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【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
第1章

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16 vsシレンシア騎士団遊撃隊②

ゼーヴェ視点です。

「先輩、撤退しましょう……被害は甚大ですが、ここで全滅するよりはマシなはずです!」

 

 木陰からフィルの声が聞こえる。次は奴を殺すか。アイウズとあの屑は最後でいい。

 

「お前は、隊長に解呪(ディスペル)をかけた上で逃げきれるか?」

「でも……でも!」

「あのゴーストは途中でレイスに変化した。レイスはBランク相当の魔物だ。そのままじゃ確実に逃げられない」

 

 だが、とアイウズは続ける。

 

「上手くいけばそこそこの時間拘束しておくことはできる。その隙に逃げることなら可能だろう」

 

 確かに拘束されれば追うことはできない。拘束されるほど甘くはないが。

 今後のことを考えても、ここで殺しておくに越したことはない。

 

「じゃあ、先輩。拘束は任せましたよ。――聖浄(リファイス)!」

 

 既に聖浄(リファイス)は恐れるに足らない。片手で打ち消せる。

 が、向こうもそれには気付いていたようだ。本命が飛んできた。

 

 魔術では無効化されると踏んでか、勇敢にも片手剣での斬り込み。

 

「らあああああああっ!!」

「――聖盾(セイリード)

 

 不意を突かれはしたが、慌てず焦らず聖盾(セイリード)を合わせてやれば衝撃は受け流せる。

 

「ふっ」

 

 愛剣で腰のあたりを斬りつける、が、あまり手応えがない。寸前で後ろに跳んだか。咄嗟にしては悪くない判断だ。日頃の訓練の賜物だな。

 まあ、跳んだということはつまり――魔術の恰好の的ということだが。

 

「――闇鎖(ダレイド)

 

 一本目、二本目は剣で払いのけられる。三本目は身体を捻って躱そうとした。甘いな。

 

「――追尾!?」

 

 その通り。仮にも中級魔術、本数も少ない分追尾性能は一級品だ。

 フィルは、身体にまとわりつく鎖を引き剥がそうと奮闘している。解呪(ディスペル)なら一瞬だというのに。最期まで緊張感の足らない奴だ。お前は昔からそうだった。そういうところが命取りになると、何度も教えたはずだが。

 

「かかった! ――繋檻(ジェノン)

 

 (とど)めを刺そうとした瞬間、体が地面に縫い付けられるのを感じた。まさか、まさか。

 ……あれは演技、囮であったとでもいうのか。


「やりましたね先輩!」


 成長を喜びたいところだが、今はただ面倒なだけだ。あと一歩のところで。

 属性は込められていないし、すぐに解呪(ディスペル)できそうなのが救いか。

 

「――解呪(ディスペル)。よし、逃げましょう隊長!」

 

 一時的に動きを止めただけで逃げられると思うとは、私も舐められたものだな。

 

「――解呪(ディスペル)。氷塊よ、砕け、裂け、汝が内に彼の者らを封じ込めよ。――氷獄(シャルジュ)

 

 逃げる背中に大量の氷片が襲いかかる。例え略式だろうと、精霊と個別契約している私の魔術だ。無詠唱とは威力が段違いであるし、一般人ならこれだけで殺せるだろう。

 

「あ゛――」

「フィル! くそっ、隊長、足止めをお願いできますか!?」

「言われずとも。先に行け、すぐに追い付く」

「すみません、ご武運を!」

 

 アイウズはフィルを抱えて走り去る。最悪の事態だ、追うにしても時間がかかる。

 この場で治療させて大規模魔術で押し潰そうと思っていたが、奴らも馬鹿ではなかった。私は確かに強くなったが、奴らが弱くなったわけではない。

 

「さて、しばらく眠っていてもらうぞ」

「笑止。眠るのは貴様だ、それも永遠にな。――氷弾(シャルダ)

 

 氷弾(シャルダ)は躱される前提の攻撃。もとより魔術でどうこうなる相手だとは思っていない。

 

「死ね!」

「驕ったなレイス。死ぬのは貴様だ!」

 

 斬り込みは流される。奴が風の属性付与(エンチャント)をしているせいで鍔迫(つばぜ)り合いにすらならない。

 にしても、予想した程度であそこまで調子に乗るか。風で何か細工でもしていたか?

 十中八九、加護系統だな。愛剣に薄く奴の魔力が張り付いている。解呪(ディスペル)は効かないと見ていい。

 

「受け取れ」

 

 愛剣を奴に向けて投げる。予想通り、剣は奴に当たる直前に進路を変え、地面に突き刺さった。

 

「武器を捨てたか。それはいささか驕りが過ぎるというもの」

「捨てたと思うか? ――具現化(リディア)属性付与(エンチャント)、闇」

 

 今しがた捨てたものと寸分違わぬ愛剣の柄が私の掌に収まる。

 

「チッ、風の精霊よ――」

「私を前にして詠唱か。それこそ正に驕りではないのか?」

 

 懐に入り込み、奴の身体に愛剣を突き立てる。

 

「がっ……なんの、零距離で完全詠唱の魔術を撃つためなら悪くはない! ――風刃(ウィレイス)!!」

 

 風の刃が私を襲う。が、四肢が吹き飛ぶほどの威力ではない。傷は深いがその程度。

 

「何故だ、私の、全力だぞ」

「よもや私がレイスであることを失念している訳ではあるまい。――(こうべ)を垂れよ、黒の王のお通りだ(サラ・アルンド・レトス)。氷より冷たく闇より暗く。久遠の虚無に囚われ給え。顕現せよ、虚無を支配せし黒の王(ノクェーゲ・ロウ・ディフェイル)

 

 これも略式だが、長く使ってきたこともあり威力は十分。上級精霊から力を借りる為、奴のボロボロの身体などそのまま闇に呑まれて消える。

 

 我が一家を殺した奴には死すら生温い。消滅がお似合いだ。

 

「――――!! ――――――」

 

 断末魔の叫びすら上げることも許されず、奴はゆっくりと闇に消えていった。

 

 さて、逃げた二人をどうするか。

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