15 vsシレンシア騎士団遊撃隊①
ゼーヴェ視点です。
「――風衝!」
刃が奴の頭蓋骨を叩き切るまであと数瞬、というところで邪魔が入った。
奴は横にごろごろと転がる。
「アイウズ、威力の調節も巧くなったな。だが今は面倒なだけだ。邪魔をすると言うのなら……」
「ええ、どうぞ。殺してもらって構いません。貴方にそれができるなら! ――全員、聖浄の詠唱を始めろ!」
ああ、本気で私を殺す気か。ゴーストに聖浄はよく効いた。レイスになったところで変わらないだろう。
仕方ない。元部下を手に掛けるなどしたくはないが……そうしなければ死ぬのは私だ。
「グラン、撃て! フィルとザーグは詠唱続行!」
部下に指示を飛ばしながら、アイウズが私に切りかかってくる。
良い太刀筋だ。セリザールにも引けを取らない。だが、所詮はこの程度――
「油断しましたね。――フィル!」
押し切れる、と思った直後。右後方から聖浄が飛んできた。辛うじて聖盾で受けるが反動は大きい。
「はぁっ!!」
息をつく間もなく、連続の切り込み。こちらに反撃の暇を与えないつもりか。なるほど防戦一方に追い込まれれば数の差で負けるのは当然。素晴らしく厄介な連携だ。まずは連携を崩すか。
魔力消費は大きいが、聖盾を周囲に張り巡らす。生前の私の魔力量であればなしえなかったことだ。そしてそのまま魔術を発動する。これは予想外だろう――
「――氷獄」
無数の氷片が詠唱中のザーグを襲う。無詠唱故に威力は低いが、詠唱を中断させられたので僥倖。
その隙を突く。
「させない。グラン!」
「――聖浄!」
「――聖盾」
グランの聖浄の威力を二枚の聖盾で完全に殺し、ザーグの胸に愛剣を突き立てる。
ザーグは、小規模結界を展開する間もなく絶命した。まずは一人。
「くっ……狼狽えるな! 被害は最小限に済ませる!」
四方八方から聖浄が飛んでくるが、やはり一人減ったのは大きい。弾幕に穴がある。
見極めれば、躱すことも容易だ。
「二人目――」
前方、グランに微かな違和感。……幻か!
罠と気付いた瞬間何かに足を取られた。勿論伸ばした愛剣は空を切る。
「ぬかったな、ゴースト! 風の精霊よ、我が願いを聞き届けたまえ。永久の契約に従い、その力を我に貸し与えたまえ! 彼の者を切り裂け――風刃」
「っ!!」
聖盾で受けきれなかった刃が私の下半身を切り裂く。が、強化された身体であったため傷はさほど深くない。
少し油断したのは確かだが、セリザールを私の近くに引き寄せられたというのはこれ以上にない好機。逃す手があろうか。
「沈め! ――繋檻」
無詠唱だがゼロ距離。解呪している暇などあるはずもない。
セリザールは、漆黒の繭に包まれて沈黙した。一度呑まれてしまえば暫くは出て来れないだろう。
強力な魔術の詠唱を始める前に、まずは他を片付けるのが得策と見た。
先程から身体中に聖浄を食らっているが、どうやらレイスに進化したことによって耐性もかなり上がっていたようだ。ほとんど効いていない。
要するに、最早奴らの攻撃で怖いものはない。聖盾を張る必要がなくなった今、その魔力を全て攻撃に回せる。
「――属性付与、闇」
愛剣に属性付与することで、同時に周囲に薄い障壁を展開する。結界ほど強力ではないにしろ、これで奴らの攻撃はほぼ完全に無力化できた。
また、この状態で与えた傷は闇系統の魔術への耐性を削る。無詠唱の中級魔術で殺せるほどまでに。
「全員、絶対にあの剣から目を離すな! 掠りでもしたら終わりだ、もし掠ったら一時距離を取って解呪しろ!」
アイウズは気付いたようだ。気付いたところで何も変わらないが。
まずはグラン、幻術が面倒な奴から殺す。
「顕現せよ、虚無を支配せし黒の王」
かつて私の生み出した固有魔術。大量の魔力と引き換えに、その場にいる一定魔力以下の存在を消滅させる。
つまりは、幻の無効化。私以外の存在は下級魔術が使えなくなるという欠点があったが、むしろ今は好都合だ。
「余所見をしている場合か?」
グランは"黒の王"の範囲外に逃げようとする。再び幻を作り出そうとしたようだが、詠唱時間に殺せる。
「――闇鎖」
闇の鎖で全身を貫いて終わりだ。残すは三人。




