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【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
第3章

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91 Load Game

「――ッ」

「大人しく死ね!」

 

 剣を受け止めるどころか躱すので精一杯。が、このままじゃジリ貧だ。先に俺の体力が尽きて普通に死ぬ。

 

「――遅延(ディロウ)!」

「はっ、当たらんな!」

 

 伸ばした腕を浅く切られる。痛ってえ。浅いには浅いが、服の上まで血が滲んでやがる。

 

「――繋檻(ジェノン)!」

「っあ!」

 

 地面から生えてきた黒い半球に足を取られた。顔面着地はギリギリ防いだが起き上がれない。腕に力が入ったせいで出血量が増える。

 急いで抜け出さないと、いやその前に反撃? 次は何がくる?

 ――余裕の笑みで突っ込んでくるルファス。これは……むしろチャンスと取るべきか。

 

「――閉空(ケーシア)!」

「何――!?」

 

 直前で剣を引っ込めたようだがもう遅い。ルファスの剣は、歪んだ空間の中でねじ曲がって砕けた。 

 

「チッ――具現化(リディア)

「――置換(レプリアス)! おらおらおらおらぁ!」

 

 降ってきてた瓦礫と場所を交換して繋檻(ジェノン)から抜け出す。そして即無我夢中の切り込み。作りかけの剣では防ぎきることも困難らしく、ちょいちょい鎧を叩く手応えがある。

 さすが聖剣、状況次第で聖騎士すら圧倒するその性能! そして勇者のステータス補正!

 

「くそっ、(ジェ)――」

「させるかよ! ――穿空(フェルラス)!」

 

 発動されたら終わりなので、中断せざるを得ないように攻撃を続ける。攻撃は最大の防御、叩けるときに叩いとけ。

 

「どうしたどうしたぁ! ――遅延(ディロウ)!」

「な……」

 

 具現化(リディア)の途中に別の魔術を発動しようとしつつ、俺からの攻撃を躱す。そりゃ無理だ。欲張りは身を滅ぼすぜ。

 気付けば足の震えも止まっていた。やれる。勝てる。

 

「食らいやがれ! 裂空剣!」

「――土壁(グラムロ)

 

 ――ガン、という衝撃とともに体が宙に投げ出される。辛うじて聖剣は握ったままだが、重要なのはそこじゃない。

 ルファスに魔術発動の暇はなかった。つか暇あったのなんて一人しかいねえ。

 

「ユネ……!!」

「ごめんにゃ、アヤト。せめてぼくの手で殺してあげるにゃ――祓魔の陣(エクソス)

「ぐ、ぁ」

 

 橙色の光の爆発により、再び空中にふっ飛ばされる。一周回って痛みがない。下半身に至っては感覚がなくなってる。着地前には時遡(ヒール)で最低限動くようにしとかないとまずいな。

 

「――時遡(ヒール)……っ」

 

 げえ、下手に治したせいで今度は痛みが出始めやがった。動かないよりはマシなのかこれ。動かしたら激痛、動かさなくても激痛だぞ。そんなん動かないで痛みもない方が楽だろ。やらかしたな。

 だがこれ以上時遡(ヒール)してる時間はない。恐らく他の陣も置いてあるだろうし、受け身と遅延(ディロウ)の準備をしておかないと――

 

「――滅魔の陣(オキュロス)

(ディ)――!?」 

 

 四方八方から飛んでくる紐状の光に遅延(ディロウ)が間に合わない。拘束された。次なんだったっけ。俺はこの陣を見たことがある。大蜘蛛のときだ。そう、この後天を衝く勢いの光が立ち上がった。

 とにかく逃げないと。どこか入れ替われそうな、何かないのか。何か。

 

「――討魔の陣(アストミス)!」

 

 間に合わなかった。純白の光が柱を形成する。眩しいな。目でも閉じとくか。

 ――だが、俺はその光に呑まれることはなかった。いつまで経っても、柱は俺の目の前から動かない。

 

(何……してるにゃ。早く逃げるにゃ)

(な、ユネ!? どうして)

(ぼくは……ぼくは、やっぱりアヤトを殺したくないにゃ。アヤトはもう大事な友達だし、どうしても生きてほしいにゃ。さあ急ぐにゃ、ルファスに気付かれないうちに!)

(わ、悪い。恩に着る)

 

 た、助かった……のか?

 光の柱に陣を重ねがけするユネを後目に、城門へ向かって走り出す。まぁまだ絶体絶命を一度切り抜けただけだ。ルファス以上の敵がいないとも限らない。宮廷騎士みたいなのもいるって聞いたし。喜ぶのはあとだな。

 

「侵入者! 侵入者を発見した、東の噴水付近――」

「――穿空(フェルラス)!」

「ぐぁっ!」

  

 兵士は胸に穴を空けて絶命した。すまん、なりふり構ってられないんだ。こっちも割と命かかってるからな。一撃でやったから許してくれ。

 っと、城門が見えてきた。兵士に減速(ディセイル)かけて、その隙に穿空(フェルラス)で破って突破する。

 

「いたぞ! 魔術班展開準備!」

「――時緩(エゼイル)――」

「まずい、詠唱中止! 急ぎ解呪(ディスペル)を――」 

「――減速(ディセイル)!」 

 

 突っ込んできた鎧の兵士も、後ろで杖握ってる魔術師軍団も、真ん中で焦りまくってる指揮官も、全員まとめてスローになった。時空魔術つええわ。

 

「――穿空(フェルラス)!!」 

 

 門を縦に裂くイメージを飛ばす。が。

 着弾場所にはかすり傷一つ付いていなかった。

 

「もう一回だ――穿空(フェルラス)!」 

 

 今度はサイズ控えめに、その分魔力を込めての発動。

 だがダメだった。同じように術は門の前で消失する。

 

「おーおー、やってんなぁ。線はいいな、うん」

 

 後ろからの声に振り向く。白シャツにジーパン……THE・私服って感じの男がいた。こんな場所じゃなければ一般人にしか見えない。こんな場所じゃなければ。

 

「よっす勇者。力で押し切るならあとちょいだ、周りの素因(エレメント)を上手く感じてみろ」

「俺は勇者じゃない――圧空(フルシア)!」

「んっんー、解呪(ディスペル)。アドバイスは聞いた方がいいぜ? んな幼稚な魔術じゃ俺には届かん」

 

 閉空(ケーシア)でも恐らく消されていた。両手をポケットに突っ込んでる状態で消されたんだからな。要するに舐めプだ。ヤバい。ルファスが羽虫に思えてくる。

 

「んまぁ最初はそんなもんだ。むしろよくできてる方だろ。剣も使うなら尚更な――おいお前ら! もう下がっていいぞ、ローレンツが相手してるっつっとけ」

「は、はい!」 

 

 減速(ディセイル)が解けていた。全く気付いてなかった。いや、気付いたところで相手はできねーけど。

 ローレンツとかいう男はどこからともなく剣を取り出す。待て待て俺は剣の方は初心者もいいとこだぞ。こいつは飾りだ。

 

「ほら、早く抜けよ。そういや片手剣は久しぶりだな。最近はずっと別の武器ばっか教えてた――」


 おっと案外ワンチャンあるか、と思ったのも束の間、


「――だが安心しろよ? お前より余程上手く使える――そら!」

「っ!?」

 

 俺が剣を構えたタイミングで斬撃。構えたままの姿勢で後ろに吹っ飛んだ。置換(レプリアス)とか間に合うはずもなく、そのまま門に背中を強打。マジいってえ。息ができねえ。ユネ戦のダメージもまだ残ってる。

 

「おーい、大丈夫か? 構えも素人同然だし、さては剣使えねーだろお前。気持ちは分からんでもないが、魔術は悪くないしそっち伸ばした方がいいと思うぜ?」

 

 俺もそう思う。が、ないよりはいい。サブウェポンだサブウェポン。

 

「んまぁ、ちっとだけ時間はあるんだよな。魔術の覚えが良けりゃ、剣術の方も教えてやろう。だから――」

 

 斬撃が来る。こっから上体起こして回避するのは多分無理。魔術は間に合わせる。

 

「――今は寝とけよ」

「ッ――遅延(ディロウ)!」

 

 かかった、術に向かって一直線に進んでくるのが見えた。ははは侮ったな俺を! 俺はこれでも勇者だからな!

 

「遅えんだっつの」

「な」

 

 に、と続ける間もなく横から殴られて吹っ飛ぶ。意識はまだある。状況は大体理解でき……ないでもない。いや確かに見たはずなんだ。残像? 相手も魔術を使ってたのか?

 

「拘束はなぁ、加減ミスると殺しちまうしな。かと言って起きてると暴れられて面倒だし。……ああ、骨でも折って動けなくすりゃいいか。決定」

 

 冗談じゃねえ、こんなボッコボコにされて逃げられないとか最悪だぞ。だが身体は動かねえし魔力も尽き気味、遅延(ディロウ)一発撃てるかどうかだが視界も霞む。

 

「……っとぉ、どういうこった。リフィスト様か? 城の破壊もこいつにゃ無理だと思ったが」


(マスター、お手を上に!)

(……?)

 

 脳内に声が響いた気がする。手を上にって中々難しいこと言うね君。そんな元気ないぜ。

 

「おお? まさか勇者を攫うのか? この世界がどうなってもいいってか? 逃げ出しただけあるな、イカれてやがる――させねえよ」

 

(マスター、どうか!)

 

 しゃーねえ、上げるだけ上げてみるか。よっこらせ。

 途端、体が宙に浮いた。手を引っ張られた感じではなく、どちらかというと風船になった感じで。


「おっ」

 

 城が、庭が、ローレンツがどんどん遠くなっていく。それなりの高度まで上昇は続いた。

 そのままふわふわと宙を彷徨(さまよ)っていると、俺を助けたらしい子から手を握られる。柔らかい手だ。今気付いたが、さっきまでの疲れはないし、痛みもなくなってる。

 とりあえず礼を言っとかないとな。なんで助けてくれたのかは分からんが。

 

「ありが――」

 

 目が合う。めっちゃ可愛い子だなと思った。

 ――俺は、全てを思い出した。

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