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【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
第8章

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245 買物

「暑っちい……」

 

 外はカンカン照りで、日陰でも2秒で熱中症になるんじゃねえかってくらい暑かった。恐らく気温40度弱はある。炙られる食材になった気分だ。

 ヘトヘトになりながらやっとの思いで店に到着。後ろのレルアさんは思ったより元気そうで、安堵が半分、俺だけヘバってて恥ずかしいってのが半分。

 昼のピークも過ぎて、客も少ない……かと思いきや、店内は混み気味だった。レジにも数人並んでるし。まあいいか。

 デカデカと貼られたおすすめメニューなんかを眺めながら、順番が来るのを待つ。体の火照りも少し落ち着いてきた。

 

「いらっしゃいませ。ご注文をどうぞ」 

「えーっと、ダブル&ダブルのギガMAX、ポテトLで。あ、ドリンクもLで、アイスティで」 

 

 期間限定の肉4枚&チーズ4枚入りバーガー。今の空腹感ならいける気がする。

 

「お連れ様の方は?」 

「あー……どうします?」 

 

 やべえ、そういや聞いてなかったな。ギガMAXに意識を持ってかれすぎた。

 メニューの前でオロオロするレルアさん。そもそもファストフードの注文形式に慣れてないのか?

 

「俺が頼んじゃっていいですか?」 

「すみません、お願いします」 

 

 謝るのはどっちかっていうと俺の方なんだが。

 

「じゃあベーシックのセットください。セットはポテト、ドリンクは……アイスティで」  

 

 ドリンクくらい聞こうかと思ったが、後ろの客からの殺意を感じ取ったので諦める。

 

 会計は合わせて3,000円弱。万札で払うのもなんだったので、テキトーに一番手前のカードで払う。

 レルアさんもその学生証で払おうとしてたみたいだが(デビッド機能付きらしい)、俺が勝手に決めて連れてきて頼んだわけだからな。俺が払うのが道理だ。つーかカード機能あるっつったって身の回りのものなんもないわけだし。ここで彼女に払わせるのは鬼だろ。

 

「ごゆっくりどうぞ」 

 

 謝罪やら感謝やらで忙しくなってるレルアさんを連れて、空いてる席を探す。奥の窓際の客が丁度出るみたいだな。少し暑いかもしれないが、仕方がない。

 

「うーん、そこにしましょう」 

 

 俺のギガMAXは名前に劣らず中々の重量で、少ししか持ってないのにもう腕が疲れてきたとこだった。

 椅子に腰を下ろし、流れるようにストローをアイスティに刺す。完璧。

 

「いっただきまーすと」

  

 まずは無心で(かぶ)りついてみる。当然一口に入り切らない。あんまり無理すると顎が外れかねん。とはいえ引っ込みも付かないので無理やり潰して押し込む。口いっぱいに広がる肉汁とチーズの香り。うまい。贅沢だ。

 と、そこでレルアさんがバーガーに口を付けてないのに気付いた。アイスティを持って、何か言いたげに俺の方を見ている。ストローの刺し方……とかじゃなさそうだが。

 

「どうしました?」 

「その……乾杯はしないのでしょうか?」 

 

 おっと予想の斜め上だ。乾杯ね。乾杯ときたか。

 

「普通の飯のときにはしないんですよ。ってか、レルアさんの国にもあったんですね」


 万国共通なのかもしれない。盃を交わした仲ってやつだよな。


「いえ、私が育った場所の文化ではなく……しかし、誰か大切な人に教わったような……」

 

 なんだよ彼氏か? 妬けるねえ。まあこんだけ可愛けりゃ、彼氏の1人や2人や3人や4人いてもおかしくねえわな。

 それより、今彼氏に出くわしたら俺がぶっ殺されんの確定だぜ。日本にいないのを祈るね。

  

 俺がセットを何とか全部腹の中に収めきった頃(ポテトをLにしたのを後悔した)、レルアさんはまだ半分食べたかどうかってところだった。

 どうやらハンバーガー自体食べ慣れてないらしく、普通サイズのと格闘する姿は見てて微笑ましいというか。

 

 腹も膨れて眠くなってきた。少し残ったアイスティをチビチビやりつつ、スマホを開く。時刻は15時半過ぎ。客はまばらになってきたが、そろそろ学生が増え始める頃か。

 何となくホーム画面を眺めていると、離れた位置に配置された通帳アプリが目に入った。……いくら残ってんのか気になるな。毎日出前頼んでたなら多少は潤ってるんだろうが、一応正確な額は把握しておきたい。

 

 一生懸命バーガーを頬張るレルアさんに急がなくていい旨を伝えつつ、朧気な記憶を辿ってログイン。さあ、気になる残高は?

 

「…………?」 

 

 ……おい。なんかやたら桁数が多い気がするんだが。バグってんのか。

 

「いち、じゅう……」 

 

 数えるまでもなくやっぱり多い。うーん。妙だぞ。リロード、再ログイン。数字は変わらない。 

 

「…………マジでか」  

 

 どういうバグだよ、とか思いつつ、それでもほんの少しだけ期待しつつ、下にスクロールして入出金履歴を探す。

 

 最初に見えたのは、やたらと多い数字の0と、トウセンキンの6文字。振り込まれてる額は、3億。

 ――鼻からアイスティが出かけた。体が震えてきた。や、やばいぞこれは。

 

「アヤトさん、顔色が優れないようですが……」

「あ、ああ、大丈夫です。それより、そろそろ帰りましょうか。店もまた混み始めるので」   

 

 レルアさんも丁度食べ終わったらしい。少しゆっくりさせてあげたい気持ちもあるが、なんかこう、いざ知ってしまうと不安と恐怖がある。

 

 ……待てよ。レルアさんの服だけは買っておきたいと思ってたんだ。最低2日分。

 まさかこのままコラボシャツ着せて生活させるわけにはいくまい。ネットで買うのも考えたが、届くまでに時間かかるだろうし、第一合うサイズが分からん。すぐ近くに某ファッションチェーンもあるし、寄ってく以外の選択肢はあるまいて。

 

「帰る前に、ちょっと服屋に寄りましょう。あのローブだけだと色々不便だと思うんで」 

 

 変に挙動不審になってるような自覚がありながらも、何とか服屋へ。こんな状態でレディース売り場行ったらいよいよ変質者扱いだぜ。だがレルアさん1人で行かせるのも……なんか違うし、心配っていうか。

 

「こっちです。多分」 

 

 周りからジロジロ見られてる気がする。まあマジで不釣り合い感が半端ないっつーか。オーラが違う。レルアさんには、ただそこにいるだけで人の目を惹き付ける何かがある。例え着てるのがゲームのコラボTでもな。

 つーか今思ったがこの構図、完全にカップルだしデートじゃねえか。洒落っ気の欠片もない中学生みたいな内容だが、それでも意識し始めると止まらないもんで。ボサボサの髪くらい何とかしてくりゃ良かった。

 

「えぇっと、この辺ですね」 

 

 大手なだけあって無限に服がある。メンズならまだしも、レディースはなんも分からん。テキトーにマネキンが着てるのを選んでもらって(本人もサイズは分からなかったらしい)、そのまま試着室へ。

 で、数分後。

 

「ど、どうでしょうか……?」 

 

 どうってもう。最高ですよ。

 

「似合ってますよ。サイズもいい感じだし」 

 

 全部着てもらったが、どれ着ても似合うから困る。俺にファッションセンス的な何かがあるとも思えないが、これに関してはモデルが強すぎる。

 レルアさんもレルアさんで、いまいちどれがいいとか分からないみたいだ。じゃあ全部買いましょう。OK。高級ブランドでもないし、例えそうだとしても今の俺はちょっと……いやかなり金持ちだ。

 

「その……」

 

 おっと待った。会計はまだ早い。ブラウスだのスカートだのより大事なものを忘れてるぜ。下着だ。これは絶対に買っておかねばならない。

 とは言っても下着売場は流石に恥ずかしいので、これは一人で選んでもらうことに決定。購入予定の服をカゴに入れて持ち、レルアさんを見送る。

 

 そうだ、靴も必要だな。今日は俺が持ってた運動靴を履いてもらってるが、サイズが合ってるとは思えない。

 選んだ服にはサンダルが合いそうだが、汎用性が高いのは靴か……いやまあこれも両方買えばいいな。ちょっと歩けば靴屋もあったはずだ。

 となると鞄とかも欲しくなってくる。まあ今日はいいか。明日は大学に行ってみる予定だし、そのとき見よう。

 思考がナチュラルに貢ぎまくり君になってるわけだが、そうすることに嬉しさを感じてるんだよな。初めての経験だ。

 忘れてるが何か恩でもあるのか。頭頂部からつま先まで全てが好みではあるし、単純にそれだけか。

 

「も、戻りました」 

 

 ……よくよく考えたら、これから使ってく予定の下着を俺が見るのってヤバくないか?

 だが会計のときに否が応でも目に入る……仕方ない、これはレルアさん自身に払ってもらうか。 

 

「あー、えっと、じゃあその、下着はそっちで買っちゃってもらえますか。俺が見るのもまずいと思うんで」

「アヤトさんなら……いえ、そうではなく。服も私が支払います。私が身につけるものですので」  

「いやあそこは割り勘です割り勘。ハハハ」 

 

 テキトーなことを言いながらスマートに会計を済ませる。暗証番号求められてちょっと焦ったのは内緒だ。覚えてて良かった。

 

「それとすみませんレルアさん、もう少し歩けますか」 

 

 あと靴屋だけ。もう日が傾き始めてるな。晩飯は出前にしよう。まだ腹は減っちゃいないが、今晩は豪勢に寿司とか食いたい気分だ。

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