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九葉

「でね、A子ちゃんがB君のことが好きなのに、B君はC子ちゃんのことが好きなの。そういう時ってA子ちゃんはどうすればいいと思う?」



僕がおじさんと再会したのは、初めて会ってから意外とすぐだった。


いつものように僕はあいつと会ってしまい、わざとらしく笑って傷ついた心を押し隠して、話していたらとても精神的に疲れてしまった。だから、僕は公園のベンチに座って休んでいたのだ。

そんなところにおじさんは、僕の背後から急に声をかけてきた。自分の考えに集中していた僕は思わず飛び上がって、ベンチから落ち、顔面を地面に強打。おじさんは頭下げながら、僕にお詫びと称して缶ジュースを買って来て、そして、なぜか僕の隣に座ってきた。

何かしゃべれば言いものの、おじさんは座ってから一言も話さない。元来おしゃべりな僕は、沈黙に耐え切れなくなり、色々話しかけるうちに、おじさんの優しい声につられて、つい目下の悩みを話してしまったのだ。



「A子ちゃんはB君に告白しないんですか?」

おじさんは至極真っ当なことを言った。

僕は悩んだ。どこまでおじさんに話せばいいのだろう。

というか、ストーカー疑惑のあるおじさんにこんな話をしている僕はおかしいんじゃないか。

自分の悩みより、おじさんにストーカーですかと聞くべきだ。

でも、おじさんの不思議な雰囲気が、おじさんのことより自分のことを話してくださいと言っているみたいで、つい僕は魔法にかかったように素直に自分の今の気持ちを話してしまう。

「A子ちゃんはB君に男の子だと思われてるんだよ。だから、A子ちゃんは仲のいい友達関係が告白することで壊れるのを恐れてるの。」

ついつい僕はおじさんと気安く会話をしていた。おじさんは年上とか年下とかあまりそういうことに頓着しない性質みたいでとてもよかったと思う。

「だったら、A子ちゃんは思い切って女の子の格好をしたらどうでしょう。」

そういって、おじさんは目をつむる。

「ん〜、フリフリの白いドレスに、白いレースがたくさんついた靴下に白い靴。・・・あぁ、女装した天使が見えます。」

「・・・殺してやろうか。」

「別にあなたのことを言っているわけではありませんよ。A子ちゃんについてです。」

おじさんの声は優しいと思う。でも、言っていることは僕をからかうようなことだ。

事実、僕の方を見て口の端を少しあげて笑っている。

「・・・おじさんって本当に僕のことなんでも知ってるの?ストーカー?」

「ストーカーとはそれはひどく心外ですね。まぁ、かわいいものを愛でるのは私の趣味ですが・・・。」

「ロリコン?」

「何を言いますか!私はかわいいと思う人は一人しかいません。・・・今話すようなことではありませんね。まあ、どう思ってくださってもかまいませんよ。ですが、私はあなたのことを知っているのは真実ですから。」

「かわいい人一人ってその人っておじさんの好きな人?」

僕の質問におじさんは笑っているだけだ。これが大人の対応ってやつか。子供の僕にはできないことだ。ただでさえ、沈黙に気まずい思いをしているのに。

「えーと?」

「恋愛というのは、自分でこうしようと思ってもどうにもならないものです。ですが、私にはA子ちゃんにはあきらめないでもらいたいですね。人はいろいろな経験をして成長していく生き物ですから、今回の事だってA子ちゃんの人生の糧になる重要な出来事だと思いますよ。」

「・・・それでA子ちゃんがたくさん傷ついてもいいの?」

「傷つくような思いをしたら、人に癒してもらうことを覚えればいいですよ。誰かに頼るのも一つの経験です。例えば、どうです。私にべったりと頼るのもありですよ。」

おじさんは本気か嘘かどっちか分からない口調で言う。

でも、僕なんかに頼られてもおじさんには迷惑な話だろう。あのとき、おじさんはただ笑っていただけだけど、たぶん、かわいいと思う子が本当に好きなのだ。視線が、言葉が、すべてがその子が好きだと語っている。正直、僕はその子がとても羨ましいと思う。誰かに一途に想われるなんて。

僕にもいるんだろうか。僕だけを必要とし、僕だけを想ってくれる人が。

でも、もしいてくれたとしても僕はあいつを忘れたいがために、その人に頼りきりになってしまうだろう。

それでは、だめだ。それはあきらめると同義だ。

今は、傷心の僕だから、こんな弱気になっているんだ。

強い心もたなくちゃ。誰にも頼らず、一人でも生きていけるように、強い心を。

強靭な心を持てば、心が傷ついたとしても痛くないに違いない。


「いや、おじさん、ストーカーだから。」

「ストーカーになったんですか・・・。」


微妙に気落ちし、肩をがっくり落とすおじさんを見ながら、僕は思う。

僕を癒してくれる人があいつだったらいいのに。

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