番外2−1
これは付き合った後、結婚する前の話です。
目下の悩みはあれだ。
初めてできた彼氏の誕生日に彼女である僕は何をすればいいのだろうか。
おじさんの誕生日に気がついたのは、というか、知ったのは僕の誕生日の日だった。
何処で僕の誕生日を知ったのだろうか、その日、おじさんは僕を公園にいきなり呼び出して、真っ赤な赤いバラを送ってくれた。
はっきり言って、うれしいよりも衝撃の方が大きかった。
おじさんの誕生日を知らないことに初めて気がついたのだから。いや、そもそもおじさんの年齢さえ知らない。もっと言えば、何の仕事についているのかも知らないし、おじさんの住んでいる場所さえ知らない。
ほとんどおじさんのことなんて知らないのだ。なんて最低な彼女なんだろう。僕は。
くそう。悔し涙が出てきた。
さて、彼氏からのプレゼントで泣きそうになっている僕を見て、おじさんは何を思っただろうか、いきなり僕を抱き上げおじさんのひざの上に乗せた。
「な、なんだよ。いきなり」
やっぱりかわいくない僕は、いつもかわいくない、むしろ憎たらしい暴言をはく。
「やめろよ。ここ公園だよ。人に見られたらどうするんだよ」
「見られてもいいじゃないですか、真央。それよりも彼氏のプレゼントは気に入りませんでしたか?せっかくあなたを想いながら、プレゼントを用意したのに、そんな浮かない顔をされると・・・」
「されると?」
「襲いたくなります」
いきなり、恐ろしいことを言ったおじさんはどうやら冗談としていったわけではないようだ。目が本気だ。
やばい。こんなところで襲われてしまう。
それは一応女の子として回避しなくてはならない。
「だって、おじさんは彼氏らしいことしてるけど、僕は彼女らしいこと一切何もしてないんだよ。彼氏のこと何も知らないなんて、最低な彼女だと思って・・・」
僕はあくまで素直に自分の気持ちを言った。
経験上、こういう場合嘘を言わないほうがいいのだ。僕自身嘘をつくのが下手だし、おじさんはおじさんで僕が嘘をついているとすぐ見破ってしまう。
そして、嘘がばれたとき、僕はいつも罰ゲームと称して、公園でおじさんにキスをしなければならない。でも、それは僕にとって憤死してしまいそうなほど、恥ずかしい出来事なのだ。
事実、友人に見られ、学校でものすごくからかわれた時には、思わずその日のうちにおじさんに殴りかかったほどである。結局、おじさんに抱きすくめられて終わってしまったが。
「真央はそのままでいてくれたほうが私にとってはうれしいことなんですよ。ゆっくり私のことを知ってください。あなたは急に知るといろいろ考えてしまうからね。だから、私はあんまり自分のことをあなたに教えないんですよ」
おじさんは僕の頬をなでながら、優しく言う。
本当におじさんは優しい。いつも僕のことを気遣ってくれる。
たとえストーカーだとしても、一方的な気持ちの押し付けじゃない。僕のことを考えて思いやってくれる。
そんな人が僕の彼氏で幸せかもしれない。
「ところで、あなたの誕生日プレゼントに対するお礼がまだですが」
どこかすねた口調でおじさんは言う。
それも押し付けがましい言い方だ。
少しムカっときたが、僕は心の中で念仏を急いで唱えて心を落ち着かせた。
「ありがとう。バラの花をもらったのは初めてだから、とってもうれしい」
うん、自分の中では最高のお礼の仕方だ。
いつものきつい口調じゃないだけ、マシって言うものだ。
しかし、おじさんにとってはうれしいお礼の仕方ではなかったらしい。
いきなり僕のあごをつかむと、自分の唇を僕のに押し付けた。
僕は必死に抵抗するが、あごをつかんでいない方の手が僕の腰に巻きついているせいで身動きが取れない。で、結局僕が抵抗をあきらめるとおじさんはさらに思うままにしてくる。
どれくらい経ったのだろうか。
ようやく、おじさんは僕から離れて、一言
「このくらいしてくれないとお礼にはなりませんよ」
羞恥で真っ赤になっていた僕の顔は、怒りでさらに真っ赤になった。
「下心丸出しのプレゼントじゃないかー!!」
その日、おじさんの顔に僕のこぶし型の青あざができていた。
ちなみに、公園でのおじさんと僕のチューは僕の母親に見られていて、熱々ね、お父さんにもそれくらい積極的な行動してもらいたかったわ〜と言われた。
そのとき、僕は明日おじさんをぼこぼこにしてやると誓ったのは言うまでもない。




