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ともだち  作者: サダキヨ
6/9

平光 由憲

平光由憲は、あれから千葉の国立大学を卒業し、地元の群馬銀行に勤めていた。


智子の高校は群馬の指折りの進学校だけあって、どいつもこいつもエリート揃いだった。


智子は平光由憲にもかなりのひどい目に会わされている。


休み時間には、智子の鼻を吊り上げて、顔を動画で撮影し、ネットに流して晒しものにしていた。


再生回数が思いの外伸びなかったのも智子は悔しかった。


ある日、香は智子を連れて、群馬銀行の本店に向かった。


『か、香、流石にこれはヤバイでしょ?絶対怒られるわよ!』

智子はもう泣いていた。


『うっさいわね!』

香はいつも智子に怒っている。


香は本店に入るや否や、スマホで電話を掛け出した。

『もしもし、部長?香だけど、今本店のフロントにいるから迎えに来て欲しいの。』

そう言ってスマホをブチっと切った。


すると、ものの15分もしない内に、偉そうな社員たちが2、3人、香の方へ飛んできた。


『真鍋様、お久しぶりです。いやはや、ご連絡頂ければ、私、直ぐにでも飛んで参りましたのに!』

偉そうな親父が香にペコペコしている。


『そう云うの、いいから!』

香はツンツンしている。


『た、大変申し訳ございません~。』

親父は何故かペコペコしている。


既に香に飼い慣らされている様子だ。


『ささっ。こちらでごさいます。』

そう言って私たちは部長室まで案内された。


部長室に入るや否や、偉そうな親父は香の機嫌を一生懸命取り出した。

『真鍋様、何を飲まれますか?いつもの最高級ジャスミン茶でしたら、私、直ぐにでもご用意させますが。』

親父は必死だった。

『じゃあ、それでお願い。』

『お連れの方は何になさいますか?』

今度は私に聞いてきた。

『この子はミルクで。』

香が勝手に決めた。

『畏まりました。』

そう言って、親父は直ぐに両脇の男達に小声で手配させた。


『ああ、女に生まれて良かった。』

香は艶かしくこちらを見ていた。


『ところで今日はどのようなご用件でしたでしょう?』

部長がニコニコしている。


『実は貯金を全部下ろそうかと思って。』

香が真顔で答えた。

『ま、またまたまた、ご、ご冗談を!』

部長は一瞬気を失いかけた。


『ウ、ソ、』

香がニコッとした。


『もっ、もっ、もっ、も~う、真鍋様~、私、心臓が止まりましたよ~。』

部長は汗をだらだら流している。


たぶん本当に止まったんだと思う。

部長はもう完全に香に手懐けられていた。


『実はいじめて欲しい社員がいるの。』

香がジャスミン茶を飲みながら本題に入った。


『ここの社員の平光由憲って言うんだけど、高校の時にこの子に酷い苛めをしたの、私それが絶対許せないの。

しかも、ただ苛めただけじゃないの、この子を自殺へ追い込んだのよ、ほら!』


そう言って香は、私の白目を剥いて、舌をベロンと出している顔の写メを部長へ見せた。


『うぷっ』

部長はハンカチで口を覆った。


『だから平光由憲を、ただいじめて欲しい訳ではないの。35歳くらいまでは辞めない程度にいじめて欲しいの。

そして35歳の再就職が厳しい辺りに退職に追い込んで欲しいの。出来ればその前に住宅ローンも組ませて欲しいわ。』

香は淡々と話している。


『でも、お礼はするわ。前みたいに回収の難しい債権があったら、何件かやってあげても良いわ。もろちん、部長さんの実績でね!焦げ付き出されるとかなりまずい、大きなのに限るけどね。』


香は淡々とお願いしている。


『それに、あの事も黙っといて、あ、げ、る。』


香の頭に角がにょきっと生えた。


『も、も~う、香さま~ん。』


親父が気持ち悪くじゃれてきた。


すると突然香は真顔で部長を睨み付け、

『本当だったら、この銀行ごと潰してやっても良かったんだけど、部長さんの可愛い顔が急に頭に浮かんじゃってね。』

香は部長にテヘッとした。


『香さま~ん。』

部長は完全に萌えっとしている。


『じゃ、宜しくね。』


そう言って、香と智子は本店を後にした。


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