざわめきが広がりだす。

 そんな様子に、恵は疲れた様子でため息を吐くと――――、


「・・・・では、タブレットなしでも分かるように、簡単に説明を行いたいと思います。まず――――皆様方のタブレット、それは皆様方自身の証明書でもあります。そこには皆様がこれから寝泊まりをする部屋の番号、生活のための残金、なにからなにまで、ここで暮らすための情報が入っています。そして、今の説明で気づいた方もいるかと思いますが・・・・これからはこの学園で、皆様方には生活をしていただきます」


 恵のその発言に――――特に、この学園で暮らしてもらうという発言に、ざわっと、悪い意味でまた教室内が騒がしくなる。


「ご安心ください。ご家族からは許可をもらっています。これからここに過ごしていただくこと・・・・そして、研究に協力していただくこと全てです。まあ――――退学したいのならば報告してください。然るべき処置をした後に、しっかりと送り届けますから」


 再び、教室は静寂に包まれる。

 然るべき処置――――それは、記憶の抹消を意味していた。


「・・・・そして、説明は続きますが――――次は能力(スキル)についての説明に移りたいと思います。能力(スキル)には普通(ノーマル)特殊(レア)の二通りがあり・・・・その大体が普通(ノーマル)だと言われています・・・・が、どうやら今年は――――なかなか特殊(レア)の方が多いみたいですね」


 ザッと教室の中の生徒を確認し、恵はそういう。


「皆様、能力(スキル)を手に入れた時に、星の形をしたバッチを貰ったかと思います。それは――――功績点、いわゆるこの学園への貢献度を示すものです。事前に説明されたように、バッチは腕章に着けておいてください。基本的に、能力(スキル)を手に入れた時点で星は1つ、その能力(スキル)特殊(レア)ならば、2つ以上のバッチを貰ったかと思います・・・・今年は、どうやら2つ以上の方の方が多いようですね」


 恵はどこか嬉しそうに、フッと笑うとそういう。

 その言葉を聞き、1人の生徒が手を上げて質問を投げかける。


「その・・・・特殊(レア)っていうのは、どうやって決めるんですか?」


特殊(レア)・・・・そうですね、端的に言えば・・・・その能力(スキル)を持っている者でないと操れないもの、例を出すならば・・・・私の知り合いにテレパシーを使う者がいます。その人は相手の思考を読み取り、自分の思考を言葉以外で伝えることができました――――私の裁縫のように、一般人でも練習すればできるようなものを超越した力・・・・それが特殊(レア)です」


 その言葉を聞き、改めて周りを確認する。

 なるほど――――確かに周りには星を2つ以上身に着けている者が何人かいる。

 ということは、完全に人智の力を超えた人間が、この教室の大多数を占めているということだ。


「しかし、功績点は依頼(クエスト)を成功することによって増やすことが出来ます。皆様の能力(スキル)を研究するために、国が用意した人助けでもあります。・・・・まぁ、これに関しては時期に分かるようになると思うので、詳しくは説明しません」


 「では――――」と、恵は落ち着いた様子で・・・・、


「以上を持って説明を終えると同時に、自由時間とします。各自、自分の荷物を自分の部屋に置いた後はどんなことをしても良いこととします。では――――解散!」


 その言葉を聞くと、再び皆は立ち上がって会話を始めたり、タブレットを確認して部屋へ行こうとする。

 そんななか、タブレットを使えない偶然に、恵が歩み寄って――――、


「必偶様・・・・タブレットの内容は全て紙に移し、必偶様の部屋へと送ることにします。不便かもしれませんが・・・・どうかご了承ください」


「うん!全然いいよ!皆よりも不便で格好がつかないけど、これに至ってはしょうがない!諦めよう!」


 明るくそういう偶然に、恵は「そうですか・・・・」と一言。


「では、このままでは部屋に入れないので対応はこちらでしておきます。荷物はこちらで運んでおきますので、偶然様はどこかで時間をつぶしていてください」


「わかったよ!しょうがない!じゃあよろしく頼むね!」


 そういう偶然に、恵はペコリとお辞儀をすると、どこかへと去っていく。


「・・・・おい」


「ん?・・・・あぁ君か!どうしたんだい!?僕に何かようかい?」


 偶然に話しかけるのは、隣に座っていた豪打。

 豪打は顔をしかめながら、偶然に歩み寄ると胸ぐらを掴んで――――、


「ちょっと面貸せよ・・・・せっかくだ、能力(スキル)の見せあいっこでもしようぜ?」


「おっと・・・・そりゃあ困ったな、僕には能力(スキル)がなくてね、ほら――――」


 偶然は自分の腕章を指さし、星がついていないことを見せる。


「んなこたぁどうでもいい、とりあえず付いてきな――――何でもしていいっつうことはよお、喧嘩だってしてもいいってことなんだぜ」


「へぇ・・・・君は賢いね!流石だ!」


 脅すように言う豪打に、明るく元気にヘラヘラと・・・・そんな調子の偶然に、豪打は嫌気がさしてチッと舌打ちを一つすると――――、


「あと30分後にこの校舎の裏にこい・・・・ケリつけようぜ」


 そう言って、偶然を下ろしてどこかへと去っていく。


「まったく!怖い人だなぁ!下手したら傷害罪だぞ!」


 ・・・・そんな偶然たちのやり取りを見て、幼い少女は一人微笑んでいた――――、

正式な名前を決めました。

なんだか可愛らしい名前ですね、こんな主人公に果たして合うのでしょうか。

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