番外1
突発思いつき、片葉の想いの番外編です。
「真央、少し休みませんか」
「あ、う、うん」
甘い声が耳元でして僕の心臓がびくっとはねあがった。
夫の声がいまだになれないのだ。いつもあの優しい声にどきどきさせられてしまう。本当に困ったものだ。
でも実はうれしかったりする。
自分の好きな人が自分のそばに当たり前のようにいてくれることに。
僕は、高校卒業、大学進学と同時に夫にかっさわれるかのように、結婚した。
両親も友人もものすごく驚いていたが、夫の人柄や意外とまともな職についていること、そして僕に接する態度をみて、いい人を見つけたね、と口々に言ってくれた。
そんな言葉に僕は、ありがとうと言ったが、内心ものすごく不安だった。
新婚生活はうまくいくのかな、女の子らしくない僕を見てあの人は愛想を尽かさないかな、いろんな想いが心の中でぐるぐるしていて、はじめのころは夫との仲がぎくしゃくしたものだ。でも、夫は優しく僕のことを包み込んでくれて、僕の不安で固まった心を少しずつ溶かしてくれた。そんな夫に僕はだんだん心を開いていくうちに、結婚してから一ヶ月が経った。
「さぁ、私のひざの上に座ってくださいな」
夫がソファーに座りながら自分のひざを叩くのを見て、僕は顔を真っ赤にした。いつからか、夫のひざの上に座ってお茶することが日課になってしまったのだ。
「う、うん」
壊れたロボットのようにぎこちなく座り、そして夫に向かって同じくぎこちない笑顔を見せた僕に、夫はいきなり抱きついてきた。
「うわ」
「あー、真央やっぱりかわいいです。今ここで襲ってしまいたいぐらいだ」
「え、そ、それは」
正直戸惑った。
まだ、夫は僕に気をつかっているのか、夫婦の営みはない。
でも、たまに僕を焼いてしまうのではないかというほど熱い視線を向けてくることがあるが、そんな時僕はどうすればいいか分からなくなってしまう。
自分からそんなことをしてくれるよう仕向けるのは無理だ。ここは夫をやる気にさせなくてはならない。
「いいですよ。私は待ちますから。ゆっくり大人になってください」
ほら、また。
戸惑った僕を見て、僕が嫌がっていると勘違いした夫はいつものように大人の余裕を見せて引き下がってしまう。
僕は唇をかんだ。
悔しかった。
夫にそんなことをさせてしまう自分が。
「もう、子供じゃないもん。僕は・・・・・・私はあなたの妻だもん。待たなくてもいいのに」
いつもなら絶対言わないようなことを呟くように僕が言うと、いきなり唇にあつい熱を感じた。
「あー、そんなことを言われると我慢できません。いいんですね?」
きつくきつく抱きしめられながら耳元の甘く熱のはらんだ声に、僕はくらくらしながら、こくりとうなずくと、夫に軽々と抱き上げられてしまった。
「今日は寝かせませんよ」
低くささやきながら寝室に足早に向かう夫。
有言実行の夫は本当に僕を寝かしてくれなかった。
眠りたかったのに!
番外編どうでしたか。
番外1と言うことだから他にも出るのかと思う方もいたかもしれません。すみません。作者には分かりません。もしかしたら出すかもしれないですね。うーん、そしたら、今度は出産後の話になってしまうような・・・。と言うわけで、また機会がありましたら、番外編を書いていきたいと思います。
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。




