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【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
第3章

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87 深夜・教会裏

 ……参ったな。寝れない。

 いや、寝ることはできた。が、一瞬で目が覚めた。普通にぐっすり寝た気分なのに時間が経ってない。

 ショートスリーパーにも程があるだろ。向こうの世界じゃこんなことなかったんだが。

 とにかく寝れないことには仕方がない。何か暇潰しになること……ダンジョンツクール?

 こっちの世界に持って来れればなぁ。あの迷宮のクリア報酬だったりするんだろうか。そこはかとなくダンツク感あったし。

 

「ん……うにゃ……」

 

 向こうのベッドからユネの寝言が聞こえてくる。物音とかで起こすのもアレだし散歩にでも行くか。

 そっと廊下に出ると、窓から月(月なのか?)の光が差し込んでいた。結構明るいな。表通り以外はほぼ街灯がないのにも納得。

 あ、魔術の練習でもしてみるか。閉空(ケーシア)とか結構場所選びそうだし、あの瓦礫まみれの教会は丁度いいかもしれん。

 起きてりゃ神父の霊だって怖くない。こっ怖くなんかないんだからねっ!

 

「お邪魔しまーす」 


 正面まで回るのは面倒だったので、裏口の軋む扉を開けて中に入る。聞こえるのは俺の足音だけ……かと思いきや、たまに何かが崩れたりする音も。ポルターガイストか? やっぱなんか薄気味悪いし帰りませんか?

 

「よし、この辺でいいか!」

 

 わざと元気な声とか出してみる。震えてるって? 気のせい気のせい。

 さて早速始めるぞ。まずはあの瓦礫塊にしよう。狙いを定めて――

 

「――閉空(ケーシア)!」

 

 手のひらを向けた先の空間がぐにゃ、と歪み、その中心から裂け目が広がっていく。

 大体一メートル四方程度まで広がったあと、裂け目は周囲の瓦礫を吸いこんで、消えた。

 

「おお……?」

  

 この間は気絶していてわからなかったが、どうやら無理やり空間をこじ開けるタイプの魔術らしい。吸い込まれる原理はわからんが、歪みが元に戻ろうとする力とかなんだろうか。

 先の紫スライム戦とかで使わなくて良かった。これ確実に仲間巻き込むタイプのやつだ。

 ちなみに、吸い込まれた先がどこに繋がってんのかは謎。圧空(フルシア)と同じような魔術だと思ってたが全然違うっぽいぞ。確かに空間の範囲のイメージは同じだが、あっちは押し潰すだけだしな。

 もう一回同じ感じで使ってみよう。範囲ちょっと広げてみるか。

 

「――閉空(ケーシア)……っ!?」

 

 魔術は成功した、が、突然身体中の力が抜けた。まさか魔力切れか。迷宮にいるときはもっと使えたのに。

 さてはこの魔術、恐ろしく燃費悪いな? ありえない話じゃない。空間こじ開けてるし。

 

「朝まで長いな……」

 

 割れた長椅子にもたれかかって呟く。まだ深夜三時とかだろうし、やることないと辛いぞこれ。

 ていうか魔力も戻らんうちにゴーストとか湧いたら非常にヤバい。主に俺の心臓と寿命が。

 

「!」

 

 最悪のタイミングで悪寒。超ゾクッとした。今。確実にいる。足元にいる。いや背後か? 視界の端に黒いのいたぞなんか液体っぽいやつ。あ、悪霊退散! 悪霊退散!

 

「ドーマンセーマン! ドーマンセーマン!」

 

 ――気配は消えたがまだ背筋が寒い。びっくりするほどユートピアの方にしとけば良かったか。でも今あれできるほど体力ねーしな。気配消えただけでも良し。

 とりあえずここから出よう。まだ孤児院前のベンチに腰掛けてた方がいい。気分的にも。

 

「っこらせ、と」 

 

 どうやら、物に掴まって立ち上がることくらいはできるらしい。ベンチで少し休んだら今度こそ散歩とかするか。

 

「……から………………な」

「へえ………………す」

 

 教会の裏口から話し声が聞こえた。さっきの悪霊か? そうじゃなきゃこんな時間に誰が? 寝れないにしてもなんでこんな恐ろしいところへ?

 冗談はさておき、裏口から出るのはやめた方が良さそうだな。こんな世界だ、バレたら最悪殺されかねん。魔術も簡単なのを二、三発撃てるかどうかってとこだし。

 ……こっそり覗くだけにしよう。ちょっと覗いてすぐ逃げる。

 

「ああ、全員分の死体を確認した。ご苦労だったな」

「リフィスト様ってぇのはどうなったんで? お頭が檻ぶっ壊してやしたが……」 

 

 そこにいたのは小汚い背の低い男、そしてルファスだった。

 やっぱ悪いやつだったってことでおーけー? てか何してんすか。キマる葉っぱの取引とか?

 

「逃げられたよ。教皇が死ねば檻の魔術は解ける。元より時間の問題だったようだ」

「へえ、ま、聖紋とやらの呪いも消えて良かったでありやすな。加護なしでも解放はできるようでありやすし」

 

 何を言ってるか全くわからんが、ルファスがやべー奴だってのはマジらしい。話を聞くに神父とか殺したのこいつらっぽいぞ。

 だが、小汚い男はまだいいとして何故ルファスが神父殺しを? 大体、なんでそんなやつがまだ教会にいられるんだ。 

 

「――ところでルファス、気付いてやすか?」

「ああ――土鎖(グライド)!」

「っわ!?」

 

 扉を突き抜けて何本もの土の鎖が襲いかかってくる。

 

「躱されたか、ギード!」

「へえ――魔影短剣(マジェスニーヴ)

 

 飛んできたナイフまでは躱しきれなかった。服が壁に縫い止められる。太ももの辺りも軽く裂けたが気にしてられん。時遡(ヒール)するだけの魔力も時間もない。

 幸いこっちは暗くて顔は見られてないはずだ。ここは転移(ラムルト)使ってみるか。いや、結晶が聖宝とか呼ばれてる魔術を、今の俺の魔力で使えるとは思えない。

 ――置換(レプリアス)の応用でいこう。かなり集中しないとだがここは賭けに出るしかない。失敗すりゃ死ぬが、何もしなくても死ぬ。

 

「見失っちまいやしたね」

「いや、まだこの中にいるはずだ。微かに魔力を感じる……奥だな」

 

 割れた窓の外に見える大岩。あいつと俺の位置を交換する。ちょっとデカいが成功しろよ――

 

「――置換(レプリアス)!」

「そこか――」

 

 間一髪、林の中に逃げ込めた。これぞ忍法変わり身の術。ジャパニーズ・ニンジャの力を見たか。

 今頃やつらは大岩殴って満足してるはずだ。てか満足しろ! 頼むから追ってこないでくれよ今走れない。ゆっくり歩いて散歩くらいが限界です。

 ……いや、下手に散歩とかして鉢合わせるのもまずいな。ルファスが孤児院に戻る前に部屋に戻っておきたい。

 そうと決まれば早速庭の周りを一周だ。音を立てないように、あとなるべく暗いとこを通るようにして。っつっても街灯ないし大して気にしなくても良さそうだが。

 ふと思ったが、表通りの街灯の動力なんなんだろうな。この世界には電気はなさそうだし……代わりのエネルギーとして魔力を使ってるとか? つってもそんな機械的に供給できるもんなのかね。明日ハルティアさんあたりに聞いてみるか、魔術とかそういうの詳しそうだし。

 とかなんとか言ってる間にミッションコンプ。あとは二階に上ってベッドに横になるだけ。俺の勝ち。グッドゲームだ聖騎士ルファス!

 

「おや、そこにいるのは勇者――アヤトと言ったか」

 

 マジ? なんでいるの? コーナーで差を付けられたか?

 ……バレてる?

 

「どうした、こんな真夜中に。はは、孤児院のベッドは硬すぎて寝れないか?」

「いや、えーと、少し目が覚めて」

「ふむ、そうか。しかし明日は早い。謁見時に居眠りせぬ用、しっかり寝ておけよ」

「で、ではお言葉に甘えて」

 

 バレてない。ほっと胸を撫で下ろす。部屋に向かって、ルファスの横を通り過ぎようとした瞬間だった。

 

「――詮索はせぬことだ。次はない」

 

 かくして、俺はまんじりともせず朝を迎えることとなったのである。元から一瞬で目覚めるけど。いやマジで怖いわ助けてくれ。……誰か。

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