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ともだち  作者: サダキヨ
8/9

飯島 陽子

飯島陽子は綺麗な女だった。


モデルのようにスラッとして、常にブランドを身に付けていた。

父は日本のルイヴィトン本店の部長であり、飯島陽子も東京の有名私立大学を卒業した後、父の息のかかった銀座のルイヴィトン専門店の副店長を任され、行く行くはその店の店長を任されることになっていた。


そこへ、香は智子を連れてズケズケと遊びに行った。


『いらっしゃいま…』

店長が、普段着の小娘二人が入店してきたため、一瞬ぎょっとした。


『香、私たち絶対場違いだよ!』

智子は泣きそうだった。


『いいの、いいの。あのぉ、こちらに飯島陽子さんは居ますか?私たち高校の同級生で、遊びに来たんです。』

香はニコニコしている。


それにいち早く気づいた飯島陽子が急いで駆け寄ってきた。


『ちょっと!智子じゃない?何しに来たのよ!』

飯島陽子はかなり怒っている。


『ここはあんた達が来るような所じゃないのよ!そんなことも分からないの?』

飯島陽子がカンカンに怒っている。


店長もキツく睨んでいる。

『おい、お前ら、バカなのか?早く出ていけ!』

店長が怒鳴った。


智子は怖くなり香の袖を引っ張った。

『あれれ?せっかく智子が買い物に来たのに、唯一優しかった飯島陽子さんのお出迎えときたら。』

香がふざけている。


『ほらっ!ブスども!出てけっ出てけっ。気持ち悪い。』

店長が小突き出した。


すると突然、香が流暢なフランス語で、

《この間出た、限定モデル2つ下さい。》

と叫んだ。


店内が一瞬ぎょっとした。


みんな何を言っているのか分からなかった。


《あれれ、フランス語分かる人はいないのかな?ヴィトンと言えばフランス語って、田舎者の考えそうなことだわね、やだっ恥ずかしい。恥ずかしくて南プロヴァンスに行きたい気分》


香が何かフランス語でボケている。


すると、中国人らしい店員を香は見つけて、

『あら?あなた中国人?じゃあ中国語なら分かるかしら?』

と日本語で話した。


《この間ニュースで話題になっていた、ヴィトンの限定モデル、私は要らないんだけど、この子に2つ頂戴。》


と、今度は中国語で流暢に話し出した。


店内全員ぎょぎょっとしている。


《す、すいませんお客様、店内にはそちらの限定モデルはおいてありません。》

中国人の店員が中国語で返した。


『嘘でしょ?置いてないの店長?』


今度は日本語で店長に話しかけた。

店長がキョトンとしている。


『おんや?あんた、もしかして銀座の本店にいるくせに、フランス語も中国語も話せないの?嘘でしょ?』

香がキョトンとしている。


《ふぅー、じゃあ世界共通語の英語くらいは分かるわよね。》

香が英語を話し出した。


店長も、香がただ者でないことに気付いたらしく。

《先程は、た、大変申し訳ありませんでした。》

と英語で返した。

《この間ニュースでやってた、ヴィトンの限定モデルが欲しいんだけど?ここ、ないんでしょ?》

香が英語でペラペラ話し出した。


店内全員が香を見ていた。


《大変申し訳ありません。フランスからのお取り寄せになります。》

店長がペコペコし出した。


《じゃあ、本当は要らないんだけど2つちょうだい。》

香は何か取引をしている。

《あのう、大変恐れ入りますが、そちら一つ200万ほどされるんですが、お支払の方は?》

店長がニタニタしだした。


『ああ、安心して。これでお願い。』

急に日本語に戻った香は、財布から真っ黒なカードを取り出した。


『あのう、こちらは?』

店長が見たときもないオモチャみたいなカードを出したので、(こいつやっぱり金なんか無いんだな)という顔つきで香の方を見た。


『う、うそん?漆黒カード知らないの?まさか、使えないわけじゃないわよね?』

香が泣きそうになっている。

『私現金なんか無いわよ?』

香がうるうるしている。

『すいませんお客さま?そちら何かのポイントカードではないでしょうか?』

店長が強気に出た。


すると香は左のポケットから国際電話を取りだし、どこかに電話をし始めた。

すると香は暫く誰かと、またフランス語で話をし出した。

そして、防犯カメラの一つに向かって、先程の漆黒カードを、カメラに映るように差し出し、


『はい、支払い完了。ごめんなさい。フランスの本店で直接買ったわ。色々ありがとう。』


そう言って、香は電話を切った。


すると、香が電話を切るや否や、店長にどこかから電話がかかってきた。

店長は大慌てで電話に出て、電話に出ている間ひたすらペコペコとしていた。


『すいません、すいません、すいません、大変申し訳ありません、いえいえそんな、はい、はい、大変申し訳ありません。それだけは、それだけはご勘弁を。』


店長が無様に流暢な日本語でペコペコしている間、香は飯島陽子の目をずっと睨んでいた。


『帰ろう智子。もう、だから私たちこんなところ場違いだって言ったじゃない。私いつもニューヨークで買い物してるのに、智子が飛行機恐いって言うから。

ニューヨークなら私、友達沢山いるのに。

こんなホームセンターの隅にあるブランドショップに連れてきて!

こんなに恥をかいたのは生まれて初めてザマス!』


そう言って二人は店を出た。


店長はまだ電話越しにペコペコしていた。


銀座の本店を出た帰り道、智子は考え事をしていた。


確かに香の快進撃は凄かった。

見事に4人とも成敗してくれた。

胸がスッとしなかったかと言えば嘘になる。


でも智子は、自分がそんなことを望んでいないことに気付いていた。


智子は何かモヤモヤした部分を残したまま家に帰った。



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