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3 称号:迷宮王

 岩。いや岩と土壁。あとかすかに差し込む日光。

 

 あぁ、転生したのか。早速美味しい異世界の空気を堪能する。

 ……正直現代日本と大して変わらないな。


「おはようございます」

「おう、おはよう」


 急で驚いた。急じゃなくてもこんな可愛い子におはようとか言われたらビビるわ。文字通り天使、白いローブが眩しい。

 って、いつまで俺の顔を覗き込んでるんだ。透き通るような翡翠の瞳に俺が映ってるのがくっきり見える。

 なんかめっちゃいい匂いするし。万年童貞にはちょいと刺激が強すぎるぜ。もしかして俺死ぬのか?


「ふむ、健康状態は問題なさそうですね。――ここがアヤト様の"迷宮"です。早速ではありますが、そちらのモニタに触れてみてください」


 迷宮と聞いて半分寝ぼけていた頭が冴えわたる。モニタってのは壁にあるこれかな。

 触ると、透明な画面が空中に表示された。


「これで、アヤト様が正式にこの迷宮の王となったはずです。以降、念じるだけで画面を表示できます」

「へえ」


 思ってた以上に近未来的だ。


 さて、画面を見てみると、そこに書かれていたステータス――攻撃敏捷防御体力運なんてモノはどれも似たり寄ったりの数値だった。3,000が高いのかは知らないがきっと高いんだろう。勇者だし。

 それとは別に一つ見慣れない項目があった。いや、ある意味見慣れた数値と言うべきか?


「DP……ダンジョンポイント?」

「その通りです。恐らくこの迷宮の事は私よりもアヤト様の方が良くご存じでしょう」


 そのまま持ってきたのか。ダンジョンツクールを現実の世界でできるとか、使い切れない大金より価値あるかもしれん。今んとこただの超リアルVRって感じだしな。


「あっちでのゲームデータを引き継いだりはできんの?」


 流石に無理か。そんな事できたらただのチートだよな。

 

「可能です。今残っているDPの許す限りですが」

「!?」


 驚きで声も出ない。流石に嘘だろお前……。

 そんなイージーモードでいいのか、俺の迷宮は世界レベルだぞ。それとも周りの魔物が強すぎるとか?


「いえ、神から直々に与えられた力ですから多少は強力なのです」


 多少、ねぇ。んじゃま、やってみますか。

 えーと? 引き継ぎはこれ押すだけでいいのか。便利だなマジで。


「実行っと」


 実行ボタンを押すが早いか、地響きと共にすぐ近くの壁がせり上がる。と同時に、俺の身体は地面ごと下に移動し始めた。

 束の間の浮遊感を楽しんだ後、地響きが止む。次いで土煙が収まると俺の目の前に広がっていたのは。


「――間違いない、地下39階だ」


 俺がやり込み続けて造り上げた最下層。クリスタルの床が、壁に設置された光を反射して幻想的な雰囲気を作り出す。

 にしても、実際こう立ってみるとなんだ。迷宮王感が出るな!

 ただ――


「何かが足りない」


 なんかこう、寂しいというか物足りなさが残る。

 ……あぁ、魔物がいないのか。


「流石に魔物までは引き継げないようですので……余りのDPで再配置をお願いします」


 そりゃそうだろ。流石にゲームのとは種類が違うだろうし無理だよな。


「まずはゴブリンとスライムでも配置すっかなー」

「では、私はこの迷宮に外部の魔物が侵入しないよう見回りに行ってきます」

「おう、いってら」


 手をひらひら振りつつ言う。


「あ、そうそう。俺の呼び方はもっと砕けた感じでいよ。"様"はむず痒い」

「了解です。――マスター」


 マスター。

 その響きの余韻に浸っている間に彼女は姿を消した。レルア、だっけ? 中々センス良いじゃないか。


「ふっ、ふへへ」


 謎に笑いが込み上げてくる。だってマスターだぜ? ムズかゆいっつーか。

 もっと様をさんに変えるとかいっそ呼び捨てとかでも良かったのにな。格好いいからいいけど。


 さて、と。ひとしきりニヤついたところで配置考えるか。

 ゴブリンもスライムも一匹100DP。案の定一番安い。とりあえず残りDPが15,000だから50匹ずつでいいか?

 地下1階をスライム、地下2階をゴブリン部屋にしとこう。


 俺が決定ボタンを押すと、画面端に


【地下1階:スライム50/50】

【地下2階:ゴブリン50/50】


という表示が追加された。

 なるほど、こんな表示が出るのか。これは神アプデ。現実版への移植にあたって数少ないユーザーの声をしっかり反映したのな。俺歓喜。

 これで勇者側の奴らが涙目になるのも間違いなし……って、あれ?


 この世界では、俺が勇者なんじゃ?



 ――――面倒なことを考えるのはやめておこう。多分アレだ、侵入してくる魔物を倒したらDPが貯まるとかだ。ヘルプないの?


 画面右下のクエスチョンマークが赤く光る。タップすると案の定ヘルプが出てきた。

 そろそろ便利すぎて怖いぞ。


『DPについて:''マスター及び迷宮産の魔物''以外の存在が迷宮内で絶命した場合などに発生。また迷宮外での活動でも特定条件下にて発生。マスターの迷宮内での生活でも少し発生する。上限は無し』


 この後はDPの使い道なんかについて書いてあった。まぁ魔物を呼び出すのと進化させるのと階層増やすのくらいだ。ゲームと変わらなくて助かる。

 DPは称号によっても入手量が変化するとか書いてあった。称号なんてシステムはゲームには無かったな……。


 と、ステータスの下にあった称号とかいう文字が赤く光り始める。

 見ろってか? 知ってた。


【称号:迷宮王】


 そのままかよ。迷宮勇者とかじゃないの? いやそれだと攻略する側になっちゃうか。

 称号の効果は入手DPの増加、迷宮内の魔物の強化など。下手に俺のステータスアップとかされるよりも使えるからいいな。勇者補正で十分強そうだし。


 ヘルプ欄を眺めていると、迷宮内の魔物を外に連れてく方法から罠の効果的設置法まで、迷宮のイロハが載っていた。ぶっちゃけめちゃくちゃ面白そう。

 が、俺は読み物は一眠りしてから始める派なんだ。幸い、部屋の隅にベッドがある。それほど眠くはないが――おやすみ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすい文章、納得できる展開、掴みやすいキャラクター。 どれもサイコーです!
[良い点] 設定だけで面白い [気になる点] 人物の判別が少し難解か [一言] が、力押しだけで突破できる迷宮ダンジョンなんて三流三流。俺の作る迷宮はそう簡単には突破できないのさ。 上記の始まりだけ…
[良い点] ツクールを題材にしたモノは初の試みでしたが、面白いです!主人公の人間味溢れる感じも魅力的ですね!(*゜▽゜)ノ
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