智子と香
喜多川智子と真鍋香は、生まれた頃からの幼馴染みである。
二人は現在群馬中学校に通う三年生である。
智子の実家は小さなパン屋を営んでおり、智子が小学校の時に一度潰れかけたが、偶然出来上がった『智子スペシャル』のパンが大ヒットとなり、今では知る人ぞ知る名店となっていた。
方や香は、かなり遅くに授かった子供であったため、両親は既にかなりの高齢で、国の保護を受けながら、両親とも小さい仕事をこなし生計を立てていた。
二人はお隣同士で、喧嘩ひとつしたことの無い、かなりの仲良しであった。
しかし、二人には少し悩みがあった。
香の方が、幼稚園の頃から良く苛められていたのだ。
香は体型も太く、ずんぐりむっくりであり、頭もあまり良くなかった。顔もとてもかわいいとは言いがたく、中学生になってからは、『なんか香のするおばさん』とバカにされていた。
香がちょっかいに会う度に、智子は飛んできて香を助けていた。
それでも何とか二人で仲良くやってきてはいた。
そんなある日、智子の家で二人で宿題をしていると、香の教科書がボロボロなのに智子が気付いた。
『ちょ、ちょっと香!どうしたの?その教科書?』
智子は少し驚いていた。
『さあ?何かいつの間にか、こんなんなってました。』
香はニコニコしていた。
『また誰かにやられたのね!絶対許さないんだから!』
智子はかなり怒っている。
『智子ちゃん、いいのよいいのよ、もう慣れっこなんだから。それに、あまり大騒ぎして欲しくないの。』
香はまたニコニコしている。
『だってぇ……。』
智子はあまり納得していない様子で、暫く黙りこくってしまった。
智子がだんまりして、10分ほどして、急に智子が話し出した。
『そ、そうだ!私ね、前から考えていたんだけど、高校は香と同じ高校にしようと思うの。』
智子が香をじっと見ている。
香は智子の突然の話にびっくりした。
『同じって智子ちゃん!成績全然違うじゃない!智子ちゃんなら、かなり上の方の進学校にも通えるでしょ?何を言ってるのよ!』
香はまだ驚いている。
『いいの、いいの、どうせパン屋継ごうと思ってるし、香が心配だもん。』
智子は平然としている。
『でも、香といつも一緒にいたいなんて、い、言わないんだからねっ!ぷんっ!』
智子がツンデレし始めた。
香は真顔でいる。
すると突然、香も驚く話をし出した。
『ごめん智子ちゃん、うち、高校行かへんねん。堪忍どすえ。』
何故か京都弁でカミングアウトしてきた。
智子が逆にびっくりしていた。
『な、何言ってるの、香!何で高校行かないの?私と一緒に高校行こうよ。』
智子が必死になってきた。
『いいの、いいの、私どうせ頭悪いし、いじめられてばかりでしょ?これ以上智子に迷惑かけたくないし、隣同士だから、いつも一緒なのには変わりないでしょ?智子は好きな高校に行って、十分高校生活を満喫してきて。』
そう言って、香は平然としていた。
智子は何とか説得しようと香に話しかけようとした、その時、
『もう、決めたことなの。』
香は智子をキッと睨んで、そう呟いた。
二人はそれから静かになり、しばらく黙って宿題をしていた。
すると香が突然パッと智子の方を向き、
『あっ、そうだ!智子ちゃん、彼氏ができたら、それだけは逐一報告して欲しいの、高校に行かなくても、エロスは欲しいのよ。』
それを聞いた智子は、ようやくまたニコッとして、
『もう香、やだぁ~。』
と顔を真っ赤にした。
香は、(智子ちゃん、もう既にエロスだなぁ)と心の中で呟いた。




