第10話
日も沈み、電気の付けられることのないその部屋は、ただ暗がりになっていた。
――――その空間、静かなその部屋に、ガタンと・・・・扉の開けられる音がする。
「・・・・はぁ、やっとのことで部屋でくつろぐことができるよ・・・・」
部屋の中に現れた1つの影は、近くにあった照明を点けるためのリモコンを手に取ると、天井に向かってボタンを押す。
押された直後、部屋の中には光が満ちる。そこには、運び込まれた荷物が大量に積まれていた。
1つの荷物に、その少年――――必偶 然は近づくと――――。
「もういいよ!適当くん!出ておいで!」
その言葉に反応するように、積み上げられた荷物はガタガタと動き出す。
そこから出てきたのは一匹の獣、狼とも犬ともいえる。鋭い爪と牙を持った、紅色の目をした獣だ。
「バウ!バウバウ!」
「おっと適当くん、あまり吠えすぎるとバレれてしまうぞ!そうなったら僕に関係ある話になってしまうから、気を付けてくれよ?」
「バウ・・・・」
吠える適当に注意をすると、適当は反省するように顔を俯かせ、小さく返事をする。
「・・・・と、言っても――――ここの部屋は完全防音。どれだけ大きな音を出しても、聞こえないんだけどね!」
「バウ!?」
「まあまあ、そう怒るなよ――――それより適当くん、ちゃんといい子にしてたかい?人に危害を加えたりしてないよね?」
「・・・・・・」
「おいおい、勘弁してくれよ・・・・ま、君の飼い主が僕だとバレなければ、関係ないか!」
何か後ろめたいことがあるように目を逸らす適当――――しかし、それを偶然は笑って許すことにする。
「さて――――僕はそろそろ眠ることにするよ、今日は早起きだったからね・・・・適当くん、ご飯は荷物の中に入っているから、勝手に探して食べてね?」
「バウ!」
「じゃ――――僕が寝ている3時間。あとはよろしくね・・・・」
そう言うと、偶然はその場に横になる。
すぐ隣にベッドが設置されていることにも気づかず、偶然は瞼を閉じ――――ゆっくりと寝静まった。




