最強とは何か
――――誰かが言った、「最強とは何か」と。
誰かが言った、「最強とは力だ」と、力があれば人は何でもできると。
ならばとそいつは言った、「力とは何か」と。
その問いに、「力とは暴力だ」と言うものがいた。
何者でも、圧倒的暴力を持つものには対抗できないと、その者は言った。
その回答を聞いた者がいた。
その者は「力とは知識だ」と言った、知識を持っていれば圧倒的暴力を持つ者すら操れると。
その者たちは、解答を探し求めた――――最強とは何か、力とは何か・・・・
――――――そして、いくつかの月日が経ったとき、その疑問は世界中の者を悩ませた。
あるとき、誰かが言った――――ならば、「最強」を作る施設を作ろうと・・・・
その言葉を聞いた者たちは、誰も否定することなく頷いたという――――
この伝承を聞いたとき、僕は思う――――実にくだらないと。
人生は偶然の連続だ、最強なんてものは、ただの「偶然」によって翻される。
圧倒的暴力・・・・?殴ろうとした瞬間に、たまたま足が引っ掛かって転ぶかもしれない。
圧倒的知識・・・・?説得させられるときに、たまたま耳が聞こえなくなるかもしれない。
この回答を聞いたとき、誰かが言うだろう・・・・ならば、「偶然」が最強なのではないかと。
でも僕は首を振る・・・・「偶然」というのは、たまたま起きる事象だからこそ「偶然」なのだと、それを操れば、それは「偶然」ではなく「必然」なのだと。
だからこそ言う・・・・最強なんてものは「偶然」で覆るが、その「偶然」を操る者は「偶然」を操っているのではないと、だからこそ――――最強なんて、存在しないと・・・・。
・・・・いや、この話はもうやめよう。
所詮は僕の持論だ、今の話は忘れてくれ。
しかし、ここで話を終えてしまうのも、なんだかモヤモヤして後味が悪いことだろう。
そうだな・・・・じゃあせっかくだ、こんな僕の話を聞いてほしい。
定形文として、様式美として、ロマンチックに詩的かつドラマチックに・・・・
――――昔々、あるところに・・・・最強を目指す施設があった――――――