河合 光行
河合光行は、あれから群馬の国立大学を卒業し、地元の父親の会社に勤めていた。
父親の会社は地元では有力な会社であり、全国規模では無かったが、地元ではかなりの力を持っていた。
行く行くは、父の会社を引き継ぎ、社長になる寸法なのだろう。
正に順風満帆の将来が約束された男だった。
智子は高校の時にこの男にかなりひどい目に会っていた。
ある自習の時には、この男は智子の後ろの席に座り、
『明日から学校来るな!明日から学校来るな!』
と一時間も執拗に椅子を蹴り続けた。
智子は出来れば二度と顔も見たくない相手だった。
智子は香に連れられて、河合の勤める会社の目の前の喫茶店に入った。
『香、もういいよ、何するのよ。勝てっこないよ。』
智子は心底やめて欲しかった。
『うっさいわねー。』
そう言うと、香は鞄から小さなノートパソコンを取り出し、スマホに繋げて、何やらカタカタと作業をし始めた。
『香、な、何してるの?』
智子は不思議そうに香を眺めていた。
一時間もしない内に、香はパソコンの手をピタッと止め、
『智子だけだよ、るるるるる~』
と言って、enterkeyをターンと打った。
『智子見ててね、今、河合の会社から、人が数人飛び出してくるから。』
香がニコニコしている。
智子は何を言ってるのか分からず、暫く河合の会社を眺めていた。
すると30分もしない内に、香の言った通り、数人男が慌てて飛び出してきた。
『か、香、凄い!いったい何をしたの?』
智子はびっくりしていた。
『おまじないが効いたのよ。』
香はニコニコしていた。
『あ~、分かったぁ。会社のエアコンの温度を遠隔操作でMAXまで上げたんでしょ?』
智子は得意気にしゃべっている。
『ま、まじか?』
あまりの幼稚な検討違いに香が呆れ返っている。
『さては、火災報知器のベルを遠隔操作で鳴らしたのねぇ~?』
智子は次々に当てに入った。
智子は、ソチも悪よのぉ~って顔で香を見ていた。
『ちょっ、智子黙ってて!』
智子はまた香に怒られた。
『銀行の融資をストップさせて、回収に回らせたのよ。』
香がニマっと笑った。
『融資?回収?』
智子が不思議そうに聞いてきた。
『う、嘘でしょ?今の一言に分からない言葉が2つもあるの?』
香は呆れ果てていた。
『まあ良いわ。帰りましょ。もうあいつの会社は終わりだから。数ヵ月後には一家心中間違いなしよ。』
そう言って二人は喫茶店を出た。
智子は香が何を言っているのか分からなかったが、重い中二病になってなきゃいいなと少し心配した。




