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オリジンワールド  作者: HIGEKI
ドール村
43/50

陳謝

 


 オーフェンはミアの部屋の前まで来ていた。食堂同様、階段や廊下、彼女に用意された部屋も廃墟化していた。


 ノックをするが、もちろん返答はない。


 オーフェンは短刀を取り出しドアノブ付近に突き刺した。


 短刀で円状に切り抜いて出来た大きく開いた穴に、腕を突っ込んで内側の鍵を開ける。


「ミアっ!」


 ドアを開けると目の前にミアが倒れていた。


「ミア大丈夫か!? ミア!」


 顔色を変えたオーフェンはミアに駆け寄ると彼女の身体を大きく揺さぶる。


「ううっ」


 オーフェンの激しい揺さぶりでミアは少し窮屈そうに目を開ける。


「ううっ……ここは……?」


 ミアは起き上がって周囲を見るが、壁や天井の色はくすみ、床には雑草が生えていた。彼女には見覚えのない景色だった。


「きみが村長に用意してもらった部屋だよ」


「え?」


 ミアはオーフェンの言葉に目を唖然とする。ミアが知っている部屋はシンプルだったが、床も天井もくすんでいなければ、床に雑草も入っていない清潔な部屋だったからだ。


「全て幻だったんだ。この部屋もこの家も。この村全部……!」


 オーフェンは悔しそうに唇を噛む。


「え。全てが幻ってどういうこと?」


「この村はとっくにゴブリンに占拠されていて、この依頼をだした村長もゾイとかいうゴブリンだったんだ」


「じゃあ、これまで見てきた村や村長の家に案内してくれた人も全てが幻で騙されていたってこと?」


「あぁ」


「そんな……」


 ミアは顔を青ざめ項垂れてしまう。


 彼女の様子を見てオーフェンは躊躇する。()()()()()()()()()()()()()


 いつものオーフェンなら伝えることが出来なかっただろう。事実を伝えることを他人に押しつけていただろう。だが、昔の彼は死んだのだ。


「ミア」


 ミアは悲しそうな顔でオーフェンを目を向ける。


「まだきみに伝えなきゃいけないことがある」


 ミアのが不安そうな顔がオーフェンの心臓を圧迫してくる。しかし、伝えなければならない。彼女のために。自分のために。


「キッドさん、ヴィレッタさん、ガジルさんが殺された」


「え」


 ミアの表情から感情が消える。


「うそだよね? オーフェン」


 ミアはオーフェンに近づき両肩を掴んだ。


「うそっていってよ。オーフェン」


 ミアはオーフェンを揺さぶる。


「うそっていってよ! オーフェン!」


 彼女はオーフェンを大きく揺さぶり叫ぶ。 


「うそだっ!!! 先輩たちが死ぬわけないよ!!!」


「死んだんだ」


「オーフェンのうそつき! だって洞窟でゴブリンを倒した三人が簡単に死ぬわけないもん!」


「死んだんだよ」


「死んでないもん! 死んで……」


 オーフェンはミアを静かに抱き寄せる。


 寂れた廃墟の中は一人の少女の泣く声が響いていた。





 ◇





 村長の家。別名廃墟の前に四人の生存者が集まっていた。


「よかった。リアム無事だったんだな」


「オーフェンとミアも無事でよかったよ」


 リアムはいつも通りにオーフェンに笑みを浮かべる。


「これからどうする? 馬車は使えないし、先輩たちの遺体を背負いながら帰るわけにもいかない」


「取りあえず冒険者ギルドに救援を呼ぶよ」


 遥人の質問にリアムが答える。


「どうやってギルドに連絡するんだ?」


「ああ、遥人は知らないのか。じゃあ見てて」


 リアムは右耳に手を当てる。


「もしもしこちらBランククエストでドール村に来ているBランカーのリアムです。実は今回のクエストで三人殉職されたんです。御者の方々も亡くなってしまったので救援を頼みたいのですが」


 リアムは向こうからなにか言われてようだが、三人には聞こえない。


「わかりました。到着するまで馬車で待機しています。どうぞよろしくお願いします」


 話が終わったようで、リアムは右耳から手を放す。


「冒険者ギルドの救援は早朝に着くらしい。僕たちはそれまで先輩たちの馬車で待ってよう」


「ところでどういう仕組みなんだ?」


 リアムが話しているのを興味ありげに見ていた遥人が聞いた。


「冒険者になってクエストを一回成功させると今回みたいな緊急時に助けを求められるように通信系の魔道具を身体に刻むだ。こんな風にね」


 リアムは服をめくる。

 彼の腹部には青く「05」と刻まれていた。


「この番号はどういう意味なんだ?」


「番号は強さの順位だね。ちなみに青色はBランカーを意味していて、Eは灰色。Dは。Cは黄色。Aは赤色、Sは紫色だね」


「じゃあ、リアムはBランカーの中で五番目に強いってことか。すごいな」


 遥人感心するように呟いた。


「いや、正確な実力ではないからね。クエストの成功率とかも含めてだから」


 リアムは恥ずかしそうに頭を掻く。


「それじゃあ、馬車に行こうか」


 遥人に説明を終えたリアムは馬車へ歩いていく。彼の後ろについて行こうとした。


 ()()()()()()()()


「待ってくれ」


 オーフェンの呼び止めに三人は足を止め振り返った。


「今まで申し訳ありませんでしたっ!」


 オーフェンは自分の心を解き放つかのように声をあげ土下座した。


 彼はミアの目を見て土下座をする。


「ミア。小さい頃から俺の自己中できみの人生を狂わして本当に申し訳ありませんでした。俺が自己中なことをしなかったらきみを冒険者の世界に引き込んでしまうことはなかった。本当にごめんなさい」


 彼はリアムの目を見て土下座をする。


「リアム。俺が自己中な考えで行動して迷惑をかけてしまって本当に申し訳ありませんでした。俺のせいでたくさんの人に謝らせてしまったり、悩ませてしまって本当にごめんなさい」


 彼は最後に遥人の目を見て土下座をする。


「ヤガミ……いや、ハルト。嫉妬心からいつも悪口をいったり、貶したりしてしまって本当に申し訳ありませんでした。そして今回助けてもらったのに自己中野郎だとか、裏切り者だと思ってしまって本当に申し訳ありませんでした」


 静寂が生まれる。オーフェンは一向に頭をあげる様子はない。


「オーフェン頭をあげてもう立ってくれ」


 遥人の言葉にオーフェンは立ち上がり頭をあげる。



 ―― ボゴンッ



 オーフェンは遥人に顔面を殴られ廃墟まで吹き飛ばされる。

 廃墟の壁を破り土煙をあげた。


 遥人は泣きながら倒れているオーフェンに近づく。


「これでおあいこだ。これからよろしくな。オーフェン」


 遥人はオーフェンに手を差し伸べる。


「あぁ、よろしく。ハルト」


 オーフェンはハルトの手を握る。二人が初めて握手をした瞬間だった。


これで三章ドール村編が終わりになります。次回から四章の始まりです。

どうぞ四章からも応援よろしくお願いします。

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