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十五葉

な、な、な、何やっちゃっているんだ、僕!

おじさんに抱きしめられて、でもって抵抗もしないで、ずっとおじさんの腕の中にいたなんて!

ありえない!信じらんない!

何があたたかいだ。何がこのままでいたいだ。僕はそんな甘ったれたやつじゃないはずなのに!

いったいどうしちゃったんだ。いろいろありすぎて頭が狂っているのか?

こんなことを考えてないでさっさとおじさんから離れるべきだ。それで今までのことは水に流そう。記憶を消去しよう。そうだ。おじさんに抱きしめられた、なんてことは僕の妄想で夢で現実には起こらなかったことにしよう。それがいい。

「お、お、おじさん!離れて!」

僕の顔は赤くなっているに違いない。トマトみたいに真っ赤に染まった顔だろう。

「えーこのままでいいじゃないですか?」

おじさんはくすくす笑いながら、抵抗する僕を離そうとしない。

その態度が腹にたって、このままでいることに恥ずかしくて、僕の血はこれ以上ないほど頭にのぼったとたん、血の気が引いた。

思い出したのだ。僕はおじさんに抱きしめられる前にとってもひどいことを言っていた。それは醜い自分であり、人にはけっして見られたくなかった自分であった。

僕は嫌な子だ。サイテーだ。

これで泣きそうになっている自分はもっとサイテーだ。泣く権利なんか僕には全くないのに。

おじさんに知られたくなかった。何でかわからないけど、知られてとってもショックだ。おじさんは僕に親身になっていろいろ教えてくれたのに僕はそれを裏切るような形で醜い自分を、本来の自分をさらけ出してしまった。

本当に僕は恥知らずだ。

たとえ精神的不安定だったとしても、それは言い訳にしかならないだろう。

「マジで離して!」

僕の声音の変化に気づいたのだろうか、おじさんは一度目とは違って全く抵抗せずに僕を離した。

「・・・・えーと、今日は僕のグチ聞いてくれてありがとう。えっと、それじゃあ、今までお世話になりました。」

もうこれ以上おじさんに嫌な自分を知られたくない。

言うだけいって走り去ろうとしたが、何かに引っ張られる感じがした。

おじさんが僕の腕を握っていた。

「逃げないでください。」

いったいいきなりどうしたのです?おじさんはそう言ってきて、その言った声はとってもやさしく、その表情は僕を本当に心配してて。

「・・・・おじさんは僕みたいな嫌な子嫌いにならない?」

ポツリと言った言葉は妙に子供っぽくて、僕はまた泣きたくなった。

でも、泣くのはお門違いだ。

唇をかみ締めてこらえていると、

「嫌いになるわけないじゃないですか。あれくらい人間ですから当たり前の感情ですよ。私だってあなたに見せていないだけで、本当は腹黒くて、嫉妬深くて、妄想がすごくて気持ち悪いおじさんなんですよ。だから、あなたのことが嫌いになれるわけなくて、むしろ・・・・」

「むしろ?」

「・・・・むしろ、私より可愛げがあるかなーと思いまして。」

ははは、とおじさんは笑いつつ頭を僕の腕を握っていないほうの手でかいていた。

「でも、でも、僕は彼女の悪口を心の中で言っていたし、それ以上だって・・・心の中で考えてた。それってやっぱりひどいやつだと思わない?嫌なやつだと思わない?」

「聖人君主みたく全ての人が好きで、まったく嫌いにならない完璧な人間なんていませんよ。ていうか、そんな人いたら気持ち悪いですね。人間ひとつでも欠点があったほうがいいですよ。私なんか悪口だけならまだしも、どうやってあいつを苦しめてやろうか、そればっか考えていますよ。」

「あいつ?」

「いやいや、なんでもありません。まあ、ですから、そんなに自分を卑下する必要はありませんよ。今回のことは、自分を見つめなおすのに必要な出来事だったぐらいに思えばいいのです。」

「そう・・・・?そんな風に思えるかな?」

おじさんは単に僕に気をつかって、そんな風に自分を貶めるようなことを言っただけかもしれないけど、おじさん言葉は僕の鬱蒼とした気分を一気にはらすだけの効果はあった。心が軽くなり、なんかうれしくなってきた。

「あのね、おじさん、あ・・・」

「あ?」

「ありがとう、おじさん。これからも友達でいてくれる?」

うれしくなって、でも、やっぱり子供っぽいことしかいえなくて、僕は少し恥ずかしかった。今日の僕は少しおかしいのかもしれない。今までだったらおじさんと友人にさえなりたくなかったのだろう。それなのに、今日の僕は妙に素直だ。

「友達・・・・。ははは、友達ですか、ええ、いいですよ。友達ですか、はぁ、友達ね。」

おじさんは笑いながら、小さく友達ね、と連呼する。

どうしてだろう。僕となんか友人にもなりたくないのかな。

「いやだった?」

僕が心配顔でおじさんを見上げると、おじさんは顔を少し赤く染め、いいえ、とてもうれしいですよ、といった。


それだけで、なぜか僕はとてもうれしくなって、これからもこんな日が続くといいなと思った。

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