76 転生ニートは探索者
……眩しい。朝、いや昼か。ってか転生したのか。
ここが始まりの街か? えらく人が多いな。
「おい兄ちゃん何ボーッとしてんだ。邪魔だ邪魔」
「っと、すまん」
そういや道の真ん中だった。とりあえず端の方に避けとこう。
「お?」
身体を動かして気付いたが、俺の腰には一振りの剣が提がっていた。ああこれが神が持たせてくれた武器ってやつだな。
黒い鱗みたいなもので覆われた鞘に、同じく黒色の鈍く光る刃。よく切れそうだ。
早速迷宮行ってみるか。ジョブは迷宮探索者にしたし。多分最深部に魔王いるやつだろ?
ああ、まだ自分のレベルとか確認してなかった。スキルもなんか取った気がするけどよく覚えてないし。えーっと、こういうのって念じればいいんだっけか。
(ステータス)
『一部情報の取得に失敗しました。名前:アヤト=ミズシマ――』
おお、ホントに出てきた。なんか失敗とか不穏な単語が聞こえた気がするが気のせい…………
じゃないなこれ。
レベルもねえ! スキルもねえ! そもそも数値が全くねえ!
……スキルだけは、使用可能魔術の一覧が取得できてたお陰で大体わかる。遅延に減速、圧空……時空魔法ってとこか。剣持ってんのに剣スキルないの大丈夫? 見当たらないだけでちゃんと使えんのかな。
あと迷宮拡張とかよくわからん死にスキルっぽいパッシブがあった。前世の影響か? 探索者側でどうやって使うんだ。
『スキル:天の羽衣の修復・最終調整が完了しました』
うわ急に喋るなびっくりするだろ!
で、天の羽衣って何よ。天ぷらみてーな名前だな。
『天の羽衣:状態異常に対する耐性を上げるパッシブスキル』
ほーん。まあ毒沼みたいなのに突っ込んでも多少はなんとかなるってことか。どの程度かわからないし油断は禁物だが、勝手に耐性上げてくれるのはデカい。割と無難なスキル取ってんな。
「迷宮はあちらです! 装備を整えて挑んで……っ」
呼び込みをしていた黒髪の子が俺の方を見て固まった……気がした。にしてもいいスマイルですね、マ〇クとかで働いてそう。
「め、迷宮探索者の方ですか? 入口はあちらに見える城門となっております。できるだけ三、四人でパーティを組んで挑んでくださいね」
オイオイこの俺にパーティを組めと? 言っておくが俺はソロだ。決してコミュ障だからとかではなく自らソロを選んでいるんだ。大体、俺は勇者だぞ。一人で挑むのが丁度いいハンデってとこだろ。
「かかか! 誰に言い訳をしておる、童!」
バシ、と背中を叩かれて後ろを見ると、いたずらっぽい笑顔の女の子が立っていた。やけに古風な喋り方をする子だな。
って、俺もう童って歳でもないだろ。どっちかって言うと君の方が童って感じだが。
「我が童だとしたらぬしなど赤ん坊未満よ。それはさておき、組む相手がいないのかえ? ぬしが望むなら、共に行ってやらんこともないぞ……?」
めっちゃ一緒に行きたそうな顔してるけどダメだ。てかこんな女の子と二人で迷宮とか事案です事案。俺そこまで好青年って訳じゃないし、ポリスメンが見たら確実にお縄だ。ポリスメンいるか知らねーけど。
「やれやれ、相変わらずつまらん童よの。まま、仕方あるまい。が、くれぐれも用心してかかれよ。ぬしの迷宮は――」
「シーっ! それ以上はだめ!」
「む」
更に年下くらいの子が横から口を塞ぐ。お友達かな。てかゴスロリ服ってこっちの世界にもあるのか。素晴らしい。
「そうであったな。では童、暫しの別れだ」
「マス……お兄さん、迷宮攻略頑張ってね!」
そう言うと二人は雑踏の中に消えていった。迷宮街っぽいのにあんな子供がいるのも結構驚きだぜ。
さて、と。そろそろ迷宮行くか。勇者補正でそこそこのとこまで行けると思うし、聞こえた話じゃ途中の階まで死なないらしい。要はゲームみたいなもんなんだろ? 死んでもいい迷宮なんてヌルすぎるぜ。
城門をくぐって前庭を少し歩くと、いよいよ入口って感じの扉があった。にしてもどうにも見たことあるような城だな。神は俺らの世界参考にしたっつってたし、世界遺産か何かかもしれない。
「痛て」
よそ見してたら透明な水色の壁にぶつかった。なんだなんだ。これが結界ってやつか。
『冒険者証明書の認証をお願いします」
横にあった改札みたいな機械からそんな音声が流れてくる。同時に結界じみた壁、そしてよくわからん文字。やけにハイテクな迷宮だな。
冒険者証明書……発行した記憶はなかったが、ポケットに入ってたこの金属板みたいなのがそうだろ。これをかざせばいいのか?
『認証完了。貴方の最高到達階は地下エラー階です。所持エル:0』
エラー吐いてんのは入ったことないからかね。まぁ扉は開いたし入っていいってことだろ。アヤト、行きます。
「おお……」
中はガッツリ城の廊下だった。ていうかこの既視感グランサーガⅢのルセペ城だ。思い出した。
神もJRPG好きなんだな。話が合いそうだ。
人気作のわりに結構な鬼畜難易度だった気がするが、この迷宮もそうなんだろうか。だとしたら気を引き締めてかからないと――
「っ、危ね!」
曲がり角で突然斬りかかられる。人……か? まさかプレイヤーキル?
いやいやいや、んなこたなさそうだ。多分亡霊とか怨念とかそういうタイプの敵だな。目が虚ろだし。
……だが見た目は人だし切りたくねえ。もうバリバリ中世の傭兵って感じ。反射的に剣を抜いたはいいもののスキルの使い方わからんし。やっぱ剣スキルないんじゃねーの俺?
「……っ!」
重い斬り込み。素人の俺がなんとか動けてるのは勇者補正か? いずれにせよさっさと片付けないとまずそうだ。増援でも来ようもんなら、相手しきれずにいきなり死ぬことになる。
てか今なんとなくもう一体来る気がするんですよね魔力的サムシングを感じているほらね言わんこっちゃあああああ!?
――だが現れた三体の亡霊――ゴーストはまだ俺には気付いていない。先手必勝。今斬り合ってる奴を先になんとかする。
どの魔術がどんな効果なのかなんてサッパリわからんはここは運命力と勘だ。俺は宝くじで三億当てた男。
「――遅延!」
ゴーストが振りかぶった剣ごと遅くなる。持続時間知らんがひとまずこっちはオーケー、次は向こうだ――
「――圧空!」
ベキョ、と嫌な音を響かせながら三体のゴーストは空中で球体となり、消えた。圧空つっよ。雑魚戦はこれだけで足りるな。
残り魔力量も全くわからんが、そこは勇者補正で多いと思いたい。てか時空魔法みたいなスキル持ってて少ないはずがない。
あ、もしや時空魔法をまとった剣で戦うとかだったのか? 裂空剣? 時空断裂斬? 強そう。
「痛……っ!?」
左肩の皮膚が裂けた。いや皮膚だけじゃない。めっちゃ痛い。ああ分かった……遅延かけて放置してたわあのゴースト。絶対に殺す。ああマジで痛えぞクソ。
「――圧空ァ!」
ゴーストは城の装飾を巻き込んで派手に消滅した。これで大丈夫だ、次は回復魔法……ヒールって名前だしこれがそうか?
「――時遡」
肩に手をかざすとみるみるうちに傷が塞がっていく。時空魔法だし普通の回復とは原理が違いそうだが、とにかく治ってるから良しとしよう。
さっき油断は禁物っつっといてこのザマだ。まぁ死ななかっただけマシか。仮にも前世で迷宮造ってたんだし、流石に上層では死にたくないな。




