40 勇者召喚
第1.5章は誠(勇者の一人)視点で進んでいきます。
「おお、こやつらが勇者! 召喚成功か!」
「やりましたね陛下!」
なんだ?
石畳? どこだ、ここ。
僕は何をして――
「っ」
頭痛がする。僕の下では怪しげな魔法陣が発光していた。召喚? 召喚――ああ、夢の続きかな。
「うわ、すっげー! マジで異世界!? やべー! なぁやべーよ!」
隣のやかましいのは誰だったっけ。どこかで自己紹介を聞いた気がするけど忘れた。ま、どうせ夢だし問題はないけど。
「おい、誠! 何ボーッとしてんだ、王様が呼んでるぜ!」
「……あぁ、うん。今行くよ」
いきなり呼び捨てか。うるさい上に馴れ馴れしい。黙っててくれればいいのに……。
前へノロノロと歩き出す。
「まずは召喚に応じてくれた事、礼を言うぞ。勇者よ」
「んと、すいません! 俺らは魔王倒すっつーことでいいんすよね?」
「うむ、それで間違いない。して、三人目の勇者は?」
三人目? 勇者は僕らだけじゃないのか。確かに魔法陣は三個あったみたいだけど。夢だからって適当すぎる。
「えーと、ちょっと分かんないんすけど。遅れて召喚されるとかじゃないすかね?」
「う、うむ。そうかもしれんな。二人成功していてもう一人が失敗などありえん。取り敢えず二人とも、今日はゆっくり休みたまえ。城内に特上の部屋を用意してある――ガイス!」
「はっ!」
「勇者を部屋までお連れしろ。もう一人については儀式続行とする故、その旨を術士共に伝えて参れ」
「了解であります。ささ、勇者殿、こちらへ」
「誠、行くぞ!」
ああ、ごめん。話聞いてなかった……儀式がなんだって? まあ、いいか。
「はいはい」
鎧を身に纏った騎士然とした人についていくと、豪華な廊下に出た。いや、さっきのホールも今までも十分豪華だったけど。天井にシャンデリアみたいなのあったし。
「マコト殿、でよろしいかな? 奥の部屋を使ってくだされ。あー、その……勇者殿、お名前は?」
「あー、俺は斎藤龍牙。ま、気楽に龍牙って呼んでくれよ」
「はは、冗談を。一介の王国騎士に勇者殿を呼び捨てになどできませんぞ。では、リョーガ殿は二番目の部屋へ」
あれ? 僕も名乗った覚えないんだけど。夢だからかな。
「明日の昼頃に王より直々にお話があります。それまではお部屋でごゆっくりおくつろぎを。あ、城内を見て回っても大丈夫ですぞ。部屋の場所などが分からなくなった場合には、城内の騎士などに聞いていただければ」
では、と一礼し、騎士は去っていった。
それにしても、部屋が凄い。超高級ホテルでもこんな豪華な部屋を用意する事はないと思う。何人部屋だろう、これ。こんな部屋を夢で想像できるほど僕の想像力が豊かだったのにも驚きだ。だったらもう少しマシな設定にしてくれればいいのに。
「じゃあ誠! また明日な!」
「あ、ああ。また明日」
龍牙だっけ。明日は明日でまた別の夢を見るよ。
部屋の中へ入ると、外から見たときよりも広く感じた。こんなに広いとどこか居心地が悪い。
ここで過ごせばいいのか。くつろいでいる内に目が覚めるかな。
広すぎる部屋は歩き回る気にもならない。本でも読んで時間を潰そうと思ったけど、生憎僕の想像力は胸元に手帳を用意することしかできなかったらしい。妙なところで現実に忠実だ。明日の予定は――午前中は講義、午後からバイト。普段通りだ。何か変わった様子もない。
することも無いのでベッドに横になってみる。これが思った以上にふかふかで気持ちが良かった。ついうとうとする――ああ、講義面倒だな、現実なんてつまらない。つまらない夢だと思っていたけど、どうやら僕は勇者みたいだし――少しは面白そうじゃないか。現実に戻るよりかは、この夢が続く方が――数百倍マシだ――。




