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【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
第8章

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245/272

241 開戦

後半レルア視点です。

 ――来た。

 

「シルヴァ!!」

 

 俺が声を張り上げるとほぼ同時に、階層内の様子が変わった、気がした。結界は上手く作動したらしい。まさか俺からも感知できないとは思わなかったけどな。

 

「こんにちは。君が今の魔王か」

「踏破おめでとう! 俺も命は惜しいんでな、一生遊んで暮らせるだけの財宝で手を打たないか?」 

「独特なセンスの冗談だね。……いや、無しじゃないか。僕は君本人に恨みがあるじゃない。魔王を殺したという事実が欲しいだけなんだ」

 

 おっと? いけるのか?

 やっぱり平和が一番だな。とはいえ仲間やられてる分はそのうちお返しさせてもらうが。俺もそうだがまずリフェアがお前を許さんよ。悪いが一応魔王なんでね。夜道に気を付けな。   

  

「じゃあ、まずこの迷宮を貰うよ。そして君と君の従者の財産全て」

 

 何言ってんだこいつ?

 

「君たちは最低限死なないようにして地下で飼ってあげよう。住む場所はほとんど変わらないんだ。悪くない提案だよね?」 

「だが断る」 

 

 こいつこそどういうセンスの冗談だよ。俺がそんな条件飲むと本気で思ってんならお笑いだぜ。 

 

「へえ、まあ僕はいいけど。仲間と一緒に全滅したいなら止めはしないよ」

「言ってろ。レルア!」

「はい――」 

  

 レルアの剣は、シエルに弾かれた。

 

「ひっさしぶりレルアちゃん! 元気だった?」

「……!?」


 続く斬撃もことごとく弾かれる。マジかよ。いやそのために俺がいるんだ。

 

「――遅延(ディロウ)!」 

「――創造(クリエイト)解呪(ディスペル)」 

 

 止められるか。まあそうだよな。

  

「あれれ、もしやボクのこと覚えてない? 悲しいなー」 

「――土刃(グライス)!」 

「わっとと!」 

「――創造(クリエイト)断界(メリエラ)

   

 レルア達との間に頑丈そうな結界が張られた。つい最近見たことがある。これはかつてアルデムが作った――そしてラビも使ったやつだ。

 

「シエルはそっちの天使と遊んでおいてよ。この魔王は思ったより弱そうだ」 

「後悔するぜ――」

 

 ならぶっ壊すのは不可能。んで相手が格上な以上、逃げ回っても捕まるだけだ。

 つまり先手を打つのが最善策。カインの声が聞こえるぜ。攻撃こそ最大の防御ってなァ!

 

「――起動せよ(イダイア)!」  

 

 投げた魔術結晶が空中で爆発する。と言ってもパーティーグッズみたいなもので、見た目ほどの威力はない。ちょっと派手な花火ってとこか。それでもビビらせんのには十分だろ。弱そうとか言いやがって。

 さてここからだ。相手も時空魔術を使えるらしいが、それでも俺が知らないのは使えないはず。そう考えればアヤトの方が余程怖かったぜ。

 


 

* * *  

 


 

 シエルのことを忘れていたわけではない。記憶の片隅にその姿は残っている。しかし、その中の彼女は、少なくともこんな形ではなかった。

 マスターが仰っていた。これはマコトによって蘇生された紛い物だと。操られる人形だと。

 だが、天界にいた頃よりも遥かに能力が上がっているのは何故か。今の彼女の力は上級天使(エイフリッド)のそれをも凌ぐ。

 

「――加速(アクサール)!」 

「鬼ごっこだ! 負けないよ――加速(アクサール)!」

 

 当然のように私の速度に追い付いてくる。

 

「待て待てー! ――聖雷(イクセアリ)!」 

 

 私の胸を目掛けて飛んできた槍。躱そうとするが二の腕辺りを掠り、そこで初めて気付く。

 この力は、リフィスト殿の。  

 

「――土鎖(グライド)!」

「――聖盾(セイリード)!」  

 

 その盾は、堅く、厚い。ならば回り込ませるまで。

 

「わわ――大聖浄(エル・リファイス)!」 

「!」 

 

 肌に灼かれるような痛みが走る。本来、上級(アフ)である私に聖魔術は効かないはず。考えられるのは加護の差――既に私は上級(アフ)ではないと?

 

「やるねえレルアちゃん! でもね、今のボクは強いんだよ?」

 

 シエルが右手に持った剣の形を変える――弓。

 

「――聖箭(サールレーン)!」

 

 撃ち出されたのは、大量の魔術による矢。躱せない。

 

「――風衝(ルウィズ)――聖盾(セイリード)」 

 

 風衝(ルウィズ)で着弾箇所の中央から移動したところまでは良かった。が、体を覆うように少し広範囲に展開したのが裏目に出た――強度が不足――矢を完全には防ぎ切れず、少し食らう。

  

「っ、」

   

 矢に抉られた脚の一部が白炭のように固まり、ひび割れ、崩れ始める。

 

「知らなかったでしょ! 昔の術なんだって!」 

治癒(ヒール)――」 

  

 傷口を治しつつ走る。致命傷というほどではないが、治りが遅い――毒か。力こそ残ってはいるが、私が天使でないと仮定するなら、シエルの術が毒となっても不思議ではない。

 

「――隠蔽(バルド)

「今度はかくれんぼ? いいよ!」 

 

 魔術に限らず、あまり攻撃は食らえない。ただの斬撃ですら、彼女の天使としての魔力を纏っている。

 

「どこかなー?」 

 

 ひとまずは傷口の再生に専念する。最高の状態で初めて今の彼女に並べる。

 

「――ぐああ!」

  

(マスター!)

 

 衝撃音と、マスターの苦しげな声。壁際に姿が見えた。

 あの結界の破壊は難しい。だが治癒(ヒール)を向こうに通すくらいならば、或いは。

 

「そこだっ!」 

「――聖盾(セイリード)!」 

 

 何故、視えた。治癒(ヒール)の魔力操作には細心の注意を払っていた。そもそも先程までは正常に機能していたはず。

 

「レルアぁ!」

「――大聖陽(エル・リドラ)」 

「わわ、眩しいよ!」 

 

 これで少しは足止めできる。マスターの元へ急ぐ。

 

「悪い、念話はダメだ! 捕捉される!」

「いえ、迷宮の機能が掌握されていることを失念していた私の責任で――」 

「いいんだ気にすんな! そして、俺は大丈夫だ。まだ奥の手があるからな」 

 

 頭部から出血している。とても''大丈夫''には見えない。だが、それよりも目の前の敵に集中しろということだろう。

 

「了解しました。どうかご無事で」 

 

 返事があったかは定かでない――再びの衝撃音に掻き消された。

  

「あ、戻ってきた! 次は何する?」 

 

 このままでは、勝てない。

 それでも、負けられない。

 以前の戦いで分かったことがある。神による枷は生きていて、それは己の意思では外せないこと。

 そして、それを外す方法も。

 

「――起動せよ(イダイア)」 


 ''強制''の術を自らに掛ける。

 

「えっ!」

 

 驚いた様子のシエル。突き出した剣はいなされた、が、左に持った二本目の剣で一太刀入れる。 

 

「き、急に強くなったねぇ!」

 

 この術は改良済み、今の私は肉体の限界を超えている状態だ。以前のものより狂化に近い。あまり長引くとその後は動くことすら難しくなるが、どの道解呪(ファスト)を使えるのはシルヴァしか残っていない。

 

「と、と、わわぁ!」 

 

 斬撃を中断して、勢いをそのまま蹴りに乗せて放つ。全身が悲鳴を上げるのが聞こえる。だが私の意思とは無関係に動き続ける。赤い靴の少女の様に。

 

()たた……模擬戦は全敗だったのを思い出すなぁ」 

 

 吹き飛んだシエルの場所まで移動、再び斬撃を入れようとするがこれは大きく弾かれる。次にどう動くのかの予想が付かないので気分が悪くなってくるが、目を閉じることもできない。

 再び攻撃に移ろうと剣を構えた、その時。


「――解呪(ファスト)」 

 

 ガク、と力の抜ける感覚。膝を地につけ、剣も地に突き立てることでギリギリ倒れずに済む。

 ……そうか。リフィスト殿の。

 

「やっぱり効いた! マコトから直接力を貰ってるんだ、ただの天使のレルアちゃんじゃ勝てないよ」

 

 ''強制''の魔術結晶は先程の一つのみ。幸い魔力は残っているので、戦闘の続行は可能。

 

「――具現化(リディア)」 

「でも諦めないよね。それでこそレルアちゃんだよ!」 

 

 シエルが地面を蹴る、とほぼ同時に、私と彼女の間に雷のように光が落ちた。

 光の中から現れたのは新しい天使。見覚えはないが、敵だろうか?

 

「ルインちゃん!?」 

 

 シエルの反応を余所に、ルインと呼ばれた天使は私の方を向いて口を開く。

 

「――レルア様、力をお貸しください」

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