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一葉

あぁ、神様。恨みます。

どうして、僕、北条真央をこんな小さくしたのでしょう。

なぜ、僕の背を138cmにしたのでしょう。


ついに念願の高校生になり、はれて女子高校生だと堂々と胸を張っていえるはずなのに、はずだったのに。

どうして、買い物をしていた僕に向かって、『坊や、おつかいかい?えらいねぇ。』と言った、いかにも気の良さそうなおばあちゃんに対して、自分は女子高校生だと訂正できるだろうか。

そこで思わずにっこりするしかなかった自分は、悲しみを通り越えて笑うしかなかったよ。


あぁ、どうしてこの世には背だけがとりえの人たちはごまんといるというのに、僕には、神様はその恩恵を与えてくれないのだろう。


恨みます。


神様に家族がいたら末代まで祟ってやります。

そして、夢枕に立ち、今までの苦労、屈辱、私怨をつらつらと語ってやります。

服はキャラクターものを着るしか選択肢がないこと。

女性雑誌を買ったときの店員の驚く顔。あれは多分僕を変態と思ったに違いない。

学校では、あだ名が小人とつけられること。

今日みたく、おばあちゃんに感心な目で見られること。

その他たくさんの出来事。

あぁ、この場では語りきれません。


一時は『自分は男子小学生ではありません。女子高校生です。』と書かれた看板を首からぶるさげることを考えました。でも、交通機関、映画館、遊園地、その他諸々を小学生料金で利用できる誘惑に勝てませんでした。

そうです。

背に腹はかえられません。

世の中、金です。金でできているのです。

だから、僕は日ごろの鬱憤を年齢詐称し、金を節約することではらしているのです。

そんなことがなければ、とっくに僕の首には看板がかかっていたことでしょう。

また、ある時はこの男子と間違われる原因でもある、短い髪を伸ばそうと思いました。

でも、あぁ、なんて不幸な僕でしょう。

髪を伸ばすとメドゥーサのように髪の毛がうねりひろがるのです。

昔、伸ばしていたら男子に山姥だとからかわれて以来、僕は髪は伸ばさないことを決心しました。伸ばしたくても、泣く泣く切るしかありませんでした。


こんな不幸な僕は、毎日毎日、この世を、神様を恨みながら生きています。

背の高い人を見かけたら、般若のような顔でにらみながら通り過ぎます。

にらまれた背の高い人は、僕のすさまじい形相に怯えながら早足で去っていきます。

そういう人たちは、たいてい足が長いので移動速度も早いのです。なんて、むかつくことでしょう。かみ殺したい気分です。


そんな中、ただ一人、背が高いのに、僕の殺人光線を受けない人がいます。

僕はその人に恋をしました。

一目ぼれだったと思います。

同じ高校の同じ学年の違うクラスの人。

明るくて人気者。

それを嵩にかかることなく、純粋で素直な性格の持ち主。


いつか、お話ができたらうれしいな。


僕はそのときはそう思っていたことでした。

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