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【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
第8章

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242 想像

前半レルア視点です。

「おーい? ルインちゃーん?」

「申し遅れました。私は下級天使(サイティミック)のルイン。レルア様の敵ではありません」

 

 尚もシエルを無視し続ける、ルインと呼ばれた天使。恐らく敵ではないだろうが、謎が多い。

 

「ちょ、ちょっとー? 聞こえてる?」  

「今のシエルは悪しき勇者に操られています。彼女を討つために共闘を、どうか」

 

 頭を下げるルイン。特に断る理由もない。

 

「ええ、分かりました。こちらとしてもありがたい申し出です」  

「感謝いたします」 

「流石のボクでもそろそろ悲しいんだけど!? 聞こえてるよね? おーいってば!」 


 騒がしい。

  

「聞こえているさ。操り人形の声が」 

「えー? お人形さん?」 

「……すまないシエル。お前を、約束を守れなかった」

「んん? 何言ってるのルインちゃん?」 

「せめてもの償いだ、私が天に送ってやる」


 ルインは白く光る槍を作り、握る。リフィスト殿のものと同質か? ルインにも引き継がれていたのか、或いは下級(サイト)特有の術か。

 

「あ、ルインちゃんも遊びたいんだ! なら最初からそう言ってよ、ね?」

 

 ルインは何も返さず、構えた。

 

「いっくよ!」  

 

 地を蹴るシエル。だが、少し進んだところでバランスを崩して転倒する。

 

「あ、あれ、おかしいな?」 

 

 理由は分からないが、仕掛けるなら今か。

 

「(レルア様)」

 

 私も構えたところで、肩を叩いて止められた。

 

「(私にかかっていた封印術を彼女の中の力に移しました。これでしばらくは上手く動けないはず)」 

 

 ルインが私の耳元で囁く。

 

「(私が残った力全てでシエルの動きを止めます。そこに合わせていただけますか)」

 

 頷きで返す。成程その方が確実だ。これ以上の好機はない――そして恐らく、ここを逃せば我々に勝機はない。

 

「では――縛縄(エイン)!」

 

 縄がシエルに向かって伸び、ルインの姿は消えた。


「わわ!」

 

 躱そうと体をひねるシエル。だが避けきれず、縄は何重にも巻き付く。 

 そこで即座に踏み込み、同時に全身全霊で突きを放つ。

 

「――聖盾(セイリード)!」 

 

 ――だが、止められた。私の本気の剣が。

 ヒビは入れたが、シエル本人には傷一つない。

 

「危なかったぁ……ううーん、仕方ないかぁ。ボクもマコトのために負けられないんだ」 

 

 辺りの素因(エレメント)が騒ぐ。そして再びリフィスト殿の魔力。

 

「これで――」 

 

 素因(エレメント)うねり(・・・)は、シエルを中心にして渦を巻くように揺れる――シエルの体が眩い白に光り始めた。防御魔術は五重に展開済み。だが、これは。


「――どうかなっ!」  

 

 素因爆発(エレクス)。一番外側の術壁が溶けるように消えたのが見えた。

 視界が白く染まる。重ねて防御を、いや――

 

「――反射(フリキア)」 


 欠片ほどの面積だが、無防備な彼女には致命傷になり得る。良い結果とは言えないが、最悪は免れたか。 

 

 

 

* * * 


 


「浅い」

「っ、くそ!」 

 

 裂空剣でもダメか。惜しかったっちゃ惜しかったが、明らかに知ってる動きだった。初見殺し系は全滅だな。

 

「どういうつもりかな。解析(アナライズ)で全て見えているっていうのに」

「オープニングに盛り上がりは必要だろ?」

「悪いけど、僕はこの戦いを楽しもうとは思ってない。楽しいものにしようともね」 

 

 つれねえな。まあ軽口の内容はどうでもいい。問題はこいつが思った以上に時空魔術を理解してるってことだ。 

 

「アヤト=ミズシマ……同郷か。ひょっとして君が三人目の勇者かな。僕らが必死に魔王討伐に向けて頑張ってた頃、君はこの穴蔵で遊んで暮らしてたってわけだ」 

 

 悪いかよ。つーか言うほど遊んで暮らしてたわけでもない。やりたいことやってはいたけどな。色々あったし、多分お前と同じかそれ以上に死にかけてるぞ。

 

「ああ、責めてるわけじゃないよ。君にも事情があったんだろう。神は人を憎まない」

 

 ()たたた。やっぱりこいつもそのクチか。神を自称する奴に碌なのはいない。

 

「そして僕としても、これ以上同郷の存在を手にかけるのは忍びない」   

 

 へえそうですかっと。どいつもこいつも長々と喋ってくれて助かるぜ。舐められんのは癪だが、油断しない相手ほどやりにくいもんもないだろ。 

 

「――破空(フェーヌ)!」 

「――創造(クリエイト)――」

 

 思惑通り、不意打ちへの対応はワンテンポ遅れる。そこにもう一発デカいのをぶち込む。

 

「――穿空(フェルラス)!」

「――解呪(ディスペル)」   

 

 が、消された。相殺しにくるほど舐めちゃくれないか。なかなか上手いこといかねえな。

 

「少し狭いね」 

 

 おい待て。いいか? 生活スペースはちょっと狭いくらいが丁度いいんだよ。広すぎたら落ち着かねえぜ。

 

「――創造(クリエイト)改変(モルファ)

 

 だーっやりやがった。やたら見通しがいい謎の大部屋の完成だ。んで市民体育館かってくらい上がった天井。どうせならレルアとの間の結界まで取っ払ってくれりゃいいのによ。

 

「うん、いい感じだ」 

 

 何も良くない。最悪なセンスだぞお前!

 人の住居をなんだと思ってんだ。勇者様とて許せぬ。

 

「破ァ!」 

 

 ちょっとデカめの破空(フェーヌ)を撃ち出してみる。躱されたがちょっと満足感がある。 

 

「……驚いたな、ステータスがないのか。流石は魔王だ」 

「そう、お前とは格が違うんだよ格が!」 

「格が、ね。――創造(クリエイト)加速(アクサール)」    

「――遅延(ディロウ)!」

 

 うおおっと、迂闊に挑発すんのも考えものか。今だって本体には躱されてたし、遅延(ディロウ)が切っ先に掠ってなければ危なかった。 

 

「えっと、何が違うんだったかな」

「――穿空(フェルラス)!」 

「――止界(テルメス)」 

 

 撃った穿空(フェルラス)は、その周りの空間ごと固まった。

 

「正直、ここまで余裕があるとは思ってなかったんだ。あの魔王に勝ったのなら、少しは苦戦すると思ってた」 

 

 空中で停止する穿空(フェルラス)に手をかざしながら、マコトは続ける。

 

「拍子抜けだし、笑えるよね。部下よりずっと弱い魔王なんて」 

 

 少し笑い、指を鳴らしてみせる。止まっていた穿空(フェルラス)が弾け、素因(エレメント)がキラキラと舞った。

 

「前言撤回だ。楽しもう――創造(クリエイト)雷裂(アイデルツ)連展複式(クインテ)――」 

 

 雷の網が眼前に広がった。花火みたいに派手な光と音。

 

「――置換(レプリアス)!」 

 

 幸い、空間が広がっただけで家具類はその辺に転がってる。そこと自分の位置を交換して難を逃れる、が、

 

「――繰り返し(デセット)!」 

「――加速(ヴァレーク)!」 


 加速させて術を消そうとする……辛うじて端が消えたので、そこに転がり込む。

 

「――破空(フェーヌ)!」 

  

 死角からの破空(フェーヌ)。だが左腕に叩き消された。

 

「意外かな、自然に動くのが!」

 

 自然どころか反応速度がイカれてやがる。ほとんどオートカウンターみたいなもんだろ。アヤトのは時空魔術の応用だったが、これはそんな偽モンじゃない。

 

「尤も少し時間はかかったし、万能ってわけでもない。更に面白いものを見せよう」

 

 マコトは右腕を突き出し、小さく何か唱えた。

 

「創造は想像なんだ。少し魔力消費は大きいけど、こんなことだってできる」

 

 握られているのは……拳銃(ハンドガン)か?

 その引き金に指がかかる――

 

「――発射(ファイア)!」

「――遅延(ディロウ)!」 

 

 発射直前に遅延(ディロウ)。弾丸自体はギリギリ目で追える速度だが、体が追い付いてこない。

 それでもなんとか躱す……が、 

 

「ぐああ!」  

 

 頭にぶん殴られたような激痛が走り、そのまま後ろに吹き飛ばされる。確かに躱した、弾は直接当たってないはずだ。遅延(ディロウ)でその勢いも弱めてある。それでこの威力?

 ……遅延(ディロウ)を重ねがけすればなんとかなるか。時緩(エゼイル)をこの辺りに使っておくのもいい。今の俺なら、この階層全体に広げることもできるかもしれない――相手に気付かれずにとはいかなそうだが。

 

(マスター!)

 

 レルアからの念話に振り向く。

 

「――はは! 驚い――な、――ただの――ない!」

 

 何か言ってるがこいつはとりあえず無視だ。レルアに念話を使わないように伝えないと。

 それはそれとして出血が酷い。視界が赤くぼやけてるし、クラクラしてきた。瞬間増血剤を、いやまずは傷を塞ぐ。

 

「……――時遡(ヒール)」 


 これで良し。

 

「レルアぁ!」 


 聞こえるように大声で。と、結界の向こうにレルアの姿が見えた。 


「悪い、念話はダメだ! 捕捉される!」 

「いえ――――掌握――――失念――――」 

  

 レルアの口が動く。多分何か謝ってるんだろうってことは分かるが、よく聞こえん。さっきの衝撃で一時的に耳がおかしくなってるか。

 

「いいんだ気にすんな! そして、俺は大丈夫だ。まだ奥の手があるからな」 

 

 極論、シルヴァの秘密兵器が完成するまで耐えればいいんだ。そういう戦いは何度も経験してきた。

 

「――(イア)――」

 

 マコトの声。こいつ、レルアとの楽しいお話タイムを邪魔しやがって。

 

「――時緩(エゼイル)――減速(ディセイル)!」 

 

 減速の波は何層にも連なっている。そこを突き抜けてくるわけだから、遅延(ディロウ)のときとは段違いに威力も速度も落ちる。 

 

「――複式(ダブル)!」  

「――置換(レプリアス)!」 

 

 続く二発目は向きを変えた一発目を当てて弾く。一見テクニカルにも見えるが、どうせ自動で狙いを付けてるんだろう。速度が大したことなければ、同じルートから来る弾に当てるのは難しいことじゃない。

 かつて矢に対して似たようなことをやったが、速度だけで考えるなら減速(ディセイル)のある今の方が易しいくらいだ。

 さーて、魔王の――迷宮王のしぶとさを見せてやる。

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