表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
第8章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

233/272

229 勇者

「い、いや、待てよ誠」

「そうだよ! 腕と足って、酷すぎるよ!」  

「はは、何言ってるの。敵に情けをかける必要なんてない。僕がやっておくから、二人は休んでてよ」 

 

 うげげ、何言ってるのはこっちの台詞だ。解析(アナライズ)するだけなんじゃないのかよ。


「痛、あ! 痛いです……ぅ……」  

「思ったより硬いな。龍牙、その剣貸してくれる?」 

 

 マジで切るつもりかよ。拷問か何か? そういうの禁止!

 

「い、嫌だ。どうしたんだ。普通じゃないぞ、誠!」

「僕は普通だよ。それより早く貸してよ……これじゃ、中々、切れない」 

  

 ぐっ、ぐっ、と足で刃を押し込もうとするマコトとエフィの悲鳴。ドン引きだよ。

 

(エフィ、自殺コマンドを使ってくれ)

(まだ、ですぅ……今、準備中ですぅ……) 

  

 準備? 準備なんて必要ないはずだ。押すだけ簡単2秒であの世……には行かないが。不具合か? 発動条件とかも特になかったはずだ。

 だが何かやり取りしようにも、それっきりエフィからの返事は途切れた。

 

「ちょ、ちょっと。やめてよマコト! その子も多分天使だし、見てるボクらも心が痛いよ……そうだ、ルインちゃん! ルインちゃんも何とか――」 

 

 ここでシエルとリョーガが顔を見合わせる。少しの沈黙の後、再びシエルが口を開く。


「あの、さ。今一緒にいる子、本当はルインちゃんじゃないよね?」

「俺は前シエルから聞いてたけど、今確信した。なんかおかしいと思ってたんだよ。前にもシルキーさんを置いてくとか言ってたよな。その偽ルインに操られてるんじゃないのか?」 

 

 偽ルイン? じゃあやっぱり天使は一人だったってことか? でも勇者だよな? あれ?

 

「はあ。話が通じないな。シルキーを連れてきたのは単純に僕のミスだ。地下69階でも自分の身しか守らなかったの、二人も見てたよね。僕が術の能力を過信しすぎていた。やっぱり最初から殺しておくべきだったかな」

「っ、話が通じないのはお前の方だ、誠!」 

「最後まで聞いてよ。ルインは確かに別人だけど、力を借りてるだけだ。何の役にも立たなかった前のルインよりよっぽどいい」

 

 淡々と続けるマコト。えーと理解が追いつかないぜ。

 

「ルインちゃんはどこ!?」

「安心してよ、別に殺してはいない。僕は苦手だったけど、シエルが大事に思ってたみたいだし」   

「偽ルインと契約して、何が目的なんだ」 

「勿論魔王を殺すことだよ。それは君たちと同じだ。ただ――ここでルインが偽者だと気付かれるのは筋書きにない。少し予定を早めるかな」  

   

 マコトは、今度はその短剣を二人の方に向ける。何が何やらだが仲間割れってことなのか? ここまで来て?

 

「何のつもりだ」

「勇者は僕だけでいい。ようやく理解できたんだ。僕が主役になるためには、龍牙を殺さなくちゃならないってね」 

「……笑えないぞ、誠」

「冗談を言ってるつもりはない。君を殺せば創造も手に入るし、正に一石二鳥だよね」

 

 変わらない調子で続けるマコト。いやいや、冗談だろ? 第一戦ったら負けるだろ。 

 

「シルキーさん達の話も、嘘か」

「そうだね。このまま帰すつもりもないし、創造が手に入れば用もない。龍牙を殺したあとに殺して行くよ」

「そんなの、許すと思ってんのか!」 

「龍牙に許してもらおうとは思ってないよ。死人の赦しを得ても意味がないしね」  

  

 自分らの命の話してんのに黙って真顔で突っ立ってる辺り、まあ姉妹も何かの術にかかってるとかなんだろう。 

 

「でもシエル、君だけは助けてあげてもいい。龍牙なんて捨てて僕のものになる気はないかな」

「ない! ボクはリョーガの天使だ」  

「そうか。残念だよ」

 

 マコトが懐から瓶を取り出し、地面に叩き付けて割った。液体の色を見るにマナポーションか。 

 

「今のお前は悪だ、誠。俺は負けるわけにはいかない。勇者として!」 

「勇者は僕だ。まあ、龍牙は勇敢に戦って死んだってことにしておいてあげるよ。道中でね」 

「――創造(クリエイト)雷裂(アイデルツ)連展複式(トリプル)!」 

 

 リョーガが手のひらを突き出し、唱える……が、何も起こらない。そもそも素因(エレメント)の震える感じがなかった。

 

「あはは、気付いてなかったのか。長々と話をした甲斐があったよ。龍牙の創造はもう半分以上僕のものだ!」 

「何だと……!?」

「完成、ですぅ」 

  

 そこで突然黄金に発光し始めるエフィ。一行も驚いた感じだし、エフィ自身の術か。

 

「何をするつもりか知らないけど、邪魔だけはしないでよ。君を殺すと更に時間がかかる」 

「リフィスト様ぁ!」

「耳障りな――創造(クリエイト)封言(シラード)」 

「ぬ、うおお!?」 

 

 同時に黄金に光り始めたのは隣のリフィスト。何なんだよお前ら。状況が状況じゃなけりゃ爆笑もんだぞ。

 

(マスターさん、今しかないみたい。貸しを返して(ワガママを言わせて)もらうわ) 

(何だよラビ? まさかお前も?)

(ええ。あの男は私の手で仕留めたいの) 

(待てよ、お前は死んだら終わりなんだろ。この前の話は覚えてるよな?) 

(それでも行かなきゃならないのよ。万が一のときは、リフェアをお願いね) 

   

 念話が切れる。万が一なんてそうそうないだろうし、不安に思う必要もない気はするんだが……少し嫌な予感がする。解呪してもらった左腕も痛いし。


「おお、エフィ! こんなになって――治癒(ヒール)」  

「……下級(サイト)か。それが分体か使い魔かは知らないけど、君のことは大体分かってる」 

「は、分かったところでどうなる! エフィの受けた痛みを倍にして返してやるわ!」 

下級(サイト)ごときが、僕に敵うとでも?」 

 

 詠唱もなしに、片手剣を作り出すマコト。リフィストも白く光る槍を作り出し、構える。

 

「――創造(クリエイト)加速(アクサール)

「来るぞ!」 

「見えとるわ!」 

 

 斬撃を屈んで躱し、飛び上がるようにしてマコトの腹部を貫いた――が、

 

「残念、それは幻影(ファントム)だ」

 

 貫かれた場所を中心に歪んで消えた。本体はリフィストに背後に回って、剣を振り下す寸前。一番近いシエルが受けようと剣を伸ばすが、間に合わない。

 

「――土よ(ラクア)!」

 

 ――間一髪。地面の土が浮かび、小さな壁となって斬撃を阻んだ。

 

「ラビ! 助かったぞ!」

「ええ、間に合って良かったわ」    

「こう次々入って来られると面倒だな。まあ、それは後回しでいいか」 

  

 剣を引き抜いて、土を払う。さっきまでと別人みたいだな。俺よりよっぽど剣の扱いが上手いように見える。

 

「ええと……二人は俺らの味方してくれるってことでいいんすよね?」 

「少なくとも今は、そうであるな」 

「共闘といきましょう、勇者さん」 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ