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オリジンワールド  作者: HIGEKI
ウンベルト喫茶室
44/50

日常

 


 遥人は起き上がる。ベットから見える景色はまだ暗黒に支配されていた。


「はぁー」


 遥人はため息をつくと寝巻きからいつもの黒いTシャツに白い短パンに着替え、宿舎を出る。


 宿舎の前に真っ直ぐ舗装された道が伸びている。暗黒の中、等間隔に置かれるモダンな街灯の光は醸し出す独特なノスタルジックの世界を創りだしていた。

 道の両端に並ぶレンガ造りの家々はさらに新しい世界を遥人に見せてくれる。


 遥人は夜が好きだ。

 視界を奪う闇に浮かぶ小さな光たち。静寂の闇に埋もれないよう懸命に”個性„という光を放つ彼ら彼女らに美しさと儚さに魅了されるからだ。


 遥人は夜の世界に浸りながら街を歩きヴァローナの中心にある広場に着いた。

 日中はよく集合場所としてよく使われるらしい。特にカップルが。理由は広場の中心にある噴水があるからだろう。


 遥人は噴水も好きだ。重力というこの世の通りに反抗しようと空に向かう姿は美しく儚い。彼、彼女も気づいているのだろ。自分たちが噴き出す水が天に届くことがないことを。


 遥人はいつもは必ず人が座っている噴水の前にあるベンチに座る。


 噴水を囲むように設置された街灯たち。噴水の前に座る遥人。


 遥人は”彼ら彼女らの世界„の一部になった気がした。彼ら彼女らの美しく儚い世界は遥人の黒い汚物を洗い流して一人の”ただ人間„にしてくれたような感覚に陥った。



 しかし、終わりは唐突に訪れる。


 ―― 日が昇り、朝日が彼らを照らす。



「はぁー」


 遥人はため息をつくとベンチから立ちあがり歩き出す。


 ヴァローナのモダンな街灯たちの光は朝日に照らされ存在が薄れていった。

 朝日は徐々にヴァローナを包み込みいつしか暗闇は消える。


 遥人は朝が嫌いだ。

 夜を奪い、小さな光たちを冷徹に殺していくから。


 遥人は宿舎に帰るとシャワーを浴び切り替える。

 着替えてネガシオンを腰に差すと遥人は扉を開けた。


「おっ、ハルトおはよう。朝飯行こうぜ」


「おはよう。オーフェン。朝から元気だな」   


「そうか? おまえが元気ないんじゃないのか?」


 遥人はオーフェンと一緒に階段を降りる。


 二日前のドール村の件が終わってからオーフェンとの関係性がびっくりするほど変わった。

 前までは目が合っただけで睨みつけてきたが、最近は目が合っただけでついてくるようになった。


「なにぼーっとしてるんだよ。お前のハヤシライス食べちまうぞ」


「ごめんごめん。やっとオーフェンと仲間になれたなってしみじみ思ってさ」


「お前、なに恥ずかしいこといってんだよ。照れるじゃねーかよ」


 オーフェンは恥ずかしそうに顔を横に向ける。


「隙あり」


「あっ! お前」


「冒険者なんだからいつ何時も気を引き締めていかないとな」


 遥人はオーフェンが油断しているうちにスプーンで彼のハヤシライスを盗み食いした。


「ぐぬぬぬ……流石Bランカー」


 オーフェンは勝ち誇ったように笑う遥人に少し悔しそうにふくれっ面する。

 以前であればオーフェンが血を流していたはずだ。


 遥人は逆にリアムとの距離が少し離れたような気がしていた。


 最近オーフェンとよくいるということもあるが、リアムと二人でいることが極端に減った。

 いつもと同じ態度で同じ口調で話すのだが、少し距離を取っているように遥人は感じる。


「これからなにするんだっけ?」


「一応今回クエストは成功したと判断されたから通信系の魔道具を入れに行くんだろ」


「そういや、”冒険証„を入れるに行くっていてたな」


「冒険証?」


「あぁ、言葉通り冒険者を証明するために入れるものだからな。前みたいに通信機として使うことはあんまりないぞ」


「っていうか、もう時間だぞ。早く玄関に行かないと遅刻だぞ」


 遥人は食堂の壁にある時計を指差す。時計の針は八時五十分を指していた。



「げげ、あと十分しかない! 俺まだ準備出来てないだよ」


 慌ててハヤシライスを口に運ぶオーフェンに遥人は笑みを浮かべる。


「悪いな。俺はもう準備出来てるから食器を返却するだけだ」


「なに!? お前ずるいぞ」


「朝ギリギリに起きるやつが悪い。自業自得だよ」


 文句をいいながらハヤシライスを食べるオーフェンを尻目に遥人は、食器を片付けて玄関に出た。


「おはよう。やっぱりリアムとミアは早いな」


 玄関には予想通りリアムとミアが待っていた。


「ハルトは起きるのは物凄く早かったのに時間ギリギリで来るんだね」


 リアムはからかうように笑う。


「というか俺がなんで夜中に起きたの知ってるんだ?」


 遥人が起きているときには街にはもちろん、宿舎の人間も外にいなかった。


「いや、ちょうど起きたときに廊下から足音がしたから気になってドアを開けて廊下を見たんだよ。そしたら階段を降りるハルトの背中が見えただけだよ。まあ、その後すぐ寝たけどね」


 人の気配を感じなかったが、遥人も寝起きだったこともあり、気づかないこともある。

 遥人は疑念を振り払った。


「オーフェンは?」


 ミアはむすっとした顔で遥人に聞く。


「想像通り準備が出来ていないからもう少し時間がかかるみたい」


「ハルトくんと仲良くなったのはいいけどまだだらしないな」


「まあまあ、人はそんなすぐ変われないよ。オーフェンもあいつなりに頑張ってるんだよ……」


 三人の耳に激しく地面を蹴る音が聞こえてきた。足音はどんどん近づいてくる。


「遅れてごめん」


 オーフェンは俊敏な動きで土下座をする。


「……たぶん」


 遥人は苦笑いを浮かべた。


今日は平和です笑

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