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【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
第1.5章

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42 ルイン

「すいませーん!」

「打ち直しですか――って、勇者様! 親方ぁ!」

「ああ!? 待たんか!」

 

 少しの間のあと、職人といった装いの老人が奥から出てきた。

 

「これはこれは勇者様。装備の準備は整っております。ささ、こちらへ」

 

 龍牙は戦闘職だけど、僕はそうじゃない。なんの武器が貰えるんだろう。

 

「さて、まずはリョーガ様。防具は軽めのものに致しました」

 

 黒のシャツに、薄手の同じく黒のコート((ふう)の服)。龍牙には前に出て戦ってもらう予定だけど、攻撃受けない前提だったりするのかな。


「え、採寸とかないんすか?」

「採寸! これはまた昔の話ですな。ま、試しにこちらを着てみてくだされ」

 

 龍牙が渡されたコートに袖を通す。と、次の瞬間少し縮んだ。凄い技術だ。

 

「すげー! ぴったりじゃないすか!」

「生地に魔力を込めることで、着用者によって大きさが変わるのです。特殊な素材を使っておりますので、魔術や衝撃への耐性もバッチリですぞ。更に身体能力の強化効果もあってですな……これにはとても貴重な魔糸を用い……続いて武器ですが……」

 

 龍牙は熱心に説明を聞いている。どうやら龍牙の武器は杖らしい。暇になってきた。

 あたりを見渡していると、ふと一振りの剣が目に留まった。丁寧に布の上に置かれているけど、柄の部分に傷がある。

 伝説の剣とかなのかな。

 

「――ではマコト様」

「あ、はい」

 

 差し出されたのは、龍牙と同じようなシャツとコートだった。ただ一つ違うのは、どちらも真っ白ってところ。

 

「え、と。色が違うのに理由とかあったりしますか?」

「そうですな。マコト様のものは魔力強化に力を入れた一般的なものとなっております」


 一般的……。まぁ僕が身体能力強化を貰っても猫に小判なのはあるけど。それなら少し劣ってる魔力を強化して、解析(アナライズ)の質をより高めた方がいい。


「こちらも」

 

 これはレンズ……モノクル?

 

「これをかければ、強力な敵にも解析(アナライズ)が通用するはずです。最高級品なので、今の状態でも魔界の魔物を解析(アナライズ)することも可能ですぞ」

「あ、あの、武器とかは……」

 

 老人は申しわけなさそうに首を振る。

 

「マコト様は勇者である故、剣士になるにしろ魔術師になるにしろ、素質は十分にあるでしょう。しかし、解析(アナライズ)に集中していただいた方が、リョーガ様の戦闘もよりスムーズに行えるでしょうな」

「……そうですか」

 

 どうやら僕はとことん戦闘に参加できないらしい。戦わない勇者なんて、最早勇者と呼べるのか怪しいものだ。

 

「護身用に剣――短剣とか貰ってもいいですか?」

「勿論。少々お待ちを」

 

 どうもさっき見た剣が気になる。どこかで見たことがあるような……。

 神はゲームを元にしたと言っていたし、それかな。

 柄の傷も、よく見れば「彩」と書いてあるようにしか見えない。包丁みたいだ。この世界にも極東の島国があったりして。

 

「その剣が気になりますかな」

「え、あぁ……すいません。格好いいなと思って」

「実は、それは我々が鍛えたものではないのですよ。最近できた迷宮から発見されたものでしてな。――短剣はこのようなもので満足いただけますかな?」

 

 差し出された短剣の柄には、宝石が嵌め込まれていた。豪華だ。

 

「はい。ありがとうございます」

「いえいえ。気に入っていただけたなら何よりです」   

「おーい、誠! 早くギルド行こうぜ!」

 

 革の鞘に短剣をしまい、腰に提げる。なかなかサマになってるんじゃないかな。 

 

「今行くよ」

 

 老人にもう一度礼を言って鍛冶屋を出る。モノクルには度が入っていなかった。

 まぁ、何故かこの世界に来てから眼鏡なしでも困らないからいいんだけど。神が治してくれたのかもしれない。 

 

「おっ、誠似合ってんじゃん!」

「はは、そうかな」

「戦闘職じゃなくたって気にするなよ。創造魔法なら教えてやるからさ!」

「それは嬉しいね」 

 

 きっと僕はスキルがないから使えないけれど。まぁ、龍牙なりの優しさってやつだろう。

 

「んーと、ここを左……あった!」

「こらこら、そんなに走るなよ」

 

 僕は君よりも足が遅いんだ、と心の中で付け足す。

 こんなところでまでステータスの差を実感するとは。気付けば龍牙に暗い感情を抱いている自分が嫌になる。 

 

 龍牙が入っていったドアを開けると、物凄い熱気と汗の臭いが溢れ出してきた。僕は外で待っておこう。

 人混みは苦手だ。物心ついてから、娯楽施設にほぼ足を運んでいない程度には。

 壁に寄りかかって空を見上げる。空は向こうと変わらず蒼い。頬を撫でる風も心地がいい。

 

「なんというか……」

 

 平和だ。

 別に現代日本が平和じゃないってわけではない。むしろ、こっちは魔物やらの跋扈する世界。日本と比べたら危険かもしれない。

 けれど。

 こういう、のどかな雰囲気を平和と言わずしてなんと言おうか。ベンチに腰掛けて本でも読みたい陽気だ。

 この世界の文字は読めないけれど、内容は頭に入ってくる。本があったら買ってみようかな。

 天使像の噴水――街の中央に、喫茶店と隣接してある噴水だ。外に椅子や机もあったし、そこで水音を聞きながら読書に(ふけ)るのも乙かもしれない。

 

「ふん、そのような暇があるとでも思うか」

「なっ、君は……」 

 

 こちらを冷ややかに見下ろすは天使。名前はルイン、だったっけ。

 

「何を呆けた顔をしている。解析士(アナライザー)などという(およ)そ勇者に似つかわしくない職業。それでいて役に立つ努力もしないと?」

「いや、僕だって僕なりに努力するつもりだ。君にどうこう言われる筋合いは――」

「笑わせる。自分がいかに"無能"か気付けていない者の発言だな。創造者(クリエイター)にただの解析(アナライズ)は必要ない。何故だか分かるか?」

 

 間髪入れず、ルインは続ける。

 

「分からないだろうな。貴様には理解するだけの脳もない。自らが死んだことにも気付かず、適当に職業と天使を選び、この現実を夢で片付けようとする、救いようのない馬鹿なのだから」

「なんだってそんなに散々に言うんだ」

「選ばれてしまった以上、貴様の失態は私の職業だ。その腑抜けた根性で"本物の"勇者に並べば、どのようなことになるかなど……想像に容易い」

「――僕は本物の勇者じゃないって言いたいのか?」 

 

 ルインの視線が更に冷たくなる。

 

「戦闘もできない無能が、勇者を騙ろうとするか。恥を知れ」

 

 何か言い返そうとした時には、既にルインの姿はなかった。

 僕だって好きで戦闘をしないわけじゃない。確かに悪いのは解析士(アナライザー)なんて職を選んだ僕かもしれないけど。

 僕はゲームは好きだけど苦手なんだ。解析士(アナライザー)がハズレ職なら、予め攻略本にそう書いておいてほしい。

 

「あっ、外にいたのか! ちょっと探したぜ、お待たせ!」

「……ああ。で、どうだった? やっぱり最初は薬草でも集めるのか、それとも側溝の掃除?」 

「それがさ! 俺もゴブリン退治とかかと思ってたんだけど……」

「なんだったんだ、勿体付けずに言ってよ」  

 

 龍牙は目を一層輝かせて言う。

 

「――Bランク魔物、レイス討伐だぜ!」

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