五葉
最近の僕は悩んでいた。
今の僕の気持ちを言うべきか、言わざるべきか。
あいつはいまだ僕のことを小学生扱いにして、僕の気持ちに気がつかない。僕はあいつに会うたんび、目で、態度で、言動で訴える。
ねぇ、僕を見て。僕の気持ちに気づいて。
でも、あいつは時々遠い眼をして何かについて思いをはせるようになった。僕の話を聞いてくれないこともだんだん増えるようになった。
どうしたの?
そう僕が問いかけても返事はいつも同じ、なんでもない。
僕は不安だった。
楽しい時間が何かに侵されていくような感じ。時間と共に砂塵と化していく荘厳な岩のように僕の手のひらから零れ落ちていく。かたちをなくしていく。
このままじゃあいつとの関わり合いを失ってしまう。失えない。
だから僕は言おうと思った。
失ってしまうなら、僕を少しでも見てもらえるように正直に言おう。
あいつと初めて話したときから、もう何ヶ月もたった。その間、僕はあいつを知り、あいつへの気持ちがどんどん大きくなった。今だから分かる。この気持ちをあいつに真剣に伝えたら、あいつもきちんと考えてくれるはず。ただ、真面目に考えるだけで僕の気持ちには応えてくれないだろう。なにせ男の勲章が自分が惚れた相手だと言うほどだから。でも、真面目に考えている間は、あいつは僕だけのものだ。一時でもいいあいつの心が僕のものになる。そして、その後気まずさからきっと会わなるとしても、僕はそれで満足なはず、だった。
僕にとってあいつは太陽だ。僕の心を無条件で暖かくし、じめじめ湿っているときはからりと乾かしてくれる。必要不可欠な存在だ。あいつなしでは今の僕はもうどうやって生きていけばいいか分からなくなるほど、僕はあいつを必要としている。もし、光を失ったら生き物はどうやって生きていけるのだろう。
だから、この関係は壊したくない。でも、気持ちを知ってもらいたい。いや、気持ちを知った上で僕のものになって欲しい。
どんどん貪欲になっていく自分がいた。でも、僕の弱虫な部分が言う。
告白して振られたとき僕は立ち直れるの?と。
あいつのすべてがほしい。あいつの心を僕で満たしたい。だから、あいつの心の一部でも僕で満たしているだろう今の状況も失えない。八方塞だった。
本当なら、あいつが僕のことを憎からず想っていてくれたらいいけど、あいつはホモじゃない。
きっとあいつは男子小学生と思っている僕とは、近所の子供をかわいがるような気持ちで接していたのだろう。いつも僕のことは坊主と言って、僕の名前さえ聞かなかった。
その事実は僕を苦しめ、悲しませた。
ねぇ、どうしたらいいの?どうしたらうまくいく?
そんな押し問答を繰り返す日々が続いた。
そんな僕はあまりにいつもと違っていたのだろう。友人たちは口をそろえて、
「真央。このごろ変。なんか一つのことに気をとらわれすぎて、他がまったく見えていませんって言う感じだよ。」
事実、僕は自分の問いの答えを得るのに精一杯で、あいつの心を僕に向けてくれるように尽力するので一杯一杯で回りを見ることを忘れていた。いや、僕はあいつを見ているようで実は自分しか見ていなかったのかもしれない。
だから、僕は気づかなかったのだ。
あいつの視線の先にはいつも一人の人がいることを。
いつも、あいつが彼女に熱をはらんだ視線を向けていることを。
このときに僕は勇気を出して告白していれば、状況は変わったのかもしれない。
でも、すでに遅かった。
あいつの気持ちを知ってしまったから。




