表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
第8章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

235/272

231 天穿

「り、リョーガ……リョーガ? ねえ? 返事、してよ?」

 

 シエルは断面に手を翳して治癒(ヒール)を試みてはいるが、案の定だめだ。出血は止まらないし、下半身が再生していく様子もない。

 リョーガの方は懸命に口を動かすが、そこから流れ出るのは空気のみ。伸ばした手も最早動かない。もう永くないのは火を見るより明らかってやつだ。

 

「あ、ら、ラビさん! どうかリョーガを助けてください! お願いします!」

「……ごめんなさいね、シエルさん。そんなに魔力を使えるほどの余裕は、アタシにもないの」

「……そう、ですか」  

  

 項垂れるシエル。その様子を見てマコトが口を開く。

 

「シエル、もう一度だけ聞くよ」

「黙ってよ! 聞きたくもない!」  

「もう目も覚めた頃だよね。龍牙は死んだ。このままだと君も死ぬ。彼だって、君が生きていた方が嬉しいはずだ 」

「――聖雷(イクセアリ)!」  

 

 シエルの放ったそれは、マコトの手の一振りで軽く打ち消される。

 

「交渉決裂か。本当に残念だ。本当に」

「――殺す!」


 涙を堪えて、歯を食いしばって、リョーガの遺した剣を片手に駆け出す。

   

「殺す、か。変わっちゃったね、シエル」 

 

 対するマコトは余裕の表情だ。

 

「神術に抗う(すべ)はない。それで満足なら、もう言うこともないけど」 


 シエルのものと似た剣を作り出し、斬撃を受けるマコト。

 

「このっ……」

「無駄だよ。創造(クリエイト)強化魔術(バフ)も入れておいたんだ。君じゃ(かな)わない」 

  

 言葉通り、シエルの剣は押し返され、その体ごと弾き飛ばされた。

 

「――創造(クリエイト)土鎖(グライド)。じゃ、さよならだ」

 

 再び立ち上がるシエルを、容赦なく地面に縛り付ける鎖。シエルは鎖から離れるのは諦めたようで、両手を突き出し、叫んだ。

 

大聖(エル・リファ)――」  

「――天穿(ヴァラース)」 

 

 だが遅い。魔力不足がその遅延を招いた。シエルは縛られた姿のまま、動けずに消滅した。

 本当にあっさりと。剣も服も全部。

 

 ――と、階層全体に結界が展開された。シエルの術か、と思ったが違うな。この結界は見たことがある。……アルデムが最期に使った、あれか。 

 

「まだ何かあるのか。何をしても結果は変わらないのに」 

「やっと準備が整ったのよ。アナタを殺す、ね」

「言うね。でも僕は死なない。龍牙の死んだ今、創造魔法は全て僕のものだ」 

「シルヴァ! ラティス! 助かったわ!」

 

 ラビの周囲の素因(エレメント)がとてつもない勢いで振動を始める。

 

「最後の足掻きか。下手に殺して暴発されても面倒だし、天穿(ヴァラース)の形を変えてみようかな」 

「マコト! 私を守れ!」

「いや、その必要はないよ。残った半分が僕のものになるだけだし、却って都合がいい」

「貴様……!」 

  

 遂に''強欲''のことまで裏切るってわけか。もうめちゃくちゃだぞこいつ。

 

(それじゃあマスターさん、後はお願いね) 

(あ、おい……) 

 

 向こう側から念話を切られる感覚。薄々分かってはいるが、あまり信じたくはない。 

  

「リフェア、愛してるわ――」

 

 ラビの周りが明るく照らされる。と同時に、

 

「――消し飛べ(アーレス)」   

 

 バン、と耳元で巨大クラッカーを鳴らされたような音と共に停電……いや電気じゃない……多分素因(エレメント)のあれこれがおかしくなった影響だな。辺り一面真っ暗で、これ復旧ってどうすりゃいいんだ、とか思ってる間に光が戻る。途切れていた映像も再び流れ始めた。

 

 立っていたのは、マコト。

 

 ラビの姿は、なかった。

  

「ふう。……ふふ、はははは! 凄い、凄いぞ、この力は! 龍牙は下手だった。何だってできるのに、発想次第であんなにつまらない術にもなってしまう!」

 

 アナウンスがあったかは覚えてないが、ラビの魔力は感じない。つまりは、そういうことなんだろう。

  

「僕が持って正解だった。――創造(クリエイト)擬似蘇生(リコスト)」 

 

 魔法陣が地面いっぱいに広がる。それは一度赤く光ると、魔力を中央に糸のように伸ばし、流して、素因(エレメント)に人型を紡がせた。

 

「まずはシエル」

 

 言葉通り、人型はシエルになった。目を閉じて動かないが、少なくとも見た目はそっくりそのまま、さっき消滅したシエルだ。手品でどこかに隠しておいたって言われても信じるくらいには。

 

「次に、エリッツさん」 

 

 シエルの隣に出てきたのは知らない女性。 薄桃色の髪と利発そうな目元に、以前会ったセシリアを思い出す。こっちも目を閉じてはいるが、シエルと同じで生身の存在に見える。


「……とりあえずは、ここまで。思った以上に消費魔力が多いね」

 

 マコトは額の汗を拭うと、二人の正面に回り、肩に手を置いた。

 

「二人とも、おはよう」 

「わわ、マコト! ボク寝ちゃってた?」 

「はは、大丈夫だよシエル。 休憩中だしね」 

「ん……まーくん? ここは?」

「魔王城、みたいなとこかな。最奥に魔王がいる」 

   

 魔王、と聞いてエリッツの雰囲気が変わる。

 

「……魔王」

「今度こそ決着を付けよう。力を貸してくれるよね」  

「勿論。絶対に倒そう?」 


 じゃあそろそろ出発しようか、と歩き始める一行。違和感が山ほどあるが、蘇生時に何かいじったか?

  

「なあリフィスト……」

  

 ――ああ、いないんだった。

 リフィストだけじゃない。ラビもやられちまったんだ。ちょっとシャレにならんぜこれは。

 

 

 

* * *

 

 

  

「負けたらダメじゃない、ラフィリア」

「ごめんなさいね、リリアナ」

「まあいいわ、私の遺言を守ってくれたのでしょう? それならあまり怒るわけにもいかない……でもまさか、一人で行くとは思わなかったわ。あの貴方がね」

「もう昔みたいに遊ぶほどの元気はないわ。それに、彼女の周りは皆彼女の大事な人だった。だからこそ、上手く勇者を利用したのだけれど」

「そう、大事な人……貴方も、その中に入っていたんじゃない?」

「それは仕方ないわ。アタシは一人なんだもの。それに……」

「ええ、あの子は私みたいに孤独じゃない」

「そういうコト。少し疲れたわ、眠ってもいいかしら? 久々に、アナタの隣で」

「ええ――ゆっくりお休みなさい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ