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オリジンワールド  作者: HIGEKI
ドール村
32/50

心変わり

 


  「よかった。無事みたいだな」


 遥人は安心したようにつぶやく。

 だが、その呼吸は荒い。


「なんで……なんでだよ」


 オーフェンは声を震わせながら問う。


「なにが?」


「なんで俺をかばったんだって聞いてるんだよ!」


 オーフェンは振り絞るように声を荒げる。 


「仲間だからだよ」


「仲間? 俺が? お前と?」


「ああ」


 躊躇なく答える遥人を見て、オーフェンは力なく笑う。


「ふざんな! この偽善者が! 俺とお前が仲間なわけないだろ」


 オーフェンは暗い声で続ける。


「馬車の中でもいったはずだ。俺はお前を仲間として認めないって。お前もわかっているだろ? 俺がどれだけお前が嫌いなのか。思い出せ。病室での出来事を。俺の眼を」


 オーフェンは遥人をにらみつける。


 あのときオーフェンは確かに殺意に似た憎悪をむき出しにしていた。

 彼が遥人だったら仲間と考えるどころか目の敵にするだろう。

 だからこそわからない。いや、信じられないといった方が正しいかもしれない。

 なぜ、目の前の男は軽々しく自分のことを仲間だというのか。オーフェンからすれば偽善者にしか見えない。



 遥人は小さく笑うと口を開く。


「だからこそだ」


「はぁ……?」


 オーフェンは理解出来なかった。


「嫌われてるからって避けてたらいつになってもわかりあえないだろ? 嫌われてるなら一層わかりあうために自分から歩みよらなきゃだめだ。そうじゃないか?」


 遥人はオーフェンに笑いかける。


「ぐっ……」


 遥人は苦痛で顔をゆがめると倒れ込む。


「ヤガミ!」


 オーフェンは倒れ込む遥人を支える。どうやら苦痛で意識を失ったようだ。

 よく見るとほとんどの矢は身体を貫通していた。この状態でよく会話がしていたと考えると、遥人の生命力の強さは計り知れない。


「っ!?」


 オーフェンは上から殺気を感じ上を見る。

 ゴブリンが完全にオーフェンたちを囲み弓を放とうとしていた。


 オーフェンは迷う。彼の能力は命ある者に触れられたり、視界を奪われると瞬間移動出来ない。

 今、オーフェンと遥人が助かるためには二回瞬間移動をしなければならない。だが、弓が放たれる直前。二度も出来る余裕はなさそうだった。


 弓が放たれる。



 オーフェンはリアムたちの方を見ると遥人の姿がオーフェンの手の中消える。


「頼んだぜ。リアム」


 リアムの元に遥人が移動したのを確認するとオーフェンは目を閉じた。




「オーフェン、仲間が守った命を簡単に捨てちゃダメでしょ」


 聞き覚えのある声がオーフェンを叱咤する。


「っ!?」


 目を開けるとオーフェンを守るように四方に立つ、リアム、キッド、ガジル、ヴィレッタがいた。


「リアム、オーフェンを連れてミアの元へ戻ってくれ。ここは俺たちに任せろ」


「わかりました。オーフェンいくよ」


「あ、あぁ」


 二人が無事に後退したのを確認するとキッドは剣を抜く。


「じゃあ、先輩の意地ってやつを見せてやろうぜ」


「「おう!」」





 ◇





 キッドは剣先をゴブリンに向ける。

 剣はゴブリンに狙いを定めると、勢いよく目標に向かって一直線に伸びていった。

 キッドの能力は”触れた物を収縮、膨張させる„能力だ。

 予想もしない攻撃に避けるタイミングを失ったゴブリンは迫りくる剣を自分の剣で受け止める。


「ギャハッ」


 ゴブリンは迫りくる剣の勢いを殺すことが出来ず、自身の剣を落としてしまう。

 武器を失ったゴブリンにキッドの剣は容赦なく襲いかかる。ゴブリンの身体を貫通した剣は天井に突き刺さりようやくその動きを止めた。


 だが、また剣は動きを見せる。剣は収縮を始めるとキッドの身体は剣に吸い寄せられるように権の元へ向かってく。


 他のゴブリンたちが無防備なキッドに向け弓を放とうとする。


「させないよ」


 ヴィレッタは背中から弓と数本の矢を取り出す。

 彼女は矢に息を吹きかけると矢は風を纏う。

 彼女の能力は”風を操る„ 能力だ。

 ヴィレッタは風を纏った矢を次々と放つ。

 強化された矢は弓を構えるゴブリンたちの命を刈り取っていく。


「サンキュー」


 キッドは無事に標的の元に辿り着くと魔力を纏う。


「待たせたな。いくぜ」


 剣を元の長さに戻すとゴブリンたちに突撃していく。

 キッドはゴブリンに囲まれないように立ちまわりながら剣を振るう。


「ハルトはよく一人でこの相手をしたな。とんでもないルーキーを見つけちまったよ」


 キッドは苦笑いを浮かべる。普通のゴブリンであればキッドは苦戦することなく倒すことが出来た。だが、今戦っているゴブリンには一匹倒すのも一苦労だ。


「俺としたことがやちまった。ちょっと考え事してたら囲まれちまったよ」


 偉そうに先輩風を吹かした挙句、窮地に立たされていることにキッドは劣等感を久々に抱いていた。

 今Bランカーとして活躍する同期たちにかつて抱いていた以来の感情。


「情けないな。俺」


 キッドの声には悔しさがにじみ出ていた。


「なんて顔してんだキッド」


「約束したじゃない」


 キッドを囲むゴブリンたちにいくつもの矢が降り注ぎ、轟音ともに土煙をあげる。

 追撃で出来た隙間から弓を持ったヴィレッタと”身体を硬化させる„能力で身体が灰色になったガジルが現れた。


「一人じゃ周りの劣るとしても、三人で力を合わせたら誰にも負けないパーティーにしようってさ。あんたは一人じゃないよ」


 ヴィレッタの言葉にキッドは笑って言い切る。


「じゃあ、後輩たちに教えてやろうぜ。パーティーってやつを」


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