喜多川 智子
あの日から一年、智子は香の言った通り、群馬県で指折りの進学校に合格し、香は家に引きこもるようになっていた。
智子は香のいない高校生活に、少し寂しさを感じていたが、伸び伸びと高校生活を楽しんでいた。
しかし、智子のクラスには、小学校から香を苛めた、平光由憲と河合光行、奥田明子の三人がおり、智子は、香を良く苛めていた三人と同じクラスなのを快く思っていなかった。
それはあちらも同じことで、いつも突っかかってきた智子を、鬱陶しく思っていたらしく、次第に智子はいじめられるようになっていた。
物が無くなるのは当たり前だし、仲間はずれにもされだした。クラスの皆にも無視されるようになり、陰口もどんどんエスカレートしていった。
『智子マジくっせー、同じクラス俺嫌だわ~。』
『智子の話ほんと詰まんないよね~。』
『智子のパン屋のパン、本当に不味いよね、あれでお金とるのとか、どんな神経してるのかなぁ?厚かましい!』
『人に迷惑かけてまで生きたいの?』
『あいつの動き見てると、まじイライラするわ。』
『学校来ないでほしいわ~。』
『あれ?何で今日あいつ学校来てんの?』
智子は次第に教室が怖くなり、学校が詰まらなくなった。
授業中には突然椅子をこつかれたり、背中を血が出るまでシャープペンで何回も刺されるようになった。
ことあるごとに動画を撮られては、みんなで笑い者にされていた。
高校2年生の中頃になると、智子はついに学校を休みがちになってしまった。
そんなある日の平日、智子が街をぷらぷらしていると、香にばったりと出会った。
二人ともあまりの嬉しさに、近くの喫茶店でお喋りすることにした。
『智子ちゃん、高校楽しんでる?』
香がニコニコしている。
『う、うん、まあまあかな。』
そう言って智子は直ぐに下を向いてジュースを飲み出した。
『まあまあって、何か生意気~。』
香がおちゃらけている。
『それより、香は何をしているの?』
智子が話題を変えた。
『何って、徒然なるままに日暮よ~。』
香は知的にボケてきた。
『そ、そう。』
智子が下を向いてジュースを啜っている。
何故か二人は暫く沈黙することになった。
『そ、そうだ!』
突然、智子が店中に響き渡る声で叫びだした。
香はびっくりして智子の方を向いた。
『ど、ど、どうしたの?』
香のびっくりした顔を見て、智子は、
『あ、え?う、ううん、何でもないの。もう帰りましょ。』
そう言って、二人は喫茶店を出た。
二人は何故か家まで一言も話さずに帰った。




